2008年6月11日リリースのセカンドアルバム。
前作『
THE BEGINNING』は世間的には高評価だったらしいが、私の中ではたいして楽しめない作品だった。だからこの2枚目もしばらく手を出さずにいたのだけど、こちらも意外なほど評価が高く、それならということで聴いてみた。
去年の「
スイカ夜話 第13夜」のゲストで出ていたので、何曲かは聴いていたのだが、KREVAが客演したり、CHEIF ROKKAがいたりといった思わぬ驚きがあった。
彼らなりの"黒さ"を追求しすぎて、やや閉じた音になっていた
前作から、外仕事も増えたためかALI-KICKのトラックには広がりが生まれていて、非常に聴きやすくなっている。その多彩な音の世界の中に、ところどころでDJ TOKNOWのタイトな音が混じるのでアルバムとしてのバランスも良くなった。
ラップにしても、アリキックはまあ以前からうまかったので、今回も自由度の高いライミングやフロウに耳を奪われたが、他のふたりも悪くなかった。エムラスタはがむしゃらに"黒さ"を追い求めるのではなく足し引きを覚えたラップに好感が持てたし、何より将絢のラップには、慣れもあるのか、Michitaの
アルバムを先に聴いていて好印象も先行したためか、以前のお荷物感が薄れた。フックを歌わせたり、渋めの語り口調だったりと工夫を凝らしたのも成功の要因だろう。
ストーリーテリング調のM7「ロマンティック is Dead」から、Scoobie Doのボーカル・コヤマシュウを招いてのM8「ロマンより愛をこめて」へ、という流れはかっこよい。M8のコヤマシュウと将絢による最後のヴァースは男前だ。
音楽への愛が素直に表現され、色恋沙汰も描けるし、エロ度の高い曲("深海魚"って何?)も、温もりのある曲も、幅広いテーマでラップができている。"チャートトップ10がこんな音で満たされ"たらどんなに良くなるかとも思う。黒い音楽をうまく翻訳できてもいる。
リリックにしろ音にしろ、好みの音楽なはずなのに、今回もはまりきらなかったのはどういうわけなのかかなり聴き込んだけれど分からなかった。何だかしっくりいかない。巧さも熱さもクールさも揃っているのに、その上頑固な一面も持ち合わせていて、最高なはずなのに、心の深いところまでは下りてこない。相性の問題なのか。
ところで、
前作と今作は早くも廃盤になったようだ。彼らのブログ(2008年12月25日付)では、"俺たちの力不足も含め どうにもならない事情も多々あったので"、と短いコメントのみで詳しい理由は分からないが、非常にもったいないと思う。彼らが所属するLOCKSTOCKのホームページでは、"在庫わずか"ながらもまだ買えるようだ。