すばらしくてNICE CHOICE

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Lion's ROCK『NO'17』

2008年2月23日リリースのファーストアルバム。

デューク・エリントンの曲に「スウィングしなけりゃ意味がない」というジャズの真髄をも語るタイトルがあるけれど、この奥義は他のジャンルにも当てはまると思う。atius/吹田2000の作り出したデビューアルバムはご機嫌にスウィングしまくりで、聴いているだけで笑みが浮かんでくる良作だ。

Lion's ROCKの名前を最初に知ったのが、約1年前の『月刊ラップ 2007年1月号』だった。今作にも収録されている「アンラッキーボウイ」のポップなフックにやられた。それと、吹田2000名義でのトラックにEI-ONEとはなび客演の「SLOWLIFE」もボトムの重いトラックで結構良かったのを覚えている。続く『月刊ラップ 2007年2月号』でもLion's ROCK名義で「BLUEBIRD」と、ダースレイダーの変名VICTOR ORTEGAの曲にatiusとJABが参加した「WALK BY」という2曲が収録されて、大阪出身としか情報がないLion's ROCKが猛烈に気になった。

標準以上の完成度になるのだろうなと予想はできていたものの、実際に聴いてみると新人離れした驚くほどの出来だった。ヒップホップは踊れてナンボというのはかねがね思っていることで、Lion's ROCKのラップはまさに踊れるラップだと思う。彼のリズムは人の体を動かす。トラックはジャズのサンプリングを主体にしているけれど、キリコが忌み嫌うようなジャズヒップホップとは異なる。オシャレないわゆるジャジー路線ではなく、ジャズがミシシッピー川の河口の街で生まれ、まだ理論や洗練なんて言葉が生まれる以前の騒がしく、陽気で、猥雑な音楽だったころのジャズの匂いがある。まさにスウィングだ。

ビートを軽く乗りこなし、押韻なんて意識しなくても簡単にやれちゃうよといわんばかりのラップとトラックメイカーとしての才能。その両方を兼ね備えているのが本当にすごいことだと思う。それと同時に、魅力的なフックを作ってしまうメロディセンスまであるのだから末恐ろしい。

"「揺らしてほしい」って芯てのがおかしい? 指でぼかした歌詞
 輪郭より深く ワクワク派 怖くないさ 洗い去った不安
 ピエロ重力gm 16+サンプリングで膨らむLove
 スクランブルPunk humorousbank 引っ張り出す
 ほら、爪先からリズム オレンジ、紫絡みつく
 混ざって夜が生まれ 結ぶ指はきつく ね?
 行き着く先 滴(しずく)んなり溜まる 血液が踊りたがる
 音に集(たか)るムシケラさ 似たようなものさ"

表題曲でもあるM3「NO'17」の最初のヴァースを抜き書きしたのだけど、難癖をつけるとすれば、リリックか。歌詞カードを見ながら聴けば、何となく意味は分かるけれど、ただラップを聴いているだけでは大意すら掴めない曲がある。韻を意識しすぎて抽象的になりすぎるきらいがあり、今のリズミカルなフロウでなおかつ詩を聴かせるラップになったら最高だと思う。"ほら、爪先からリズム オレンジ、紫絡みつく / 混ざって夜が生まれ 結ぶ指はきつく ね?"。この辺りはかなり詩的だし、頭にイメージが浮かびやすい。他の曲のリリックを読んでも詩人としての才能を感じるし、あとはどうそれを聴かせるかだけだと思うのだけど。

"大阪名物足の引っ張り合い"や"僕だって毎朝同じ悪魔に出会う南森町の交差点"とか、パンチラインは随所にあって楽しいけどね。

KEN THE 390のアルバムで大々的にフィーチャーされていたmattanが本作ではM10「キャラメルキャラメル」のトラックを提供している。もともとatiusの紹介でKEN THE 390はmattanを知ったらしいけれど、この人も才能のあるトラックメイカーだと思う。ギターの旋律が実にさわやかだ。


才能のあるアーティストをしっかりフックアップするダメレコの姿勢は結構好きだけど、DVDになった「月刊ラップ」が残念。以前のような音源のみのスタイルに戻らないものかしら。
2008.02.25 Monday 23:59 | 音楽 | comments(10) | trackbacks(0)
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2017.08.23 Wednesday 23:59 | - | - | -
コメント
僕んとこでも昨日レビューしたんすけど、これはやばかったですね。トラックもラップも洗練されててすばらしかったです。

リリック面に関しては、SEEDAとかでもそうなんですけど、意味なさげな言葉の中にふいに一行だけ深いラインがあるってかんじが個人的には好きなんですよね。

<才能のあるアーティストをしっかりフックアップするダメレコの姿勢は結構好きだけど

ってのはすげ〜同感です、神門→Lion's ROCKって来ると次が楽しみになってきます、呂布カルマあたりでしょうか。
MCARD | 2008.02.27 Wed 14:33
MCARD様

こんばんは。
予想以上に良かったですね。ラップもトラックも両方いいってなかなかいないですよね。トラックがスウィングしているから今のラップスタイルになったのか、フロウが先でそれに合うトラックを作ったら今の形になったのか知りたいです。いずれにせよしっかり融合していますよね。

> 意味なさげな言葉の中にふいに一行だけ深いラインがある
分かります。急に言葉が立ち現れるんですよね。その気持ちよさは分かります。ただ、COMPASSに掲載されているSTERUSSのインタビューでcrime6が「言葉をしっかり伝えること」について熱く語っていて、共感しながら読んでました。

> 呂布カルマ
書こうかなと思ったけれど、微妙にダメレコっぽくないなと思って書かなかったのです。神門、Lion's ROCKって仮にダメレコにいてもおかしくない感じですけど、呂布カルマはちょっと異色かなと。でも、呂布カルマはフルで聴きたいなぁ。あと、INHA。冬に出ると告知されていたファーストアルバムがが、夏に延びたみたいで残念です。

ではでは。
gogonyanta | 2008.02.28 Thu 01:10
予告どおりのレビューありがとうございます
nyantaさんも書かれているように
巷で流行のjazz hiphopとは一線を画す
素晴らしいアルバムですよね
誰も聞いたことがない新たな境地を追求する
こういう音楽こそが真のhiphopなんだと思います
前にも書きましたが、タカツキ似の声質は
軽快なjazzトラックとの愛称がとてもいいっすね
こんなに充実したアルバムが1000円で買える
undergroundのシーンはホント素晴らしいです

ところで、templeのhpでは、memorystormの新譜が予告され
春にはsuika、タカツキのアルバムも出るようで
この流れで、遂にあの2人もいよいよリリースしてくれるんじゃ
ないかと勝手に盛り上がってきております
what's? | 2008.02.28 Thu 05:14
what's? 様

こんばんは。
何か嬉しくなりますよね、新しい才能に出会うと。1月はステルス、2月はLion's ROCK、3月はなさそうだけど4月にはSUIKAにタカツキのセカンド改訂版。2008年は実り豊かな年になりそうですね。ホントあとは、あのふたりです。どうなんですかねぇ。シングルでもいいから出して欲しいですね。

あ、3月はTokyo No.1 Soul Setの新作が出るみたいです。微妙に期待です。
gogonyanta | 2008.02.29 Fri 01:23
ソウルセットすか…
何でしょう?iPodには
必ず入ってるし嫌いじゃないんですが一回聴くと
すぐ飽きちゃうんすよね
話は変わりますがnyantaさんはECDとかはどうなんですか?
僕は音楽どーのこーの以前に生き様が好きすぎて
楽曲を冷静に判断できないんですが新作も最高に楽しんじゃいました
what's? | 2008.02.29 Fri 04:10
what's? 様

まあ、青春といってしまってはあまりにくさいですが、「黄昏'95」とかってよく聴いてたんですよね。まあ、アルバム単位では確かにつらいのかなとは思います。さっきiTunesで新曲を試聴したら微妙な感じで結局買うのを止めましたし、まあ、微妙に期待ということで。多分レンタル待ちになると思いますが。

> ECD
聴いたことないですよ。すみません。あ、「マス対コア」や「ECDのロンリーガール」とかのメジャーどこは聴いたことありますが、アルバムを通してはないんですよね。iPodに『MASTER』が塩漬けになっているので、そのうち聴こうとは思っていたのですが。。。そういえば、YouTubeに昔のタワレコでのインストアライブの模様がアップされていました。「マス対コア」をやっていて、YOU THE ROCK★がめちゃくちゃかっこよかったです。
gogonyanta | 2008.03.01 Sat 00:45
ベクトルオメガはシンゴ02の変名ですね。
oninzzaj | 2008.03.12 Wed 01:54
oninzzaj様

こんばんは。

> ベクトルオメガはシンゴ02の変名
ええ、そうですね。「Vector Omega」はShing02のスタンドです。で、「VICTOR ORTEGA」はDARTHREIDERの変名だと思っていたのですが、検索してみたらそれについて言及されたことはないみたいで、ちょっと不安になってきました。でも声は完全にダースレイダーだからなぁ。
gogonyanta | 2008.03.13 Thu 00:39
こんばんは。
お久しぶりです。

VICTOR ORTEGAはダース氏の変名で間違いないですよ。あんな声の人、中々いないですもんね。

そういえば、Q-TIPの2ndですが、gogoさんが紹介しているWEB版が、リリースされているCDより曲数が多いんですね。なかなか買うのをためらっています…。
ステルスの新作は買いました。かなり聴き込んでますがgogoさんのレビュー読んだ後じゃ、書きにくくて、最近はウータンに逃げてます(笑)


男爵ディーノ | 2008.03.13 Thu 00:47
男爵ディーノ様

こんばんは。

> VICTOR ORTEGAはダース氏の変名で間違いないですよ。
まあ、そうですよね。あの声はなかなかいませんね。ラッパーはスキルはもちろん必要ですが、特徴のある声って本当に大事ですよね。

その点でいえば、ウータンはすごいですね。声の才能ありまくりのマイクリレーですからね。読んでますよ、ブログ。METHOD MANやODBのファーストは懐かしいです。Raekwonのファーストのレビューも楽しみにしています。あと、METHOD MANとREDMANのやつ。あれは今でも時々聴きます。あの熱量がたまらない。

男爵ディーノさんの、音に焦点を置いた書き方は私にはできないので毎回楽しみにしています。ステルスもぜひ。私はDJ Kazz-Kの頑張りには少しも触れないで書いた不届き者ですので。

> Q-TIPの2nd
ウェブで落とせば、Q-Tipさんには一銭も入りませんが、楽しめることは確実です。極上ってやつです。
gogonyanta | 2008.03.13 Thu 01:11
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