2006年4月21日リリースのセカンドアルバム。
2年前の音源ではあるけれど、初めて聴くグループが多数客演していて、その点では楽しめた。みんなそれなりにラップがうまいとは思うものの、個別の音源を手にしたいと思わせるほどの魅力を感じさせるアーティストが少ないのは残念。
良かったのは、M7「蓮の花」の神戸薔薇尻。ラップのスキルがどうのというより、まるで神門の裏サイドのような、泥臭く赤裸々なリリックにグッときた。繰り返し聴いていると、いつの間にか神戸薔薇尻の作り出すダークサイドに自分がいることに気づく。部屋の畳が湿気で変色してしまったかのように見えて思わず確認してしまったほど。
その闇から、救いの声をあげるように歌われるフック、"まるで泥から芽出す蓮の花"。危険だけど、危険だからこそ聴きたくなる言葉の数々。
他にはM5「韻守運転」も美味だった。ICE BAHNをまともに聴いたのは初めて。思ったよりもずっと良かった。押韻重視のスタイルは内容軽視という先入観があったのだけど、いやいやそんな思いは粉々に砕かれた。本来の押韻の意味を理解したラップ──リズムを得るためのライムで、ビートと絶妙に絡んでいるし、うまいもんだ。
M12「とらわれずこだわらずかたよらず」で客演しているAMIDAは、内容どうこうではなく、言葉を発するだけでそれがラップになってしまうイメージがある。たいていは意味が乏しく言葉遊びの多いリリックではあるのだけど。だけど聴いていると愉快だし、ラップだけのソロアルバムが聴きたい。
M3「DOYOUWANNAPLAY?」でのRHYMESTERは若手が多い中で善戦していた。
トラックメイカーのアルバムで音について書かないのは、片手落ち(差別語かな。そういえば神戸薔薇尻のリリックで、"びっこかたちんば"と出てきて、今時そんな言葉を使う人がいるのかと驚いた)なので。ビートが硬く、耳が痛くなる。ライブ映えしそうな重たいボトムと複雑に絡み合う硬質なビートは、最初のうちは楽しめるものの、それだけで16曲はさすがに飽きる。ラッパー名義のアルバムで1〜2曲提供されたトラックとしてなら楽しめるのかもしれないけれど。
好みの問題ではあるのだけど、ビートの構築を引き算的に作り上げ、その隙間にグルーヴを宿らした変則ビートは結構好きだが、DJ NAPEYが作るような音を足していけば映えるだろう的なトラックはださいと思ってしまう。
M9「自論」でASIAN SUCKが国を憂える内容のラップをしている。えてしてこの手のラップは自分たちで吐いているように、"はき違えた自己主張に自分に酔うタイプ"のラップで終わってしまうことが多い。だけど本来ラップは詰め込める言葉の多さから、鋭くメッセージを放つことのできる表現手段なわけで、風化を恐れずより具体的に描けば、面白くなると思うのだけど。
M15「別れ唄」で茂千代の歌を聴いていると、上司の下手くそなカラオケを聴いている気分になる。下手な歌声を笑い飛ばす余裕があればいいのだろうけれど、器が小さいせいか、このラップと歌声にはうまく笑うことができない。
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2003.01.25
1st AL『ILLFINGER』
2006.04.21
2nd AL『FIRST CALL』
2008.08.08
3rd AL『MONEY SHOT』
2010.01.20
4th AL『
NAP TRAP!』
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