Cocco『きらきら』

2007年7月25日リリースの6枚目。
傑作。
黒い情念が渦巻いていて最高だったファーストやセカンドとは異なる方向性ではあるけれど、
本作でのこっこは涼やかに伸びやかにしとやかに朗らかに歌い上げ、メロディの良さとも相まって、
本当に素晴らしい作品だと思う。
前作はかなり期待はずれで、今作を買おうかどうしようか迷うほどだった。
しかし、音楽番組やタワレコのフリーペーパーのインタビューを読むと、
とても自然なこっこがいて、思わずミニ写真集が付いている方を買ったのだけど、
帰り道の電車の中で封を開けてその写真集を見てみたら、すごくいい顔をしたこっこや
素敵な雰囲気のスタジオが写っていて、徐々に期待が高まっていった。
そして、それは裏切られることはなかった。
ファーストやセカンド以来の傑作アルバムだ。
7月27日の「僕らの音楽」という番組で、香取慎吾と対談したこっこが、
2001年の活動休止の理由を語っていた。
"歌が好きだと思ったから、歌を何か商売にしたくないと思ったの。それまではこっこはバレリーナになりたくて、東京に来て、で、ずっとなれなかったから挫折したと思ってて、沖縄にも帰れないしってなったら、何か間違えて歌手になっちゃって。そしたら、バレリーナのときは誰も足を止めてくれなかったのに、歌手になったらみんながいいというわけよ。で、悲しいこととかがいっぱいになったときにそれを歌で出したら、人はそれをいいというけれど、こっこにとってそれはうんこなわけ、ただの。嫌なのだから排泄しないといけない。排泄行為を人はいいといって、だからもうそれがどうしていいかわからないだったわけ。だけど、ある日、ハッ!歌好きだって気付いてしまったわけ。その瞬間にうんこじゃなくなったわけよ、うんこが。ハッ!辞めないといけないと思って。なんでかっていったら、みんながこっこにうんこを求めていたから、歌はうんこじゃなくなっちゃったから、私うんこで商売できませんと思って、辞めた"
私はその"排泄行為"が好きだった。
芸術表現は排泄行為だと強く思っていた時期があった。
感情の爆発的な吐露こそがアートだと。
こっこは特大級のうんこをひねり出してくれる希有なアーティストだった。
だからこそ好きだったし、Cockoの頃からずっと注目していた。
こっこがいつ頃歌が好きだって気付いたのか知らないけれど、
確かにサードアルバムぐらいから音に面白味が薄れてきて、
やがて4枚目後に活動休止、5年のブランクを挟んで出した5枚目もやっぱり微妙な作品で、
もう聴かなくてもいいなと思っていた。
けれど、本作の素晴らしさ。
何が違うのかといえば、メロディが生きている。
タワレコのインタビューで答えていた。
"朝起きたときの歌とか、ちっちゃい歌、クズ歌みたいなものまで"収録したと。
作ろうとして作った歌ではなく、生活の中からわいてくる親しみのある、人なつっこいメロディが
たくさん詰め込まれていて、いいのだと思う。
全18曲も収められているけれど、時間にして63分。
2分から3分のかわいらしい曲が多く、笑顔や笑い声が聞こえてくる。
本当にこっこは変わったのだなとようやく感じられた。
M4「甘い香り」、M7「秋雨前線」、M10「花うた」、M12「小さな町」、
M19「Never ending journey」のような展開がしっかりしているシングル向きの曲もいいが、
M1「燦」、M2「あしたのこと」、M3「In the Garden」、M9「君がいれば」、
M11「Tokyo Happy Girl」、M14「ハレヒレホ」のような曲が今作は魅力的だ。
特にM3とM16「10 years」の長田進とふたりで演奏された曲がいい。
M3のちょっとしわがれたサイドボーカルがいい味を出している。
こっこの良さとは違うけれどM15「タイムボッカーン!」のR.E.M.の『モンスター』期のような
太くてやや無防備なノイズギターがたまらなかった。
全体的にアレンジは過剰にならないで、メロディの良さを生かしているのも良かった。
"愛"という言葉がたくさん出てくるアルバムで、幸せなこっこが伝わってくる。
聴いている自分にもそれがそっと伝染してくる幸福なアルバムだ。