2009年2月25日リリースのセカンドアルバム。
Def Jam Japanをレペゼンする唯一のラッパーSoulJaの2枚目。よそ者を受け入れることをよしとせず、狭い井戸の中でヒップホップとはこうあるべきだという原理主義に寄りかかり、蛙であることに安穏としている日本語ラップ村には受けが悪そうなラッパーではあるが、今作は想像以上に違和感なく楽しめた作品だった。ファーストアルバム『
Spirits』よりもポップに寄り添い、振れ幅が少なくなったことで聴きやすさが増したのだと思う。
フックの歌メロのほとんどが彼の手によるものならば、彼はラッパーよりもコンポーザーとしての才能の方がずっとあるように思う。基本のテーマは恋愛で、歌ものフックにヴァースで彼のお得意のウィスパーラップが乗っかる。ライブでは恐らく散々な結果になりそうなラップだが、ヘッドフォンで聴く分には邪魔にならない。
前作にも参加していた高橋幸宏によるM8「花、ゆらり」と、同じYMOから細野晴臣が参加したM10「Road Movie」が良かった。この2曲のように日本語のみでラップできるなら、英語を交ぜた変なちゃんぽんのリリック(例、"I felt dis刺激 That made meドキドキ / So now I 話に来た But")はやめればいいのに。どちらも和の雰囲気を出しつつ、ラップとトラックとの調和が自然で、特にシンプルなピアノの旋律が印象的なM10はいい曲だと思う。
話題にもなった松任谷由実が参加した2曲──M5「記念日」とM9「home」はユーミンに歌わせただけでもすごいと思うけど、彼女の「ANNIVERSARY」をサンプリングしたM5で、新たなパートを付け加え、吹き直させたのはやはり伝手のなせる技なのだろう(プロデュースの川添象郎はユーミンのかつてのプロデューサー)。ただ、M5よりはM9の方がユーミン色が薄れる分楽しめた。
SLY & ROBBIEが「そばにいるね」をカバーしたM4「HURRY HOME (そばにいるね)」は歌パートもラップパートも英詩になったため、メロディの良さが際立ち、レゲエのゆるいリズムと相まってオリジナルよりもいい。"ちゃんとメシ食ってるか?"がなくなっただけでも成功だ。
聴きやすい楽曲が並ぶ中に、どうして
前作の「DOGG POUND」のような曲を入れるのかは疑問。"見たことも無いようなスケールで飛ばす かます 首ゆらす ファストバースから騒がす 現場ジャック ワックな奴らケチらす"という強気な姿勢は滑稽でしかないし、アルバムにそぐわない。
彼が3枚目を出せるのかは分からないが、次はこの路線のまま客演にラッパーを招いた楽曲が聴いてみたい。Romancrewの将絢あたりはとても合いそう。