すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
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2017年ベスト映画
映画を劇場の大きいスクリーンで見る本数は、新宿にTOHOシネマズができた2015年からほぼ50本台を維持していて、今年もちょうど50作を鑑賞できた。以前の右下がりだった頃に比べれば良い傾向ではある。ただ、ここ数年は記録(ブログ)をつけずに、面白かったつまらなかったと呟いてそれで終わりになっているため、こうして年末に苦労することになる。それはともかく、記憶とトゥイログを頼りに並べてみた。

過去ランキング:2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年

<劇場鑑賞作品>

1位 メッセージ / Arrival

映画でも音楽でも鑑賞後に"ああ、これは今年イチだ"と確信できる作品がある。本作がまさにそれで、地味にハードSFな世界観にサスペンスが加わり、驚きの真相が待っているという展開の妙、圧倒される映像のセンス、そして何より大事なテーマが備わっている。監督のドゥニ・ヴィルヌーヴはその名前を確認したらとりあえず映画館に足を運ばなければいけない監督のひとりになった。だからこそ『ブレードランナー 2049』はなかったことに。


2位 沈黙 -サイレンス- / Silence

日本を舞台に信仰心の深淵が描かれ、無宗教の身(厳密にはそうではないにしろ、かなり適当な信心しか持たないわけで)にはイマイチ分かりにくさはあるが、それでも妥協のない演出と俳優陣の演技力のおかげでその重いテーマが理解でき、場内が明るくなってからも座席から動けないという体験を久し振りに味わった(まあ確かに2時間40分強という上映時間の長さもあったかもしれないが)。


3位 アシュラ / 아수라

3月は怒涛の韓国映画公開月間だった。『哭声/コクソン』、『お嬢さん』、そして本作。どれも違った持ち味がある上に完成度は格段に高く本当に素晴らしかった。その3本全てを入れるべきで、その内の1本を選ぶというのはおかしな話ではあるのだけど、直近でそんな傑作が並ぶとついつい比べてしまうのも事実。この『アシュラ』は加速するバイオレンス描写が韓国映画に惚れ込んだ頃のそれに一番近く、こういうのが見たかったんだよ!と唸った作品。


4位 新感染 ファイナル・エクスプレス / 부산행

これも韓国産。こちらは真っ当なゾンビ映画。しかもゾンビ史に燦然と輝くレベル。邦画のゾンビ物といえば『アイアムアヒーロー』が迫力のカーアクションを披露していたけれど、あれは韓国で撮影したからこそできたことで、隣国との力の差に色々と考えさせられもした。ゾンビらしい気持ち悪さに、緊迫感、笑い、最後には泣きまである傑作。外国映画での子役のレベルの高さにも改めて驚嘆させられた。


5位 ダンケルク / Dunkirk

その名前を見ただけで劇場での鑑賞は必須といえるクリストファー・ノーラン監督の最新作。彼が初めて挑んだ実話ベースの物語で、しかも彼にしては短い106分。本作は面白いというよりも常に緊張を強いられるという意味で非常に疲れた戦争映画。陸海空それぞれの戦場に自分が一兵卒として送り込まれ敵に命を狙われる感覚を味わうことになる。本物の戦争がそうであるように安易なカタルシスなんてものはない。


6位 ハードコア / Hardcore Henry

昨年The WeekndのPV『False Alarm』(YouTube)に度肝を抜かれ、慌てて調べてみたら映画監督が制作したと分かり、しかも新作が日本でも公開されると知り、首を長くして待っていた。期待通りのド派手な一人称視点アクション。低予算ホラーを中心に浸透している主観撮影法(POV)は主人公、あるいは主人公に近い人物がカメラを持ち、その映像が作品そのものになるというフェイクドキュメンタリーな演出を取るわけだけど、本作は主人公の視点そのままを体感できる演出になる(ゲームをする人にはおそらく一般的なのかもしれない)。POVよりも迫力が増している上に、その臨場感をこれでもかと活用しまくりのやりたい放題なアクションが最高。眼球疲労も大変なものだけど、こうしたアイディア演出は楽しい。


7位 エル ELLE / Elle

フランス映画らしく、筋立てと演出、演技、それとブラックな笑いで魅了する作品(ただ、監督はオランダ人のポール・バーホーベン)。ドラマ的には決して楽しくなるような内容ではないが、見応えあるから引き込まれてしまう。普段見ている映画がハリウッド産なこともあって、物語の進め方が新鮮に感じられたのも良かった。


8位 IT/イット "それ"が見えたら、終わり。/ It

本作の原作の作家スティーヴン・キングのファンにとって『イット』の映像化はもはやトラウマといっていいレベルで記憶されている。公平な目を持てば、キング作品の映像化は失敗が多いのだけど、『イット』は群を抜いていた。だから、本国アメリカで大ヒットと聞いても一切期待していなかった。そうした心理的ハードルの低さが功を奏した部分はあるのかもしれないが、普通に映画として、どちらかといえばホラーというよりも青春物として楽しめた。


9位 ベイビー・ドライバー / Baby Driver

エドガー・ライト監督にはついつい大きな期待を抱いてしまう。それだけの面白い映画を作ってきたからなわけだけど、そうした初期作との比較で見るともう少しやれたのではないかとも思う。だからといって、失敗作かといえばそんなことはなく、カーアクション、サスペンス、音楽、女の子とたくさんの魅力が詰まっている。


10位 キングコング:髑髏島の巨神 / Kong: Skull Island

作品全体の評価でいえば、上の下といったところだけど、クライマックスでのモンスターたちのCGの出来が素晴らしかった。今年は他に『ワンダーウーマン』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』、『LOGAN/ローガン』、あるいは『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』、『ゴースト・イン・ザ・シェル』、『エイリアン:コヴェナント』といったCG大作映画を見てきたけれど、このリブート版『キングコング』第2弾以外に良かったのは『トランスフォーマー/最後の騎士王』と『ドクター・ストレンジ』。前者は予想外なことに前4作より楽しめた。さすがのマイケル・ベイ監督で出し惜しみのなさが素晴らしい。後者も話題になっていた映像の驚きだけではなく、意外に物語も魅せるもので悪くなかった。また、モンスター繋がりでいえば『シンクロナイズドモンスター』はいかにも低予算作品ではあるのだけど、今まで見たことのない趣向のため、話がどう転がっていくのか分からないワクワクがあった。主演のアン・ハサウェイもかわいくて○。



【ソフト鑑賞作品】

古いのも見てはいるのだけど、選んだのはここ数年にリリースされた作品から15本。


1位 湯を沸かすほどの熱い愛 (2016年10月公開)

今年映画館で見た邦画は『三度目の殺人』と長編アニメの『メアリと魔女の花』のわずか2本。世間的には邦画の方がヒット作を出し、洋画の衰退が著しいようだけど、私の中ではいまだ"洋高邦低"の価値観が根強くある。とはいえ、この作品は面白かった!"難病物"といってもいい例のジャンルで物語が進行しながらも、様々な仕掛けを配し、最後で思いもしないオチを持ってきて、全身で愛する人のエネルギーを浴びるという痛快さ。素晴らしい。


2位 テイキング・オブ・デボラ・ローガン / The Taking of Deborah Logan (2014年 / 未公開)

M・ナイト・シャマラン監督の前作『ヴィジット』(新作の『スプリット』はこちらの期待値が高過ぎた)や、『ドント・ブリーズ』と老人ホラーに良作が続く中、アルツハイマー患者の老婆に密着取材するテイのドキュメンタリータッチの本作も負けていない。というよりも勝っている気すらする。単純な恐怖表現だけではなく、サスペンス色を強めているのが素晴らしく、そこに痛みを感じさせるエグさも加わったりして、エンタメのとしてのバランスが良い。


3位 アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 / Eye in the Sky (2015年 / 2016年12月日本公開)

少女ひとりの命か大規模テロの危険性の排除か。ひとりの命を守るためにというきれい事はとても魅力的に映るが、現実ではかなり難しい。そうした問題を見る側が身をもって理解できる作品。作戦に従事する最前線の一兵士から"世界一安全な戦場"にいるトップの立場まで、まるでそこにいるかのような緊張感を味わえる。ただ、邦題に付けられた副題の"世界一安全な戦場"には皮肉を含ませ否定的なニュアンスを持たせているが、本作を見れば決して正しくないのが分かる。どちらの立場が良いのか、あるいは悪いのかという話ではなく、自分が社会でどの立場に立っているのかということも突きつけてくる。アラン・リックマンの遺作らしいが、最後の最後まで素晴らしい演技を披露している。


4位 インビジブル・ゲスト 悪魔の証明 / Contratiempo (2016年 / 2017年3月日本限定公開)

傑作と名高い『ユージュアル・サスペクツ』に近い印象のよく練られたミステリー。前半と後半で様相が180度反転し、さらに一転二転する面白さはこのジャンルの醍醐味。他にも韓国産ミステリー『荊棘の秘密』は100分と短い尺の中に詰め込みすぎた面もあるが見応えはある。いくつもの伏線を張り巡らしてきれいに騙される『手紙は憶えている』も見事。


5位 ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール / God Help the Girl (2014年 / 2015年8月日本公開)

英国バンドのベル・アンド・セバスチャンのスチュアート・マードックが監督脚本を務めたミュージカル青春映画。時代が時代ならオリープ少女御用達みたいなドリーミーさではあるのだけど、チャーミングな劇中歌はどれも最高だし、ガール・ミーツ・ボーイな青春物であり、成長物語でもある。、映画のセオリーを時折無視しながら自分の撮りたい絵を押し通した演出もこの世界観の中では破綻がなく、完全にやりきっているのが良い。クーラ・シェイカーのボーカルが監督した作品もあると聞くので見てみたい。


6位 クーパー家の晩餐会 / Love the Coopers (2015年 / 2016年2月日本公開)

往年のハリウッド映画の良さが満喫できる逸品(名作をほとんど見てもいないのに断言できることではないが)。家族物らしい温かみはありつつも、鋭い刺激はしっかりあって、かつ上品さも失わず、ベタな展開は嫌いと文句垂れながらも見入ってしまう。役者たちの芸達者ぶりも見所のひとつ。


7位 彼は秘密の女ともだち / Une nouvelle amie (2014年 / 2015年8月日本公開)

ここ10年のフランソワ・オゾン監督作の中では群を抜いてる(前作『17歳』も悪くはなかったけど)。キャラクターたちの心の動きが丹念に描かれていて、実感として分かりにくい世界とはいえ、胸に迫るものがあった。


8位 ブルックリン / Brooklyn (2015年 / 2016年7月日本公開)

すごく映画的な作品。セリフだけではなく表情でも自然な演技をするというとても当たり前のことができているだけで、筋立て自体はどうってことはない普遍的な物語であっても、魅せてしまうことを改めて確認した。"いやぁー、映画って本当にいいものですね"と真似したくなった(彼がこの名ゼリフの使い分けをしていたとは知らなかった)。


9位 『パトリオット・デイ』 (2016年 / 2017年6月日本公開)

2013年に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件を描いた作品。今の今まで911事件を『ユナイテッド93』として映画化したポール・グリーングラスが監督したと思い込んでいたのだけど、本作は『キングダム 見えざる敵』や『ハンコック』、『バトルシップ』、『ローン・サバイバー』を手掛けたピーター・バーグ監督によるものだった。何故そんな勘違いをしていたのかといえば、主人公となる警察、犯人、巻き込まれた市民たち、ボストン周辺の警官たちといった多角的な視点で丹念に時系列に沿って描き、入念なリサーチによる説得力と迫力があるからだ。この作風はポール・グリーングラスと思い込んでしまったのだ(付け加えれば、グリーングラス監督はボーンシリーズにも関わり、その主役はマット・デイモン。本作の主演はマーク・ウォールバーグ。ね?)。いずれにせよ見応え十分な作品で、また本作と同じ監督・主演コンビで作られ、実話ベースであることも変わらない『バーニング・オーシャン』(2016)も良かった。


10位 キル・コマンド / Kill Command (2015年 / 2016年6月日本限定公開)

これまで視覚効果を担当してきたスティーヴン・ゴメスによる初監督作。しかもイギリス人でジャンルもSFとなると、『モンスターズ/地球外生命体』でデビューし、すぐさまハリウッドで活躍するようになったギャレス・エドワーズを思い浮かべるが、彼も同じ道を辿るかもしれない。それぐらいにCGの出来がハリウッド大作並みにしっかりしている。低予算らしくCGの利用そのものは限定的ではあるのだけど、効果的な使い方をしていて、貧相な印象を受けない。物語自体も悪くなく、演出にも隙がない。


11位 ジェーン・ドウの解剖 / The Autopsy of Jane Doe』 (2016年 / 2017年5月日本公開)

よくできたホラー映画。基本的には葬儀屋の地下にある検死室を舞台にしたワン・シチュエーション物で、運び込まれた謎の死体が解明されていくにつれて不気味さが増し、恐怖は限定的なその状況だけではなく、見ているこちらにも確実に伝染してくる。明らかにされた真相もなるほどと思えるものだし、続編が作られる余地を残しているのもいかにもホラーらしくていい。限定された空間でのホラーでいえば、『ラスト・シフト 最期の夜勤』も記憶に残る。深夜の警察署を舞台に、洋ホラーにしては珍しく具体性のない怖さを表現していて面白い。


12位 ハロウィン 2016 / Tales of Halloween (2015年 / 未公開)

こちらは怖さではなく、面白さを追求したなかなかレベルの高いコメディホラー。ある町のハロウィンのひと晩を描いた総勢11人の監督によるオムニバス作品となる。ひと口にハロウィンといっても様々な切り口があるものだと感心する。


13位 ホワイト・バレット / 三人行 (2016年 / 2017年1月日本公開)

ジョニー・トー監督の最新作。多作な彼の作品を網羅しているわけではなく、アクション物に限定しての鑑賞になるのだけど、ここ数作の内では一番。クライマックスでの宙吊りシーンではCGと丸分かりでお金をかけていないのが明白な作品ではあるのだけど、歌1曲分の長さのワンカット的な演出を始め、製作費の多寡と作品の出来は関係ないと断言できる仕上がりになっている。


14位 SING/シング (2016年 / 2017年3月日本公開)

ディズニー作品の『モアナと伝説の海』や本作と同じイルミネーション製の『ペット』、邦画だと劇場で『メアリと魔女の花』も見たものの、どれもイマイチだったが(あ、今頃見た『君の名は。』は意外なことにとても良かった)、『SING』は楽しんで鑑賞できた。とてもありがちなコテコテ感のある物語とはいえ、そうした王道ならではの安心感とやはり歌の力が素晴らしい。


15位 愚行録 (2017年2月公開)

登場人物の行状はまさに題名が示す通りであり、後味の良い作品ではない。ただ、次第に明らかになる仕掛けの巧みさと、俳優陣の演技の巧さで見入ってしまう。邦画でいえば、『怒り』も俳優たちの確かな演技力に魅了される作品だった。
2017.12.31 Sunday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
国際市場で逢いましょう / 국제시장

62点/100点満点中

2014年の韓国映画。1425万人もの観客動員を果たし歴代2位(1位は同年の『バトル・オーシャン 海上決戦』)を記録している大河ドラマ。監督脚本は2009年の1位を獲得した『TSUNAMI -ツナミ-』(歴代でも現在11位)のユン・ジェギュン。主演は『黒い家』『生き残るための3つの取引』『ベテラン』(ちなみに歴代3位)のファン・ジョンミン。主人公を支える親友ダルグは『ベテラン』では上司役だったオ・ダルス。兵役時代のナム・ジン役は東方神起のユンホ。

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1950年12月朝鮮戦争・興南撤収の混乱の中で、父ジンギュと幼い妹マクスンと生き別れた少年ユン・ドクスは、母と残された幼い弟妹と共に釜山・国際市場にある親戚の家に身を寄せる。1963年12月、ドクスは家計を支えるため西ドイツの炭坑に出稼ぎへ。どんなに辛く困難な時でも父から最後に教わった家長としての責任を果たすべく家族を一番に考え頑張り続ける。
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人口5000万人の韓国で1425万人の観客動員を記録し大ヒットした作品であり、一応は見ておこうと思うのが韓国映画ファンとしての務めかと鑑賞してみたが、これは同国の人しか見られない類の作品だろう。その歴史を幼い頃から肌身で共有していないとかなり厳しい。外国の人間がここから歴史を学ぼうとするのは良いだろうが(韓国人が西ドイツに出稼ぎに行っていたという事実は知らなかった)、130分と長丁場とはいえ1950年から現代までとそれなりに長い時間を描くとなると、朝鮮戦争休戦直後編、西ドイツ炭鉱編、ベトナム戦争編、1983年のテレビ番組「離散家族を探します」編と掻い摘みながらの駆け足になってしまうのだ。

政治に口を挟むこともない。主人公たちは一般市民であり、政治よりも明日の糧がまず問題になる。唯一あるのがベトナム行き直前の70年代中盤(朴正煕大統領・第四共和国の頃)で、夫婦喧嘩中であっても国旗掲揚させられるシーンか。行わないと非難の目で見られるという演出がある。気づけたのはそれぐらい。

離散家族の再会シーンはさすがに胸が熱くなるし、主人公ドクスが"本当に辛かった"と写真の父に語りかけるシーンには韓国人の万感の思いが込められているのもよく分かる。人の一生分の長さの時間が戦後から流れようとしている中で、繁栄と同時にそうした時代の記憶が薄れていくのを、個室でひとり泣くドクスと彼の一族がリビングで楽しそうにしている姿を対比させるクライマックスの演出が如実なように、ドクスが韓国現代史をどう生き抜いたかを描くことで先人の苦労のおかげで現在の成功があると理解させるが、その姿勢はかなり教育的であり、万人に向けて作られているがために難しい表現は排される。子供から年配まで誰が見てもここは笑うところで、ここが泣くシーン、怒る場面とセリフからも音楽からも容易に共感できるよう考えられている。そうした直球の分かりやすさを追求し過ぎた結果のわざとらしい演出や音楽、主要俳優はともかく脇の子役や外国人俳優たちの大根ぶり、邦画以上に製作費は注ぎ込んではいるのだろうけれど、扱う題材が大き過ぎて、どうしてもしょぼくならざるを得ないCGやミニチュア撮影、あるいはグロテスクな老けメイク等々のおかげで、この130分間は相当の我慢を強いられる。

5人にひとりが見た計算になるわけで韓国人にとっては熱狂できる素晴らしい作品なのだろうが、その国民だけが納得すればいい映画もあるのだろう。それと、先日の『私の少女』に続き、今回も東アジア系の出稼ぎ外国人が西ドイツ編の導入部に登場する。日本には伝わってきていないが、韓国国内では外国人との軋轢が高まっているのだろうか。それともたまたまなのか。少し気になった。
2016.03.11 Friday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
私の少女 / 도희야

69点/100点満点中

2014年の韓国映画。『リンダ リンダ リンダ』『空気人形』『クラウド アトラス』のペ・ドゥナ(1979年生まれ)と、『アジョシ』『冬の小鳥』で高い評価を受けたキム・セロン(2000年生まれ)の共演作。サスペンスドラマ。監督は本作が長編デビューとなる女性監督チョン・ジュリ。ゲスな存在を好演するパク・ヨンハ役は『人類滅亡計画書』でペ・ドゥナと一応共演しているソン・セビョク。原題は"ドヒよ"。

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ソウルから海辺の寒村に所長として赴任してきた若い女性警視イ・ヨンナムは、継父パク・ヨンハから日常的に暴力を受ける女子中学生ソン・ドヒと出会う。村では彼の虐待は問題にされず、反対に唯一の若い働き手として重宝されていた。ドヒを守るために尽力するヨンナムは酷くなるばかりの状況を見かね、夏休みの間自宅で預かることに。
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簡潔にまとめれば、都会から来た若い女性が閉鎖的な田舎町で虐待される少女を救う話。"閉鎖的"であるよう演出され、野卑な雰囲気をたたえるものの、"偏見に満ちた"とまではならないので(階級的なこともあるのだろうが、好意的に、というよりもフラットにか、見ている同僚が多い)、よそ者ヨンナムが疎外され追い詰められるまではないのだけど、イヤ〜な感じが常に醸成されていて最後までなかなか見終えることができなかった。田舎に行ったら襲われた系のホラーは好きだけど、真綿で首を絞められるように包囲網がじわじわ狭められていく設定は苦手。

村社会に異物として混入したことでできる軋轢が作り出す嫌さの他に、もうひとつ漠とした怖さが余韻として残るのは興味深い。ドヒを救った若い警察官ですらも幼い彼女に対し恐れにも似た感情を持っていることに、ヨンナムは彼女を村に残せないと感じたわけだけど、その警官の憶測は正しいのかもしれない。ドヒは長年虐待を受けてきて、愛情の求め方からして歪み(自傷行為等)、また自らの身や新たな庇護者を守るためせざるを得なかったという側面があるにせよ、継父を直接的にハメる前段からすでに準備を仕込んでるわけで(ヨンナムに一度罪をかぶせる)、かなりのしたたかさだ。ドヒはただ可憐な少女ではない。そうしたことを全て理解し、だからこそ少女を助けなくてはならないという善なる精神が主人公を突き動かしたと捉えることは可能だけど(まあそれが普通か)、この先のことを考えると見目麗しいふたりの女性の単なる救済の物語では終わらない不気味さを覚えるのだ。

それもこれもハン・ヒジョン(한희정/Han Heui-Jeong)のアコギに乗った柔らかい歌声が、冒頭と同じ雨の中を走る車と共に流れ出し、こわばった体を優しく包んでくれて楽にはなる。

キム・セロンは『冬の小鳥』や『アジョシ』の頃に比べると成長しずいぶん大きくなり、相変わらず巧いのだけど、ペ・ドゥナと一緒に風呂へ入る場面や継父とのクライマックスシーンなど、気をまわし過ぎで撮り方のトリックだと分かっていても幼児ポルノぎりぎりな気がして落ち着かない。記事を書くにあたり、女性監督だったと知り、その辺りの安心感もあったのだろう。カンヌの「ある視点」部門で上映されたらしいし、欧米での評価はどうだったのか知りたい。
2016.03.11 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
コンフェッション 友の告白 / 좋은 친구들

59点/100点満点中

2014年の韓国映画。クライムドラマ。原題は"良い友人たち"の意。

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お調子者のインチョル、正義感の強いヒョンテ、ドジなミンスの3人は、中学卒業式をさぼり遊んでた山で遭難事故を経験したことで一層強く結ばれ、成人しても変わらぬ友情が続いていた。損保の営業マン・インチョルはゲーム賭博店を経営するヒョンテの母キム社長と彼には内緒で火災保険契約を結ぶ。さらにふたりは放火事件を装った保険金詐欺も計画。彼はミンスを誘い、実行するが、キム社長が死ぬ事態に。何も知らないヒョンテは進展しない捜査にしびれを切らし、自ら犯人を探すべくインチョルとミンスに協力を依頼する。
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テンポが悪過ぎる。泣き落としとまではいわないが、変に情感を込めた演出が多く、無駄に尺を使う。その割には主役の3人以外への待遇が悪く、インチョルの女友達は彼にとって都合がいいだけの女性というだけではなく、物語の中でも人格など何もないかのように好きなように扱われるし、インチョルを追い詰める同じ会社の特別調査部チーム長シン・イスも同様で、亡くなったキム社長に金を貸していた高利貸しリュ社長、あるいは警察も同じように3人の物語を悲劇に導くための便利な部品と化している。

臆病で女性にはすぐに手をあげ、始終怒鳴りちらし、しかもクチャラーなインチョルが軽率で短絡な思考が生み出した犯罪は、全盛期のコーエン兄弟映画のように悪い方に転がっていく。嫌いにはなれない展開ではあるものの、上記したようなご都合主義が如実過ぎて、友情と保身の板挟み的な折角の醍醐味も薄れる。ただ長いだけだ。クライマックスで判明する音楽プレイヤーにまつわるエピソードはいい隠し味だが、そういったワザが随所に発揮されていれば違ったはず。
2016.03.09 Wednesday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
コールド・バレット 凍てついた七月 / Cold in July

64点/100点満点中

ステイク・ランド 戦いの旅路』や『肉』のジム・ミックル監督による2014年のサスペンススリラー。主演は2006年から2013年まで続いたTVドラマシリーズ「デクスター 〜警察官は殺人鬼」で主役を演じたマイケル・C・ホール。共演に『MUD マッド』『8月の家族たち』『ファーナス/訣別の朝』のサム・シェパード、「特捜刑事マイアミ・バイス」や「刑事ナッシュ・ブリッジス」のTVドラマで人気を得たドン・ジョンソンら。保安官レイ・プライス役は監督の相棒として過去作でも出演&脚本を担当しているニック・ダミチ。DVDスルー作。

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1989年テキサス州東部の小さな町。額縁屋を営むリチャード・デインは、自宅に深夜侵入した青年フレディ・ラッセルを射殺してしまう。正当防衛と判断され、お咎めはなかったが、フレディの父ベンは彼に怒りを露わにする。幼い息子ジョーダンの身を案じ、リチャードは警察に協力を要請。万全の警護にも関わらずその夜、何者かが自宅に押し入り逃走する事件が起きてしまう。
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110分という時間にしては大きく展開する物語になるが、ジム・ミックル監督はテンポ良く進めていく。主人公一家が標的にされる話、警察の陰謀、ヒューストンへの移動、フレディの正体、アジトへの襲撃。どれも意外性があり、中弛みがないよう新たな人物の出し方もよく出来ている。ただ、全体として見た時に、例によって原作小説は未読だけど(これまでに8度もブラム・ストーカー賞を受賞しているジョー・R・ランズデールの『凍てついた七月』)、おそらく筋書きを追いかけることに一生懸命になり過ぎた印象を受ける。

父親ふたりのそれぞれの息子への対応が描かれる。ひとりは懸命に守り、ひとりは涙しながら罰する。最愛の存在でありながら後者を選ばなければならなかった苦しみはしっかり描かれるし、俳優の良い演技も披露される。でも、それだけの大きなドラマが脚本のただの一要素としての扱いで終わってるのが残念だ。これまで幾度となく見てきた凡庸な演出ではなく、一切の躊躇いなしで撃つシーンはかなり惹かれるものがあるが、そのクライマックスの導入部にある、自分が持つ拳銃を掴まれ自分を撃ちそうになるというありがちに過ぎる演出からの赤く染まる色調などテレビドラマ的な安っぽさに辟易させられたことも影響しているのだろう。

それと、1989年という中途半端に古い時代を舞台にする必要があったのか最後まで疑問だったのだけど、原作小説について検索したら同年にアメリカでは出版された作品だったようだ(翻訳はその10年後)。現代劇に変更して良かったと思う。リチャードのえり足を伸ばしている当時のダサい髪型が気になってしまったから。
2016.03.08 Tuesday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
リピーテッド / Before I Go to Sleep

60点/100点満点中

ニコール・キッドマン主演の2014年のサスペンスミステリー。共演にはコリン・ファース、『記憶探偵と鍵のかかった少女』『イミテーション・ゲーム』のマーク・ストロングら。製作費2200万ドル。

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事故の後遺症で朝目覚めるたびに前日までの記憶をなくす記憶障害を負ったクリスティーン・ルーカスは、夫ベンから献身的に支えられ生活している。ベンの出勤後、担当医を名乗るドクター・ナッシュから電話がある。治療として夫に内緒でビデオ日記を撮影するよう指示してきたと告げ、その隠し場所を教わる。早速再生したクリスティーンは障害の原因が事故ではなく、何者かに襲われたためと知る。夫と医師の説明はまるで食い違い、何を信じていいか混乱するが。
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それほど悪い出来ではないし、役者も揃ってる。が、ドキドキさせられるシーンはあっても、やや平坦なまま、キッドマン・ファース・ストロングが演技をしてるなぁで終わってしまう。デジカメの録画機能を利用し、隠されていた事情が少しずつ判明していく展開など悪くないし、こいつが悪者だろうと思っていた人物がそのまま犯人であってもひと工夫はある。

それでは一体何が悪いのか?同じく普通の主婦を演じた『ラビット・ホール』の時とは違い、今回のニコール・キッドマンは野暮ったい髪色と髪型で役になりきろうと努力してしまい、いつもの輝きがない(隠している)のが原因に思える。どうせ平板なサスペンスになるなら、往年のハリウッド映画のそれのように市井の主婦にこんなオーラを放つ人はいないだろうぐらいの無理があっても、キッドマンの本来の美貌を楽しめる演出で良かったのでは?
2016.03.07 Monday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
パージ:アナーキー / The Purge: Anarchy

67点/100点満点中

2014年のSFスリラー。『パージ』の続編。監督脚本は引き続きジェームズ・デモナコ。製作費900万ドル。

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2023年アメリカ。1年にひと晩だけ殺人を含む全ての犯罪が合法となるパージ法のある社会。パージ開始まであと数時間と迫る中、娘カリと共に低所得者地域に暮すシングルマザーのエヴァは病気の父の行方を気にし、別居に向けた話し合いが進む夫婦シェーンとリズは高速道で車が故障してしまう。一方、亡くなった息子の仇をとることだけを考え生きてきた男は完全武装し、装甲仕様の車で街へと繰り出す。
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製作費が3倍に跳ね上がったことで、宇宙船内の攻防から宇宙基地での"戦争"になった「エイリアン」シリーズのように、あるいは高層ビルでの縦ロールからより広い空港を舞台に横スクロールなった「ダイ・ハード」シリーズのごとく、スケールアップがしっかり図られている。続編は駄作との例の定説から増えた製作費を有効活用することで脱却しようという努力は報われたといっていい。

前作から1年後を描く続編とはいえ、話そのものに繋がりはなく、サンディン一家は登場しない。この1年で何が起こったのか説明されないが、失業率が5パーセント以下に抑えられた近未来はその前年が1パーだったわけで、もしかしたら陰りが見えているのかもしれない。ともかく、9年前に就任し"新しい建国の父"と称えられるD・タルボットが少し姿を見せたり、今回のパージが第6回だったりと世界観が少し明らかになる。さらに重要なのはパージ法が"貧困層の排除を狙った政策"でしかなく、抵抗しようと呼びかける黒人活動家カルメロの存在だ。

一軒家を舞台にしたシチュエーションスリラーから、見知らぬ3組が偶然一緒になり無法地と化した一夜を無事生き残れるかというサバイバルスリラーとなり、派手に機関銃がぶっ放され、車両は火柱を上げ、パージを善行と捉える人たちの狂気が渦を巻く様子が映し出される。

一番盛り上がるはずの人間狩りが、そういう設定で仕方ないと理解しつつも、闇が深すぎて何が何やらな演出になっているのは残念だ。またパージ法には裏ルールがあるなどといきなり説明されても(彼らの存在意義の解説が必要だったのは分かるが)、もともと幼稚な設定で鼻白むギリギリのところで保ってる作品だけに、色々明かすのは結構だけどそのバランスには難しさがある。

今年7月には3作目が公開されるようで楽しみ。反パージの活動家カルメロが政府を転覆させる物語になるなら面白いと思ったけれど、しかしそれでは『ハンガー・ゲーム』か。
2016.03.06 Sunday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
パージ / The Purge

69点/100点満点中

イーサン・ホーク主演による2013年のSFスリラー。製作にはマイケル・ベイの名前も。監督脚本は1998年『交渉人』で脚本を担当していたジェームズ・デモナコ。製作費300万ドル。

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2022年アメリカ。"新しい建国の父"が1年にひと晩だけ全て犯罪を合法とするパージ(浄化)法を施行したことで犯罪率や失業率が劇的に改善、米国はかつてない平和な時代を迎えていた。防犯システム会社の敏腕営業員ジェームズ・サンディンは妻メアリーとふたりの子供(娘ゾーイと息子チャーリー)と共に3月21日のパージの日を迎える。自慢の堅牢な防犯設備のおかげで何の心配もないはずだったが、家の前で助けを求める黒人男性をチャーリーが無断で入れたことで一変。彼を狩っていた若者たちが現われ、男を引き渡すようジェームズに迫る。
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2013年6月の全米映画興行成績で、2週連続首位だった『ワイルド・スピード EURO MISSION』を押しのけ、初登場1位に輝いたのが本作だった。興収3637万ドル(約35億円)は"ノンシリーズのR指定ホラー作品としては歴代最高のオープニング"成績だというし、日本でも知名度があるイーサン・ホーク主演作でもあり、すぐに日本でやるかと思ったら、これがなかなかなもったいぶり。翌年夏には続編『パージ:アナーキー』も初登場2位と好成績を記録し、ついにかと期待したら甘かった。日本では2015年に入り、『パージ』が7月18日、その2週間後に『パージ:アナーキー』の公開とあいなった。まあ興味も薄れて劇場には行かなかったのだけど、ソフト化は迅速で、その3ヶ月後。スクリーンで鑑賞しなかった身にはありがたい話ではある。なお、本国では今年の独立記念日に第3弾『The Purge: Election Year』(予告編)が公開だ。

1年で半日、夜の12時間(19時から翌朝7時まで)だけ全ての犯罪が自由に行える近未来という大きめの世界観を打ち出しつつも、主人公一家の自宅が殺人集団に襲われるというシチュエーションスリラーにすることで低予算によるしょぼさをうまく回避している。かくまってしまった黒人男性を若者たちに差し出すのに設けられた時間制限は焦燥感を煽り、自宅内とはいえ暗闇が作り出す緊張感など目新しさはないもののしっかり工夫はなされ、余計だとは思うが、主人公ジェームズ演じるイーサン・ホークの指示を守らず、家族たちがてんで勝手に動き回るため見ている側のストレスも順調に蓄積される。

冒頭で増加し続ける暴力事件のニュース映像を流す演出や"パージ"についてのラジオ討論、テレビが街の状況を映し出したりする演出は『スターシップ・トゥルーパーズ』を彷彿させる(あそこまでのブラックコメディさはないが)。現代アメリカが抱える問題を劇画化しているのだろうが、2013年製作の完全オリジナル脚本ということは、その翌年夏に起きた「マイケル・ブラウン射殺事件」やその後の一連の黒人への白人による差別事件は関係なく、それ以前から頻発していた銃乱射、同時にますます進んでいく格差社会の危うさを炙り出しているのだろう。

そうはいっても、パージ法が制定されたという設定は『リアル鬼ごっこ』の山田悠介が思いつきそうな荒唐無稽かつ幼稚さがある。しかし、暴力や残虐描写をきちんとエグさを持って映し出すことで説得力をもたらしているし、これほどのヒットになるとは思わず、続編の予定がなかったからこそできたオチだとは思うが、その思いっきりの良さも好感度を高める。それと、米大統領選への各党の指名候補争いが続く2016年現在から見ると、あながち・・・となってしまうほど笑えない状況なっているのが何より怖いのだ。
2016.03.05 Saturday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
殺人の啓示 〜死を誘う男〜 / The Calling

点/100点満点中

スーザン・サランドン主演による2014年のカナダ産スリラー。サランドンの母親役で『エクソシスト』の少女リーガンの母親を演じたエレン・バースティンや、ドナルド・サザーランドも出演。DVDスルー作。

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カナダ・トロント郊外の静かな町フォート・ダンダスで4年ぶりの殺人事件が発生。女性署長ヘイゼルは被害者の老女ディーリア・チャンドラーの死体に残された不自然な口の形と、続いて起きた隣町チェンバレンで見つかった死体との類似点を手掛かりに、新任の刑事ベン・ウインゲートのひらめきもあり、事件が連続殺人だと気づく。目撃された不審車からサイモンと呼ばれる男が捜査線上に浮かぶが・・・。
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大きなスクリーンで見るには確かに地味な映画かもしれないが、DVDスルーというのはもったいないと思わせる、しっかりとしたいい映画だ。キリスト教をネタにするため、"七つの大罪"を模倣する連続殺人鬼が登場する『セブン』を連想させるし、実際にオープニングで掴みとなる遺体は十分に衝撃的ではある。が、本作は『セブン』に比べるとずっと静かだ。そして、時間を無駄にせず、物語を詰め込み、そうはいってもただ事実を追うのではなく、サランドン演じる女性警官ヘイゼルが抱える問題をも合わせて展開させていく。印象的に映し出す光景や音楽も効果的だ。

部下に出張させたり(マイルを使わせるなど妙に現実的)するものの、基本的には自分の足で獲物を追うという伝統的なハードボイルドな捜査の進め方をする。ただ、その主人公ヘイゼルの勘と、容疑者サイモン(ピーター)の神の御業かと思わせる行いがそれまでの丁寧な展開をひょいと凌駕してしまう場面が終盤に出てくるのは、オチは別にあれでいいのだけど、せっかく雰囲気は悪くないだけにもう少し丹念に進めても良かったにと思わせる。

腰のヘルニアの痛みに悩むヘイゼルはそれ以前には薬の過剰摂取で自殺未遂をしかけ、あるいは子供を亡くしたりと、様々な苦しみを負ってきた人物と描かれる。そんな彼女がこの事件の被害者たちの気持ちをある意味で理解し、さらには自分もまた・・・という危うい展開に違和感なく突き進むことができるのは名優スーザン・サランドンによるところが大きい。『ランナウェイ/逃亡者』でも、セリフで説明せず表情だけで固い信念を持つ現役活動家であることが分かる役を演じて切っていたが、今回も同様に彼女はヘイゼルを完全に自分のものにしている。
2015.10.07 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
インサイド・ミー / Plush

46点/100点満点中

『トワイライト〜初恋〜』『赤ずきん』の女性監督キャサリン・ハードウィックによる2013年のサスペンス映画。主演は『エンジェル ウォーズ』『トランストリップ』のエミリー・ブラウニング。共演には、『ラブド・ワンズ』で逆にヒロインに襲われる役を演じたゼイヴィア・サミュエル。TSUTAYA限定レンタル作品。DVDスルー作。製作費200万ドル。

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ヘイリーは弟ジャックとロックバンドを組み、人気が出たものの、雑誌記者カーターと出会い、双子を身ごもり結婚する。相棒を失ったジャックはその喪失感からクスリに走り、結局死んでしまう。苦しんだヘイリーは再び詩を書き始め、ふたりのバンド・プラッシュを再始動。弟に替わるギターリストとしてエンゾを加入させ、ふたりのコラボは成功したように見えたが、同時にふたりは関係を結んでしまう。ツアー期間中だけの仲のはずだったが・・・。
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キャサリン・ハードウィックという監督は『トワライト』を見ずに、『赤ずきん』だけの鑑賞で断言するのもなんだけど(『ロード・オブ・ドッグタウン』は途中でギブアップした)、とても詰めが甘い。そしてダサい。冒頭のタイトルロールからしてどうだろうという出来だし、ロックスターのグラマラスな生活を表面だけこそげ取ることで記号化の羅列でしかない前半は当然のように無駄に長い(しかも、ジャック・ホワイトとコートニー・ラヴの姉弟という設定だ。メグではないだろう)。

オープニングの猟奇的な殺人、ヘイリーの旦那カーターが追っている連続殺人事件など、伏線的に情報は出されるものの、それまたなんだかヤバい殺人鬼がいるという記号でしかない。わざわざ加えているカーターの連れ子にしてもたいした役割を担わされることはなく、不必要でしかない。ヘイリーのお隣さんの態度も無駄に印象が残るという意味でノイズにしかなっていない。ラストシーンの思わせぶりもいかにもお子様向けだ。

撮りたい絵は見えているのだけど、それを生かす演出や脚本が作り上げることができず、ただの散漫な物語に終わる。『赤ずきん』と同じ。

"禁断のエロティック・サスペンス"や"音楽も本格的なロックムービー"との宣伝文句が躍るが、禁断のエロティックというほどではない。エミリー・ブラウニングには『エンジェル ウォーズ』の頃の輝きはもはやなく、主婦ロッカーという役どころにぴったりでその意味ではリアリティはあるが、エロスはいくら下着をとっかえひっかえしようが生まれるものではない。"本格的なロックムービー"に関してはプラッシュが歌う曲のメロディは悪くない。エミリー本人が吹き込んでいるのかは知らないが、雰囲気のある歌声ではある。ただ、いかにもロックスター然としたツアーはそこれこそ漫画『NANA』のような少女趣味なありきたりな描写に留まり続ける。
2015.09.11 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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