すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
04 / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
<< GAGLE『HIDDEN MUSIC VALUE』 | main | ZEEBRA『The Anthology』 >>
レイト『明日など来るな』

2008年10月18日リリースのファーストアルバム。

1ヶ月ほど前のタワレコニュースに、"ヒップホップ版「ヒミズ」!? 日本の〈今〉を切り裂く異形の天才児、レイトがデビュー"という文字が躍ったときから、ちょっと楽しみにしていた1枚。だってMC名の由来がトイレを逆さに読むことによるってあまりに香ばしすぎるだろう。タイトルも"明日など来るな"と全力で後ろ向きなうえに、ジャケットの幸薄げな顔。たまらない。

リリックはまさに『ヒミズ』的であり、稲中以降の古屋実の主人公たちのごとくどこにでもいそうな少年の不幸物語で埋め尽くされている。カツアゲにあい、パシリにされ、こそ泥の隣人がいたり、隣の席の美少女は授業中にこっそり鼻くそをほじり、死ぬ瞬間に好きだった"君"を思い出し、あるいは実の父親に殺された息子の視点で綴ってみたりと、期待以上の内容だ。

不幸自慢の形をとった武勇伝ではなく、この手の世相を切り取ったラップというのはほとんどないわけで面白い試みではある。ただそんな曲が13曲も続くといい加減食傷気味にもなる。具体的な人名──タケシだったり敦君やら浩史だったり──を始め、降りかかる不幸がよりはっきりしているのはとてもヒップホップ的なのかもしれないが、M4「海の底」のようなやや詩情溢れるリリックがもう少しあっても面白かった。

また、辛いと感じる現実描写とそれへの感情の発露があまりに安直で、分かりやすいといえば確かにその通りではあるけれど、聴き手を曲の世界に引き込むほどのインパクトにかけることも事実だ。例えばShing02の「少年ナイフ」は最後のラインで鳥肌が立つほどの恐怖を覚えるわけで、そういったこちらに食い込んでくる迫力がもっと欲しかった。そういう意味では、母親に稼がせ、長期間失職中の父親についてラップしたM2「言いづらいこと」での"父さんはいつも威張っているけど、甘えてる、自分の弱さにも強さにも。僕は父さんが本当は誰よりも強いって知ってるよ"のところは良かった。

でもまあどれもこれも似たり寄ったりの凡百ラッパーよりはずっと面白いリリックではある。なのにこの盤を大絶賛できないのは、ラップの技術とトラックメイクにある。ラップがあまりにお粗末なうえ、トラックがへぼすぎる。ラップについていえば、先に挙げた「少年ナイフ」のShing02のような声質で延々やられるわけで、しかもところどころで破綻しかかるフロウがさらに減点を誘う。15分のライブでも息切れしそう。全て本人が制作したトラックはフリーの音楽ソフトで作ったのかと思うような安っぽさにげんなり。

やっていることは面白いだけに、ラップとトラックについては残念。まあそれでも聴かせてしまうというのだからリリックの勝利だろう。
2008.10.27 Monday 23:59 | 音楽 | comments(7) | trackbacks(0)
スポンサーサイト
2017.04.19 Wednesday 23:59 | - | - | -
コメント
こんばんわ、大変ご無沙汰してます、MCARDです!!


僕が行ってるタワレコでは「日本のエミネム」で、ならばと試聴してみたらエミネムには程遠いスキルで結局買わなかったです。笑
本人がつけたわけじゃないと思うし変なキャッチフレーズでハードル上げられるのはかわいそうですよね。



それにしても今年は日本語ラップは豊作でしたね、僕も年末のまとめに向けてベスト10に入りそうなアルバム(MICHITAとかMEDULLAとか)の記事を書くべく更新頻度上げたいと思います。 今年はまだでてないのでもAMIDA、SUBURBAN、HAIIROとかあるんでもっと面白いことになりそうですね。

何年も毎日のように更新(しかも長くて質が高いやつ)を続けられるGOGONYANTAさんは本当にすごいですね、ZEEBRAのベストの記事はなんとなく荒れそうですがf^_^;
MCARD | 2008.10.29 Wed 23:54
MCARD様

こんばんは。
お久しぶりですね!
Mihimaru GTの『mihimarise』を最後にしばらく更新されていなかったので、学生生活に忙しいのだろうなぁ、いいことだなぁと思いながらも寂しく思っていました。でも"更新頻度を上げる"とのことで、辞めはしないのだとひと安心です。MCARDさんのアーティストへの誠実な文章は読んでいて気持ちがいいですし、何より読み応えがあります。そういったブログは日本語ラップについてはなかなかないですから。期待しています。

> 今年はまだでてないのでもAMIDA、SUBURBAN、HAIIRO
SUBURBANは知ってましたが、AMIDAとHAIIROも今年中に出るのですか。それは楽しみです。ホントに豊作ですね。そういえばINHAのアルバムはどうなったのだろう。。。

> ZEEBRAのベストの記事はなんとなく荒れそうですがf^_^;
1999年の曲までは聴けるのですが、それ以降はどうも肌に合わないんですよね。こればかりはしょうがないです。

ではでは。
gogonyanta | 2008.10.30 Thu 00:47
はじめまして
以前からたびたび読ませていただいてます

トラックがへぼいというご指摘には同感ですが、このへぼさはヒップホップという枠の中ではアリかなと
昨今洗練されたトラックメイカーが多いのはけっこうなことで、実際そういう人たちをよく聴きますが、こういうのを聴くと「そういやヒップホップってこんなんだったな」と思わされます
ただし、へぼさの中になにか光るものが感じられないのは、彼の今後を考えると確かに減点対象ではありますね
リリックの内容に重きを置きすぎ、そういった点こそが、トラックの安っぽさのみならず、フロウの危うさや一本調子にもつながっているのかもしれません
カモン | 2008.10.30 Thu 12:48
どうもです。

聴かれたんですね!
ボクは個人的にかなり好きなんですよ!

ぶっちゃけあんまりラップがうまいとか下手とかよく分からないんですよね。
でもレイトの声は好きです!ちょっとかわいい。

トラックってへぼいんですかね?ボクはこーゆー音、結構好みなんですが・・・。
ヤスリのトラックも好きなんですけど、聴く耳持ってなさそーで自信喪失気味です。


カイゲンのアルバム。かなりかっこいいっぽいです。
もし良かったら聴いてみてください!
ピクニック | 2008.10.31 Fri 20:53
カモン様

こんばんは。
はじめまして。ありがとうございます。

> このへぼさはヒップホップという枠の中ではアリかなと
何でもありがヒップホップだと思っているので、おっしゃるとおり枠の中だとは思うのですが、本文にも書いたようにフリーソフトの音でそのまま作ってしまったような安易さ(それこそ"へぼさの中になにか光るもの"がないわけですね)が感じられて私は好きになれないんです。

> 昨今洗練されたトラックメイカー
カモンさんのおっしゃる"洗練"がどの程度を指すのか分からないのですが、ネタ感を大事にしつつ、泥臭い音を出すトラックメイカーは少なくなったと思います。シンセできらびやかに作ればいいってものでもないし、もっとグルーヴをと思うことも多々あります。

レイトはリリックに個性があるだけにちょっともったいないですね。



ピクニック様

こんばんは。
いつもありがとうです。

聴きました!
結構人気ですよね。発売1週間後に行った新宿タワレコでは売り切れてましたし、翌日に行った渋谷タワレコでは4枚だけ残っていたので私が1枚取って、しばらく辺りをウロウロして戻ってきたらもうなくなっていました。

ラップにしろトラックにしろ好みはそれぞれで、私が勝手に自分の基準で下手とかへぼいとか吐き捨てているだけです。あまり気にしないでください。自分が良いと思った音が本当にいい音だと思います。

> カイゲン
知らない名前だったので、タワレコで検索したのですが、『Curse Ov The Kaigen』というアルバムですか。各曲タイトルがすごいことになってますね。
gogonyanta | 2008.11.01 Sat 02:44
レイトのトラックは聴いてるとすごく気持ち良いです。
韻踏みはあまりしていないけど、歌詞の言葉が1つ1つ深くていろんなHIPHOP聴いてる中でもレイトの世界に引き込まれました。
13曲すべて飽きずに聴けます。
個人的にはsing02より売れてもおかしくないんじゃないかと思いました。
19 | 2009.05.15 Fri 02:40
19様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

レイトはライブも結構いいですよ。地元(金沢)で活動していることが多いようですけど。お薦めです。
gogonyanta | 2009.05.16 Sat 01:55
コメントする











この記事のトラックバックURL
http://gogonyanta.jugem.jp/trackback/2372
トラックバック
Profile
Search This Site
Category
New Entries
Comment


Archives

今日も愚痴り中