すばらしくてNICE CHOICE

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東直己『悲鳴』

読了。
☆☆☆/5点中

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私立探偵・畝原が引き受けた依頼は、ごくありふれた浮気調査のはずだった。
夫の浮気現場の撮影をするべく、畝原が依頼人から指定された現場で張っていたところ、
現れたのは夫の本当の「妻」だったのだ。
依頼人の女は、何者なのか? やがて畝原へのいやがらせが始まり、
依頼人の女に関わった者たちに危機が・・・。
畝原は次第に警察、行政をも敵に回す恐るべき事実を探り当ててしまうのだった。
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「人間は、もっと、人間のことを知るべきです。つまり、人間は、得体の知れないものなんです。私は、ワイド・ショーなどで、恐ろしい事件が報道される、その度に、キャスターはともかく、コメンテイターたちまでもが、とても信じられないとか、理解できないとか、異常だとか、そういう平凡な感想を述べることに耐えられない。そういう、愚かな社会に耐えられないんです」
(中略)
「人間は、得体の知れないものだし、人間同士は理解できないものです。そして、少なくとも、昔の人間は、そのことを常識として知っていた。恐ろしいことが起こった時、それをひたすら恐れる一方で、人間には、まかり間違うと、こういうことをする可能性があるんだ、ということを知っていた」
(中略)
「昔、というと?」
「我々の先祖は、いくらでも、そういう物語を、大切な記憶として、語り伝えてきたじゃないですか。安達ヶ原の鬼婆。あれは連続殺人者の記憶です。安珍清姫。あれは、ストーカーの記憶です。八百屋お七。幼稚な、初めての性愛に我を忘れた、愚かな少女の記憶です。昔話や、説教節や、そう、歌舞伎でもいい、そういうものの中で、人間は、下手をすると、なにをするかわからない。そのことを、ずっと語り継いできたのではないですか。(中略)もしかすると、なにかのきっかけで、自分もそうなるかもしれない。だから、そのことをきちんと認識して、警戒し、そのことを見つめるべきです。それなのに、そういう記憶をどんどん失い、人間は、すべて、ひとりの例外もなく、本来は善である、と思い込むことに決まっている日本。そして事件が起きる度にうろたえる。愚か者、と私は言いたい。人間は素晴らしい。だが、悪の可能性も持っている。その可能性を見据え、考えの視野の中に入れなければ、いつまでも、人間は愚かなままです。保険金殺人は、日本で簡易保険が始まった翌年、すでに発生している。明治の中頃に、ですよ。(中略)ただただ、一昨日起こった子供の虐待、昨日起こった親殺しに、『信じられない』『なんて異常な』と反応しても、無意味なんだ。それは、とっても愚かなことだ」

思いっきり長々と引用をしてしまったけれど、重要な登場人物のひとり、
アブちゃんバスター・高橋のセリフだ。
日頃なんとなく思っていたことが書かれていたので思わず書き出してしまった。


さて、文庫版にして675ページもある本作は読み応えがある。
そして、分厚いだけのことはあって、物語が複雑に絡み合う。
最初は一本の線の上を走っていたのに、気づくと隣にもう一本、別の線が走っていて、
また気づくと上にも斜め上にも別の線があり、という具合に謎がどんどん深まっていく。
主人公・畝原がどうして窮地に立たされるのかという疑問がついついページを捲らせる。
そしてラスト、タイトル『悲鳴』の意味が分かったときに、やりきれない気分を味わうのだ。

前作から半年後の5月。
変わらずに、愛娘・冴香(中学生になった)も、姉川(ちょっとだけ進展)も、
タクシー運転手・太田さんも刑事の玉木もみんな登場して、
一緒にストーリーの急流にもみくちゃにされていくのは、素直に楽しい。
2007.11.07 Wednesday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
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