すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
06 / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
<< 川端裕人『夏のロケット』 | main | トイミサイル『八月の雨模様』 >>
STERUSS『円鋭』

2008年1月30日リリースのサードアルバム。

昨年9月に見たライブで、crime6は制作中のアルバムについて、"29歳という年齢で歌える曲を精一杯書いている"と語っていた。水曜日に買ってきて、木曜金曜土曜とこのアルバムだけを聴き続けた。一向に飽きる気配がない。29歳の男の日常、育った町、育ててくれた街、仲間、大切な人、別れた人、音楽。ヒップホップは不良の音楽ではないし、道を外れなければできない音楽でもない。真っ当に生きて、働き、悩み、愛し愛されている毎日を綴っても大丈夫なのだと証明してみせた作品だ。傑作アルバム。2枚目もすごかったけれど、今作の充実度はその上をいく。本当にすばらしい。

M2「風見鶏のうた」の"気づいたんだ今日の前に昨日があり 音楽の前に常に誰かを思う そうやってできたライムだけは届く"、M7「回想列車」での"過去がなければ言えぬメッセージ 今があるから伝わる意味 出会いを通してつながる道"、M10「大時計のダンス」では"ある著名人の名言より利くサ上の涙の鉄拳"のフレーズ、M14「連なる夜」での"一人の女も愛せぬような人間が世界をどう愛すのさ"も、M15「ソラノウタ」の"怒りより今は笑いたい 戦争の色には染まりたくない"というつぶやき等々、吐き出す全てのリリックがパンチラインかと思えるぐらいに、クライム6の言葉には印象的なものが多かった。

けれど、今回のアルバムではBELAMA2の表現力に耳を奪われた。クライム6の具体的で的確かつ分かりやすい描写力は上でも抜き書きしたように思わず書き留めたくなるフレーズが多い。しかし彼がソロでラップしたM11「POET」で、澄み渡る青空をそのまま"美しさ"と表現してしまう。その素直さはラップ的には正しいのかもしれないが、「詩人」と題された曲にそれは少々残念で、彼の見た"美しさ"を聴き手も共感できる言葉に表してこそ詩だと思う。

ベラマツの良さはそこにある。歌詞カードを見てリリックの字面だけを眺めても少しも伝わってこないし、たいして面白くもないけれど、彼がやや鼻にかかった声で発すると、言葉たちが急に色づき始める。美や質感、色、光、温度、夜の闇が目の前に現れる。易々とビートに乗ってみたり、時に外して意味を強調してみたり、言葉を奔放に多角的にラップする。ふたりの持ち味が違うからこそいいコンビなのだろう。

全15曲。どの曲もすばらしいのだけど、ゲストを招いた2曲だけ。

M9「「尖」」はジャズ界から(でいいのかな?)、ベーシストの鈴木勲とピアニストのスガダイローが参加している。どのようにレコーディングしたのか分からないけれど、まるで1、2の3で、セッションしたかのような緊迫感がたまらない。特にクライム6が入る直前のピアノのフレージングが粋で、そこになだれ込むラップのアグレッシブさはすごくいい。

M6「ワンムー」はSUIKAのtotoさんが参加。"そうだね光が好きなんだね つまり 闇を見てしまったんだね"というラインには驚愕。詩人とラッパー。近いように見えて、異質なものなんだなと感じた。そんな深い洞察のすぐあとで、今度はお腹の子供に語りかけるかのような楽しい言葉が並に、ようやく息をつくことができる。いつかtotoさんのソロアルバムが聴いてみたい。

今回のアルバムでちょっと残念だったのは、前作の「兵隊はアンドロメダ」のような広がりのある1曲がなかったこと。どれも地に足をつけた骨太な楽曲が多くて、それはそれでいいのだけど、音楽へのむやみな愛を表明した、コズミック級の遊びのある曲を今回も聴きたかったかな。

あ、でもジャケットは最高。ここにコズミックがあったか。
2008.02.02 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
スポンサーサイト
2017.06.22 Thursday 23:59 | - | - | -
コメント
はじめまして。
感想読ませていただきました。
私自身、このアルバムに似た印象を持っていましたが文章にできる自信が無かったので、こんな的確な感想が書けるgogonyantaさんが凄いなぁと、そう思いました。ほんとこれ傑作ですよね。
これからも覗かせていただきます。

http://diskunion.net/portal/ct/news/article/0/2112
↑ここに「尖」のレコーディングの話とか載っていました。
gunjoh | 2008.02.04 Mon 04:29
gunjoh様

こんばんは。はじめまして。
お褒めの言葉、大変嬉しいです。ありがとうございます。

DJ CELORYとの対談ページもありがとうございます。今回のSTERUSSの3枚目って、SOUL SCREAMのサードアルバム『FUTURE IS NOW』と同じにおい、位置、傑作度に思うので、なかなか興味深かったですね。

> 「尖」のレコーディングの話
「「尖」」はDJ KAZZ-Kの頑張りがあったということですね。

これからもよろしくお願いします。
gogonyanta | 2008.02.06 Wed 00:06
こんばんは。

ステルスのnew albumそんなに良いのですね。gogoさんがそんなにベタ褒めするのも珍しいです。
1st持ってるけど、前作の白い三日月すらまだ聴いてないんですよね。飛び越えてコレ買おうかしら。
っても、タワレコ特典とかwenod特典とか色々ありそうですね…。たまに特典CD-Rの内容が良いのがあって、どこで買おうか困ります。

ベラマツといえば、昨年池袋BEDの3on3 MCバトルじゃボロ負けだったけど
ディスじゃない世界観を見せてくれて、自分的にはもろヒットでした。

男爵ディーノ | 2008.02.06 Wed 21:54
男爵ディーノ様

こんばんは。いつもありがとうございます。
『円鋭』はいいですよ。結構お勧めです。ファーストはあれですけど、セカンドの『白い三日月』もいいです。この2枚は買って損はないはず。ずっと聴き続けられるスルメアルバムだと思います。

> 特典
タワレコ、wenod、ディスクユニオンとそれぞれ違うらしいですね。私はタワレコで買ったので、未発表曲のデモ2曲が収録されたCD-Rでした。まだ聴いてないんですけど、そのうち追記で感想を書きたいと思います。

ではでは。
gogonyanta | 2008.02.07 Thu 00:42
コメントする











この記事のトラックバックURL
http://gogonyanta.jugem.jp/trackback/1784
トラックバック
Profile
Search This Site
Category
New Entries
Comment


Archives

今日も愚痴り中