すばらしくてNICE CHOICE

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haiiro de rossi『True Blues』

2008年11月21日リリースのファーストアルバム。

発売日の翌日に手にして、それからずっと聴いている。最近は洋楽ヒップホップをよく聴いているせいか、スムースなライミングで紡がれる言葉を意味ではなく音として聴いていた。繰り返すうちにリリックも何となく頭に入ってきた。だいたいこんなことをラップしてるんだなぁといった程度ではあるけれど。

歌詞カードに書かれた"「風の中を歩く」と称される流麗なフロー"という紹介文に言い得て妙と感じた。語彙が豊富な上、言葉数の多いリリックを言葉遊びを絡め流暢にラップしていくスタイルは、リズム感の良さも相まって耳に心地良い。

大半のトラックはジャジートラックであり、中にはこれってただのジャズではというものもあるが、どれも洒脱だ。シングルとしても切られたOlive OilプロデュースのM6「Blueberry Or Apricot」は音の積み重ね方がユニークで、ラップともども気に入った。同じく先行シングルに収録されていたM13「Rachel」ではMichitaとの相性の良さを見せつけ、HIMUKIトラックのM14「Morning Stardust」、PrismaによるM8「Jam & Butter」辺りも楽しんで聴けた。


今回、記事を書くために歌詞カードを初めて見て驚いた。アルバムの印象が大きく変わってしまうほどだった。

日本語で書かれたリリックを読んでも何をいいたいのか分からないのだ。頭が悪いからと思いじっくり読んでもすんなり入ってこない。大江健三郎の小説を読んでいるのかと思った(投げ捨てたことがある)。

それまでは耳をなでる音として楽しんでいた言葉を、意味のある連なりとして捉えた途端、突然破綻をきたした。もちろん、意味を持たずに右から左へ抜けていく音楽があってもいいと思うし、haiiro de rossiの目指すラップがそれであるならばかなりの完成度だ。しかし、表現されている言葉の意味を味わってこそ日本語ラップの楽しみ方だと思っている人間には違和感を覚えた。歌詞カードに書かれた文字もまた"風の中を歩いてい"たのだ。

もちろん、記憶に残るラインはある。例えば、M11「Like Stanley Turrentine」での"Loveは女性の方が意味を知っているが 男でいる上で重要な物は Blues Feelingがまず思い浮かぶぜ"や、M14のフック、"もしもピアノが弾けたならば〜"といった印象的なフレーズは確かにある。

ただ皮肉なことにたった1曲だけで参加したあるま──ハイイロの方がラップはうまい──が放つ、"鑑別所 同じ匂い"の方が耳にずっと残るのだ。

これはどういうことだろうと思っていたところに、ダースレイダーの日記を読んだら、興味深いことが書かれていた。12月2日の記事を簡単にまとめる。

Jay-Zの『Blue Print』を聴いていたところ、パンチラインの多さに思わずブログをメモ代わりにしてしまったほどで、次にOCの『SMOKES AND MIRRORS』を聴いたらあまり引っかかるものがなかった。OCのラップ自体はとてもうまいが、ラップの内容が面白くないのが原因ではと分析し、続けて変則リズムや3連ライム、小節を単語がまたぐフロウといったスキルを駆使し聞こえはいいけれど、ライムが入ってこない。一方で、Jay-Zはライムの構成が分かりやすく、ラップのテンション自体も普段話すときとあまり変わらないからでは、というラッパーならではの視点で書いていた。

レベルは違えど、ハイイロのこの作品にも同じことがいえるのかもしれない。ともかく、しっかりリリックは聴き取れているにもかかわらず、頭の中で意味のある文章にならない。響くものがない。喫茶店のBGMとしては最適かもしれないが、言葉・センテンスの意味でもって表現しようとする音楽を求める身としては少し違うと感じた。

M12「Be #ness」では、ダウンロードして手にする音楽ファイルや不正コピーファイルについて、"歌詞カード無しで知った口"をきくなとラップされる。それはある意味で正論だが、しかし本作自体は歌詞カードがあってもなくても同じだ。

大量に動員をかけられた言葉たちは、互いにリズムとしては繋がり意味を持つが、日本語としてはほとんど意味を持たない。非常にかわいそうな消費のされ方をしている。


最後。どうでもいいことだけど、"小春日和"は初冬のいかにも小春らしい穏やかで暖かい日和(大辞泉)のことをいうのであって、"芽吹く小春日和"という使われ方はどうなのだろう。まあでも冬に芽吹く植物(レンギョウとか)はあるので、大きく間違っているわけではないけれど。


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2008.05.23 1st SG『blue berry or apricot ep』
2008.11.21 1st AL『True Blues』
2008.11.26 【Michita×haiiro】ALSoul SESSION
2009.12.02 2nd SG『True Blues / Blues Of Blue. Ep』
2010.06.16 2nd ALsame same but different
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2008.12.01 Monday 23:59 | 音楽 | comments(6) | trackbacks(0)
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2017.04.19 Wednesday 23:59 | - | - | -
コメント
この作品、大好きで何度も聴いてるんですよ。
友人たちとも「haiiroの○○って曲、いいよね」なんて話をするのですが、
その曲のこれといったラインが単語単位でしか出てこないんです。
丁度そのことについて疑問を抱いていたので、このブログで少し納得できました。
DAM-T | 2008.12.03 Wed 22:27
ラップが上手い下手って何が基準なんでしょうか?あるまの方が上手いとおもいますが
kiko | 2008.12.03 Wed 23:20
DAM-T様

こんばんは。
先日はありがとうございました。暇ができれば、追記の形で未発表の2曲も書いてみようと思います。まだ聴いてないんですけど。

> この作品、大好きで何度も聴いてるんですよ。
同じですね。私もずっと聴いてて、しかも飽きがこないんですよね。男前の声が耳に心地良く、いい作品です。ただ、耳当たりの良さとリリックの内容って両立できると思うので、そこだけが残念です。でも、ファーストアルバムでこの完成度というのは将来有望ですよね。



kiko様

こんばんは。

> ラップが上手い下手って何が基準なんでしょうか?
なんなんでしょうね。あるまはこの客演曲ぐらいしか知らないですけど、私の感覚、つまり基準ではhaiiro de rossiの方が一枚上ですね。

> あるまの方が上手いとおもいますが
人それぞれの基準があっていいと思いますよ。正解があるわけでもないし、100人いれば100通りのツボがあるわけですから。
gogonyanta | 2008.12.04 Thu 00:47
初めまして。
Haiiroは最近出た雑誌(確か≪remix≫)のインタビューで、ラップなどについてなかなか面白い事が書いてありました。
チラッと立ち読みしただけなのであまりはっきりした内容は言えませんが、彼のリリックが何故こういったものなのか解りますよ。
色日和 | 2008.12.05 Fri 19:13
お久しぶりですかね。ハヤトです。

このアルバムは自分的には、michitaの"Two"の延長線上で聴いています。

どちらも、今、アンダーグラウンドで活動していて、しかし、全国流通に乗せることは難しいMCをフックアップしてるのがいいなと。

HIPHOPのいい所って、魑魅魍魎なところでないかと個人的には思っていて、技術的にどうこうというのとは別に、様々な個性、スタイルがあって、自分がHIPHOPを聴いたばかりの頃なんて特に、客演の一人一人にワクワクしてました(笑)
でも、最近、SEEDAの活躍でストリート系のアングラMCに光が当たる一方で、ホントにそういったスタイルのMCばかり現われて、聴く側からすると刺激が逆に無くなってきたというか。
そんなときに、michitaやeccyが決して主流では無いけども、また色んな人を紹介してくれて嬉しいです。

まぁ荒削りな人も多いですけども(笑)

このアルバムではキリコのリリパの記事でも触れられていた、コカツ・テスタロッサが好きです。自分はらっぷびとが好きで、彼の別名義作品で客演していたので知ってたんですが、降神を更に崩したようなフロウで声質もあって、上手いとは思わないけどインパクトありますね。あと、72もやはり良かったです。

そう上手くはいかないとは思いますが、それこそ、オロカモノポテチやあるぱちかぶと、72やmeisoなど、新しくて面白い人達がアルバムをちゃんと全国流通で出せるようになれば、日本語ラップ村にも刺激が生まれるのではないかと勝手に思っています。

てか長文ですね。迷惑でしたらすいません。
ハヤト | 2008.12.06 Sat 00:07
色日和様

こんにちは。はじめまして。
早速読んでみようと思います。
情報ありがとうございました。



ハヤト様

こんにちは。
お久しぶりです。

> michitaやeccyが決して主流では無いけども、また色んな人を紹介してくれて嬉しいです。
そうですよね。ふたりのアルバムで初めて聴いたラッパーが何人もいますもんね。そういえば、来年にはmichitaは『Three』を出すみたいですね。タワレコだったかHMVだったかにクレジットされていました。インストではなく、また客演集だと嬉しいのですが。

> らっぷびと
彼はメジャー(EMI)から2月にシングルデビューするようですね。彼については以前に書いたような感想しかもたないのですが、メジャーレーベルがラップにお金を使うようになるのはいいことだなと思います。Souljaや童子-Tの努力のおかげなのかもしれません。

> オロカモノポテチやあるぱちかぶと、72やmeisoなど、新しくて面白い人達がアルバムをちゃんと
> 全国流通で出せるようになれば、日本語ラップ村にも刺激が生まれるのではないかと
ええ、ええ。ホントそう思います。まずあるぱちかぶとのアルバムが聴きたいです! ライブで聴いた曲はどれも良かったです。まさにポエトリーウェポン。期待です。meisoもいいですねぇ。ミニアルバムと客演だけでは蛇の生殺し状態です。いい加減にして欲しいラッパーのひとりです。72はまだまだ分かりませんが、ライブがすごい迫力らしいです。あとはINHAと呂布カルマですよ。

色々挙げていくと結構日本語ラップ村も人材がいて、明るそうです。


長文は大歓迎です。これからも遠慮なく書き込んでください。
ではでは。
gogonyanta | 2008.12.06 Sat 14:55
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