すばらしくてNICE CHOICE

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藤谷治『洗面器の音楽』

読了。
☆☆☆/5点中

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かつてやけくそで書いたティーン向けの小説でヒットを飛ばしたものの、その後は振るわず古書店のオヤジとなった"私"に、以前から目をかけてくれていた編集者・小山田がやって来て、もう一度書いてはどうかと誘ってくれた。娼婦を主人公にしようと考え、デリヘル嬢の麻里を紹介してもらう。やがて"私"は麻里にはまってしまい、密会を重ねるのだが、いつも会っていたラブホテルで身元不明の女性が殺されたとのニュースが飛び込んできて・・・。
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藤谷治という作家は毎回新しい試みをしてくるので実に楽しい。今回はいってみれば『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の森の中で見つかった撮影テープであり、『クローバーフィールド』の軍が回収した極秘テープである。ただし、書き手の作家は生きているけれど。ある作家に起きた事件をいくつかの謎を配置し、ドキュメンタリー風に書くことで読者を幻惑する。

今回は文字の詰まった字面にもかかわらず、読みやすさと内容のいい意味での軽さは相変わらずだ。本作で10作目に当たるらしいが、そろそろ心にずっしりとくる作品も読んでみたいなとは思う。それともまだ読んでいない中にあるのか。

本書を読んで学んだことは、題名の由来にもなっている金子光晴の「洗面器」という詩のすばらしさと、デリヘル・ホテトルの差異だった。


洗面器
                                             金子光晴

(僕は長年のあひだ、洗面器といふうつはは、僕たちが顔や手を洗ふのに湯、水を入れるものとばかり思つてゐた、ところが、爪哇(ジヤワ)人たちは、それに羊(カンビン)や、魚(イカン)や、鶏や果実などを煮込んだカレー汁をなみなみとたたへて、花咲く合歓木(ねむ)の木蔭でお客を待つてゐるし、その同じ洗面器にまたがつて広東(カントン)の女たちは、嫖客(へうかく)の目の前で不浄をきよめ、しやぼりしやぼりとさびしい音を立てて尿(いばり)をする。)


洗面器のなかの
さびしい音よ。

くれてゆく岬(タンジヨン)の
雨の碇泊(とまり)。

ゆれて、
傾いて、
疲れたこころに
いつまでもはなれぬひびきよ。

人の生のつづくかぎり
耳よ。おぬしは聴くべし。

洗面器のなかの
音のさびしさを。


『女たちへのエレジー』所収(昭和24)
2009.01.08 Thursday 23:59 | | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
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