読了。
☆☆☆/5点中
第16回坪田譲治文学賞受賞作品。
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12歳の主人公は、父の破産で、東京からひとり九州の炭坑町に辿り着く。
子どもでいられる最後の夏を、その町で過ごす。
自分たちでヨットを造り、玄界灘の無人島に行こう!
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東京オリンピックの前年で、炭坑が閉山を始めたころを舞台にしている。
登場人物達はみな生活は苦しいけれど、生き生きとして、
この手の物語にありがちなよそ者をいじめる話に終始することなく、
カラッとした描写が続くのがいい。
けれど、なんというか余りに昔語りに過ぎて、読後感に感動がない。
この後が気になった。
一時の客人として過ごした主人公にとって、暖かい場所だっただろうけれど、
炭坑で暮らす人々にとっては斜陽化する産業で生活するわけで、
その事実と東京生まれ東京育ちのボンボンがどう関わっていくのか、
そこにこそ青春小説があるように思った。
ヨットを作って無人島に渡るという、いかにもな青春が描かれているけれど、
いいとこ取りでしかないような感じがした。
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上野哲也(うえの てつや)
1954年、福岡県生まれ。県立田川高校卒業後、上京。小説家を志す。
1999年、「海の空 空の舟」で第67回小説現代新人賞受賞。
2001年、『ニライカナイの空で』で第16回坪田譲治文学賞受賞。
2000.06 『ニライカナイの空で』(講談社)
→講談社文庫
2001.05 『雨を見たかい』(講談社)
→【改題】『海の空 空の舟』(講談社文庫)
2002.11 『亀は行く』(講談社)
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