すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
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SR サイタマノラッパー

67点/100点満点中

ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2009のオフシアターコンペティション部門でグランプリ受賞。2009年公開作品。

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めぼしい店舗のない埼玉県北部のフクヤ市。ニート青年IKKUの夢はいつか世界的なラッパーになること。仲間のTOMやMIGHTYたちとヒップホップ・グループSHO-GUNGを結成しライブを実現しようと奮闘していたが・・・。
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大きな夢を抱く青年がいて、挫折があって、ちょっと気になる女の子が登場し、仲間とのいざこざもある。こんな定番要素だけではどこにでも転がっている青春ものでしかないので、少し変わったスパイスをと用意されたのが日本語ラップ。ラップは笑いの要素として機能──例えば、主人公がラップ調で話し出すと、そのおかしなイントネーションの日本語に、ヒロインから"宇宙人かよ"と蔑みの目で見られる──しているため、終始笑いの絶えない館内だった。

かなりの低予算で作られた映画だろうし、その苦労がしのばれる画面だったりするわけだけど、カメラワークの良さに救われていた。俳優陣のラップに関しては違和感を覚えなかったが、何気ないつぶやきのようなセリフに素人臭さを覚えた(あとから調べたら小劇団で活躍する舞台俳優さんたちだったよう)。

青春ものは好きだし、インディーズ色溢れる演出も割り切ればそれなりに楽しんで見られるわけだが、最後のぶつ切りは納得いかない。その後があってこそのカタルシスだと思う。定食屋での再会と熱い"会話"があって、再び音と向き合い、確固たる一歩を踏み出すところまで見たかった。予算の都合なのかなと思うと納得するところでもあるが。


映画作品として見れば、上のような感想を抱くわけだが、日頃日本語ラップを聴いている身にはラッパーの所作のひとつひとつが笑いでしかないのは悲しいといえば悲しい。自分の好きなものがかっこよいものと認識されていた方が単純に喜べるという他愛もない話だが、でも確かに、釣果をフリースタイルで話し出すのはお笑いでしかないし、馬鹿のひとつ覚えでオーバーサイズの服を着て、首に光るものを下げているのもどうかとは思う。自分も笑いながら見ていたわけだけど、ラッパーへの白い目──世間の視線がこれでもかと映し出されている作品だった。だからこそ、最後で輝く彼らの姿が見たかったという思いに繋がる。

クライマックスのフリースタイルで会話するシーンに熱くなった私は、どっぷり日本語ラップに浸かっているのだろう。彼らの一語一語に耳をそばだて、そのたぎる気持ちを汲み取り、あるいは消沈している心に想いを馳せていた。普段、ポップミュージックしか聴かない人たちがあのシーンを見たらどう思うのだろう。やはり役所の人たちの前でライブしたときと同じように、笑えて痛々しいパフォーマンスでしかないのだろうか。


ラストに不満はあるものの、かっこ悪くても真摯なフリースタイルを大事な場面に持ってくるところに、味付けとしてヒップホップを利用するのではなく、それなりの共感を持って撮られたのだなと思えた。

最後。伝説のトラックメイカーT.K.D先輩の遺作のトラックがなかなか秀逸なのに、少ししか流れないのはもったいない。I-DeAのような詩情溢れるループがとても良かったのだから、ラップを乗せたのを聴きたかった。
2009.04.01 Wednesday 23:59 | 映画 | comments(5) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
コメント
http://s05.tbsradio.jp/ad/utamaru/472790.mp3
最後に劇場で見たのはあたしンちなのですが
シネマハスラーの解説を聞いて胸が熱くなった僕はとても見てみたい映画です。

あとラップの特訓はどうですか、
熱いリリックをここに投稿してほしいです。
返事になってなくていいんで・・
2ばん | 2009.04.03 Fri 03:57
>最後のぶつ切りは納得いかない。その後があってこそのカタルシスだと思う。定食屋での再会と熱い"会話"があって、再び音と向き合い、確固たる一歩を踏み出すところまで見たかった。

“その後”ってのが要はあのエンディングテーマってことなんじゃないですか?はっきりと示されてるわけじゃないですけど、僕はそう解釈したんですが。

あとカメラワークは全編ワンシーンワンカットって結構有り得ないと思うんですけど。狙いの不明確な無駄な長回しというか、うーん、なんでそこをカット割ってUPで抜かないかなぁ?意味わからん!と終止イライラしてました。

映画の内容がダメラッパーがダメ野郎なりに頑張る話なんで、監督がダメでもまぁ、それはそれで多少は大目に見れるんですが、インディーとか抜きにして映画演出としてはかなり下手な部類だと思います。

話はグッと来ますけどね。
影月 | 2009.04.03 Fri 04:51
2ばん様

こんにちは。
いつもありがとうございます。

そのmp3ファイルって宇多丸のやつですよね。時間のあるときに聞いてみます。Twitterで、品川の『ドロップ』の回のが紹介されていて、結構面白く聞けましたので。ラジオですけど、あれはもう評論の域ですよね。

> ラップの特訓はどうですか、

Twitterで書いたやつですね。誰も突っ込んでくれず、少し寂しい思いをしていましたので、とても嬉しいです。あれはエイプリールフールってやつです。かまってくださり、ありがとうございます。



影月様

こんにちは。

> “その後”ってのが要はあのエンディングテーマってことなんじゃないですか?

TKD先輩に最初に貰ったトラックにラップを乗せた曲ですよね。まあ、活動を続けたという暗示なんでしょうけど、でもあんなエロビデオのクレジット(最近のは違うのかもしれませんが・・・)並に安っぽいエンディング画面にかぶせられても、興ざめですよ。もっとガツンと味わいたかったですね。

カメラワークについては、見終わるまで長回しが多用されていたことすら気づかなかった私が書くことではないのかもしれませんが、構図がホント良かったです。とても基本に忠実な安定した画角で、ココというところに据えられ、役者や景色をかっこよく切り抜いていました。不満は画質と、本文では書きませんでしたが、暗転の多さですね。

http://eigageijutsu.com/article/115330835.html

書き終えてから読んだネット上の批評です。かなり的確で参考になりました。本作で描かれる「成功」の形だとか、千夏の使い方、あと長回しについても述べられていますが、なるほど批評とはかくあるべきものなのだなと思った次第です。この人が書くような論理で"その後"を見たがったわけではありませんが、単純にエンタメとしては舌足らずだなと感じました。定食屋のシーンがいいだけにもったいないです。
gogonyanta | 2009.04.04 Sat 11:08
こんにちは。

管理人さん。
先日はどうも。
本当に見てくれてありがとうございます。
さすが管理人さんです!!

2ばんさん
わたしも、実はシネマハスラーを聞いて、その日に感動を覚え
そのまま仕事帰りに行ってしまった人間です。
そして、期待通りの"号泣メーン"、(とまではいきませんでしたがw)、
とても、感じるものがありました。

たしかに、管理人さんのおっしゃるとおり、あれれ?と思うようなところが
いくつもありましたが、最後の焼肉屋でのフリースタイルで熱くなれるという
ことが、この映画のすべてだと思います。

最後の終わり方も賛否両論、いろいろあるかと思いますが、私はあれでも
良かったと思います。
ただ、そこから始まるエンディング曲が、ちょっとポップすぎじゃね?
って感じで残念でした。
ライムのパパ | 2009.04.06 Mon 20:14
ライムのパパ様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

面白い作品を紹介していただきありがとうございました。最初は画質の粗さに驚きながら見ていましたが、最後のフリースタイルにはちょっと目頭を熱くさせちゃいました。

日本語ラップを聴かない人たちのブログを読んでみると、最後がフリースタイルだったにもかかわらず、結構好意的な感想を寄せている人たちが多く、日本語ラップもうまいことすればもっと根付くのではと希望を抱いてしまいました。神門あたりが突破口になったら面白いのですが。
gogonyanta | 2009.04.07 Tue 01:02
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