すばらしくてNICE CHOICE

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小林大吾『1/8,000,000(やおよろず)』

2005年6月10日リリースのファーストアルバム。

全13曲。短いインストが4曲含むため、時間にして32分24秒と短い。
が、詩世界は深く、鋭く、残酷で、同時に柔らかさや楽しさ、愉悦をも兼ね備えている。
先日ブログにアップされたTakatsuki(タカツキ)のSMRYTRPSメンバーへの苦言で、
小林大吾の今秋にリリースされるセカンドアルバムの素晴らしさと対比させていた。
ライブで2回聴いているので、その良さは知っていたが、
このファーストアルバムは買ったまま、何故か聴いていなかった。
で、慌てて聴いてびっくり。
すげえ。

小林大吾の表現方法は自身で作ったビートの上に詩を乗せたポエトリー・リーディングだ。
ラップとポエトリー・リーディングの違いが何かといえば、
どちらも詩を声にして発するという意味では変わりはないけれど、
押韻を強く意識するのがラップだと解釈している。
(専門家に言わせれば違うのかもしれない)

ネットに載っていたあるインタビュー(http://po-m.com/inout/06daigo.htm)で、
小林大吾は、文字にする詩と声に出す詩は別物として創作していると語っている。
声に出す詩には、分かりやすさを意識しているようだ。
確かに彼の詩には難解なところがなく、聴いてすぐにイメージが頭に思い浮かぶ。
例えば、夏の風情を詠ったM2「ためらい」では、

"ロケットセット / ビール瓶 / 一輪挿し / 花火 / 火に点ける燐寸 / 箱のしるし / 桃 / レトロ /
 打ち上げて夜にのびる白線はまっすぐ / こころもちの溶暗(フェードアウト) /
 そのすぐあと / はじけるパチンと手を叩くように / 知ってか知らずか消されてゆく足あと /
 見上げればはるか上で舞う火の粉のポルカ / こども心 / 虜 / これが踊り子の残り香"

独特な視点や表現の軽やかさもさることながら、大事なのは彼の声が持つ説得力だと思う。
確かに夏の夜空を横切る打ち上げ花火が見えるのだ。

ヒップホップの世界には"リリシスト"と呼ばれるMCが結構いる。
無意味な比較だし、ヒップホップ界の"リリシスト"をただ詩人と訳せないのも理解できるが、
仮に韻というくびきから解き放たれたときに、表現の多用さという点において、
小林大吾ほどの表現力があるのか疑問だ。
詩人である小林大吾が当たり前のように言葉でのみ、現実を切り取り、
あるいは新たな世界を創り上げ、聴き手に郷愁を覚えさせ、ワクワクさせる。
それと同じように提示できるリリシストがヒップホップにどれほどいるのだろうか。
ふと思う。

"部屋のすみで鬼が石榴の肉をかじる/翌日は水回りで羊がごしごしと手を洗う/
 人をあやめでもしたようなくたびれたうしろすがた/まどろみにみる窓の向こう/
 とまどいの客人(まろうど)/羊に羽根をむしられた天使をみる/たしかにあいつの羽根はすこし
 ・・・白すぎる"
M8「歩く」

"ときどき錯覚したりはしませんか、紙面をいろどる事件の数々がどれもこれも例外なく
 じぶんに関するものであるとでもいうような? そうしてときどき想像したりはしませんか
 いつだかの些細なあやまちが紙面のすみを控えめに埋めていたとしたら?"
M11「棘」

"営団地下鉄エドガー橋駅/A1出口でみかけた生まれつき後ろ脚の片方がない猫は
 すれちあう4本足を多すぎやしないかとふしぎそうに眺める"
M11「棘」

2体の鉄クズが話し合うM4「鉄工所の夜」では、
交換することのできない永遠の部品こそが"知恵"だと喝破される。

"言いたいことはいくつある? ひとつしかないなら、言わずに黙っておくほうがいい。
 手に余るほどもっているなら、その大半は考えるだけムダだ。
 言いたいことはいくつある? ひとつもないなら、舌はいらない。
 口のなかでペットみたいに大事に飼いつづけてみてもいずれはことばとともに腐ることになる。"
M1「エイミーと尨犬」

"詩情あふれる唾を吐く、ファック、かくもすばらしく、だがだれひとりとして見向きもしないその唾をみれば泣けてくる"
M1「エイミーと尨犬」

"しなやかに羽ひらくさなぎのように/音を立ててしまる扉のように/こおりつくまぎわの真水のように/
 秘密を知ったこどものように/息をのめ/目をみはれ/日がのぼる"
M13「笛吹きの末裔」


2004年1月に行われたSSWS第1回グランド・チャンピオン・トーナメント決勝での、
"ジョシュアの話"は音源化しないのだろうか。
今でもSSWSのHPで見られる。
(「http://www.music.co.jp/studio/pm11/ssws20040131.ram」に飛べば、
RealPlayerが立ち上がり、18分11秒から決勝のパフォーマンスが始まる)
ストーリーテリングとしての物語の面白さは格別だけど、
聴き終わった後の何ともいいようのない気持ちが、心のどこにも納まりどころを見つけられず、
ザワザワとうごめく。


*********************
2005.06.06 1st AL『1/8,000,000(やおよろず)』
2007.11.07 2nd AL詩人の刻印
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2007.09.14 Friday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
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2017.04.19 Wednesday 23:59 | - | - | -
コメント
小林大吾のこのアルバムは素晴らしかったですね。
ボクはラップを聞くのに韻とかまったく興味ない方なので
ポエトリー・リーディングな方々のほーが合うんですよね。
ツジコノリコのSOLOの中でもポエトリーっぽいのがあって
かなりツボでした!

岡山のINUNOHANAのCARNIVAL EVEというアルバムも
かなり素晴らしい作品です。機会があったらぜひ!
ピクニック | 2007.09.15 Sat 22:16
ピクニック様

こんにちは。

> 小林大吾のこのアルバムは素晴らしかったですね。
ホントいいですよね。セカンドアルバムが楽しみです。

> ラップを聞くのに韻とかまったく興味ない方なのでポエトリー・リーディングな方々のほーが合う
少し分かります。
私の場合はポエトリーリーディングの方が内容が肌に合うから好きというのもありますね。
Tokyo No.1 Soul Setとかもそうですけど、ナイーブなところがいいです。

> ツジコノリコのSOLO
ありがとうございます。
「Tujiko Noriko」ですか。聴いてみたいです。

> 岡山のINUNOHANAのCARNIVAL EVE
こっちも初めて知りました。
検索していたら、ディスクユニオンで試聴できました。
(http://diskunion.net/clubh/search_result.php?type=1&for=1&kwd=715662&no_alphabet=1)
いい感じです。
売り切れが残念です。いずれ手に入れたです。

ご紹介ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!
gogonyanta | 2007.09.16 Sun 12:02
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