COMA-CHI『RED NAKED』

2009年2月4日リリースのセカンドアルバム。
一昨年、昨年と活発化していた客演でのラップを聴き、かなり不安を覚えながら手に取ったのだが、日本語ラップ村が歓迎できるギリギリのところで立ち止まったという印象を抱くアルバムだ。
打ち込みトラックが多くなったことも大きな変化だが、ストリングスにピアノメインのトラックにフックをその辺のR&B風歌手よりも上手に歌ってしまうM9「perfect angel」や、それよりも少し明るめの曲調のM10「beautiful day」といった明らかにチャートを意識した曲が増えたことは否めない。
また以前にあった日本語ラップの古き良き流れを汲んだフロウが損なわれ始め、ラップが下手になった印象を受けるのも事実。それと、女性でラッパーをしているという分かりやすい個性がやけに強調されているのもメジャーという土俵で戦うためにはしょうがないのだろうか。ファーストアルバムやJUNK BEAT TOKYOでは、女性ラッパーだからということとは関係なく、一ラッパーとして気持ちの良いラップをしていただけに少し残念に思う。
ただ、彼女がメジャーに行っても戦っているなと思えるのは、例えば4つ打ちを取り入れ、マドンナを意識した曲を歌っても、あるいは過剰に甘ったるくバラードを歌い上げても、必ず1ヴァースはラップしていて、そこにラッパーとしての矜持が感じられる。だからこそ、より広い世界でさらなる飛躍をして欲しいと応援したくなる。
ボーナストラック的な扱いで収められている「B-GIRLイズム」は完全な蛇足だ。カバーというよりも替え歌で、オリジナルを歌ったRHYMESTERがどれほどすばらしいパフォーマンスをしたのかということだけが明らかになる。ここでの彼女のラップには華がない。こういう遊びはシングルのカップリングで十分。
メジャーから作品を出すということは、芸術作品を制作することには変わりないにしても、より商品としての側面も強まるはずで、外野からの様々な声があったと思う。その声を取り入れたとおぼしきド派手な曲調もあるにはあるが、最初にも書いたけれど、ギリギリで日本語ラップ村の出であることを確認できる作品にもなっていて、メジャーに行ったからといって安易に売れ線に走らずとも作品をリリースできるというひとつのモデルになった。