すばらしくてNICE CHOICE

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勝手な感想を書いていきます。
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小林大吾『詩人の刻印』

2007年11月7日リリースのセカンドアルバム。

"屋根の上に怪獣(ガーゴイル)がいる
 口をあけたまま 永遠に絶句している"

傑作!
購入してから何度聴いたか分からない。
入眠時のヘビロテは長らくMEISOの『Jitensya』だったけれど、ここ1週間は、
M3「アンジェリカ」とM6「三角バミューダの大脱走」をまず聴いてクスッと笑い、
それから1曲目に戻して流し始めると、その心地よさにいつのまにか眠ってしまっている。

最高!
たぶん今年リリースされたヒップホップアルバムの中でもかなり上位に位置する作品だと思う。
ライブで、小林大吾が"ポエトリー専門だから"と発言しているのを聞いたことがある。
前作のファーストアルバム『1/8,000,000(やおよろず)』について書いた文章で、
ラップとポエトリーリーディングの違いについて適当なことを書き散らかしたけれど、
このアルバムを聴いていると、ラップとポエトリーリーディングの違いが分からなくなる。
今作での小林大吾には独特のフロウがあるし、韻だって踏んでいるし、
ビートとのシンクロ率も相当なものだ。
トラックが小粋にスウィングしていて、気持ちよさが倍増している。

前作の1曲目「エイミーと尨犬」と同じように、今作でもM1「ガーゴイルの言いかけたこと」で、
小林大吾は言葉と生きていくことを気高く宣言する。

"声とは自分のためにあるのではないのだと
 知るのにかかった時間が悔やまれるけれど
 ひとりなら初めから必要のないもの
 声はいつもあなたのためにこそある
 玲瓏(れいろう)たるまやかしと大鋸屑と機微を
 ほうぼうにあしらいながら語るとしよう
 罪人まがいの烙印を押された詩人の名のもとに"

千鳥足の酔いどれ詩人が落としていく至言の数々が楽しいM2「手漕ぎボート」。
"留守電に神様から吹き込まれた短いメッセージいわく
 「もうちょっとましな舵の取りかたはないの?」
 あんたが用意した船にはついてなかったよ舵なんか"

"愛とファックを一緒くたにするから怒られる
 ふたつにひとつだ、どっちかを選んだらいい
 うまいこといけばもう片っぽがおまけでくっついてくる"

誰もが恋してしまうアンジェリカの詩、M3。
"青い鳥"を焼き鳥にして、救急車をちょろまかして笑顔で謝る彼女にますます見惚れて、
浦安のネズミどもを一緒になってはねて、100マイルのスピードで246号をぶっ放して、
"ぴかぴかに研いだ死神の鎌をかついで"、スナーク狩りにお供したいものだ。

パンチラインは、
"ギリギリで反則な刺激と爽快感、ソーダ水のなかで泳ぐ水母みたいな気分だ!"

M4「二度ふれる前に消えてなくなれ」。
発せられる言葉は、その瞬間消えていくのだけど、その余韻だけが耳にいつまでも残る。
相当に錬られた作品だと思う。
韻が当たり前のように凝らされているのもいい。

ライブで聴いていたM5「三角バミューダの大脱走」。
再びムール貝博士に会えて嬉しい。
リポーターが関西弁になっているのが楽しい。
ストーリーテリングの逸品。

スイカ夜話 Vol.9」で、"戦争なんてばかげている"ということを声に出していうことに、
意味があると話してから、始めていたM8「蝸牛の憂鬱」。
そのライブで聴いたときは、イマイチな感じがしていたが、
じっくり音源で聴くと良く思えてきた。

"愛は大して役には立たない
 それでも捨てられたためしだけはかつて一度だってない
 もしまだ商品登録されていないのなら今もそれは人類共通の美徳のはずだ"

そして、歓喜のM9「饗宴」。
ライブでの高いテンションの方が好きだけど、でも楽しい。
こんな感じで、八百万の神様たちが天上で騒いでいたら面白いね。
下界で、宗教戦争するバカどもを見下ろして。

"正しいってのがつまり大多数ってことなら なに、しがみつくほどの価値はないさ"
"みろ、灰色ばかりが目立つものごとの白黒を法螺吹きがバラ色に塗り替えるところを"
M11「話咲く種をまく男」。
初めて聴く最後のヴァースのフロウは結構いい。
この感じで完全に1曲やったら、中身のないラップが一掃されるはず。


タカツキは正しかった。
小林大吾の新作は本当にすごい。
言葉の力を信じて、かといって盲信することなく、吟味精査し、語感を確かめ、
確固たるテーマに沿って、ユーモアと皮肉と希望を忘れずに、紡ぎ上げている。
ファーストの完成度にも驚いていたけれど、さらにその上をいく傑作を作り上げてきた。
ホントすごい。
2007.11.18 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(7) | trackbacks(0)
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2017.12.16 Saturday 23:59 | - | - | -
コメント
お久しぶりです
完全に同感です!
「タカツキは正しかった」
まさにその通りです!タカツキは正しかったのだ!!
全曲名作の塊、タカツキの関西弁リポーターも良いですね
フライングレコーズでの「詩人の刻印」リリース記念イベント
チケット予約してたのに、行けなかったのが悔やまれます
ホント、小林大吾といい、タカツキといい、なのるといい、
SSWSの面子は最高ですね

what's? | 2007.11.19 Mon 21:31
what's? 様

こんばんはです。
タカツキは間違っていなかったですね。
リリース記念イベント、私も行きたかったです。
「スイカ夜話」に期待です。生「アンジェリカ」が聴きたい!

タカツキといえば、次はインストアルバムらしいですね。
あと、Y.O.Gのブログをご覧になりました?
セミーも加わってサムライのレコーディングをしているみたいです。
楽しみです。

あ、そうそう知ってます?
新宿MARZで、11月23日(金)になのるなもないがライブするみたいです。
他のメンツが、メテオにデジ、ゾエ、ヤスリ、キッコーマンと微妙なんですが。
gogonyanta | 2007.11.20 Tue 00:00
どうも!
自分、まだこのアルバム聴きこんでないのですが
前回のアルバムでどうも小林大吾に対する苦手意識みたいなものが
ある様であまり聴こうという気になれません。
トラックは素敵なのですがどうもポエトリーリーディングというか
彼のフローが…

けれどgogonyataさんが書かれたようにラップとリーディングの違いが
分らなくなるほどのものならもう少し聞いてみようという気になりました。
KenKOBA | 2007.11.20 Tue 01:41
KenKOBA様

どうもです。
いつもありがとうございます。

> トラックは素敵なのですがどうもポエトリーリーディングというか 彼のフローが…
そうなりますと、微妙かもしれません。
フロウ自体は特に変化ないです。(M11の最後のヴァースだけ違いますが)
しかし、そこに詰め込まれている言葉の選択がすさまじく、
韻をかなり意識しているように思いましたね。

> ラップとリーディングの違い
多分おかしな原理主義者でもないので、ここまで言葉を意識した芸術を見せつけられると、
違いなんてどうでもいいなと思うんですよね。

「FLY N`SPIN RECORDS」のmyspaceで、3曲試聴できるようです。
それを聴かれてから、判断されてはいかがでしょうか。
gogonyanta | 2007.11.21 Wed 02:58
はじめまして、MCARDと申します、こんな情報量の多いブログがあったとはうかつでした!
小林大吾買いましたよ、前作よりもより一層音楽としての完成度が増したかんじっすよね。
たびたび遊びにきます、僕のブログも貼っておいたんでよかったら見てください!
MCARD | 2007.11.21 Wed 23:19
MCARD様

こんばんは。
はじめまして。とはいいましても、実はMCARDさんのブログは少し前から拝見しています。
KEMUIやHisomi-TNPをいち早く紹介されていましたので、注目していました。
更新も早いですよね。
特に驚きでしたのが高校生ということです。
文章も内容もしっかりしていて、すごいなと思いながら読んでいました。

> 小林大吾買いましたよ、前作よりもより一層音楽としての完成度が増したかんじっすよね。
ええ。そう思います。あそこまでいくラップなのかポエトリーなのか分からなくなるし、
その完成度の前にそんな違いなんてどうでもよくなったりもします。

一緒に買われたもう一枚も気になります。
これからもよろしくお願いします。
gogonyanta | 2007.11.22 Thu 02:01
見てくれてましたか、ありがとうございます!
いえいえ、拙い文章でして・・・更新頑張りたいと思うのでよろしくお願いします!
MCARD | 2007.11.22 Thu 15:56
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