すばらしくてNICE CHOICE

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radio aktive projeqt『neworlder Mixtape』&MINT & Girlz N' Boyz『SUPER FREE』
2本の無料配信音源が今月頭に相次いでアップされた。ひとつは、K DUB SHINEとDJ OASISのユニットradio aktive projeqtによるもので、発売が1ヶ月後に迫ったファーストアルバムのための販促用ミックステープ。もうひとつが元韻踏合組合のMINT主導で作られたアルバムとなる。

ヒップホップの本場アメリカでは当たり前のように作られ、ファンを楽しませている方法だが、ようやく日本でも始まったことを嬉しく思うし、ベテランや中堅どころが始めたことを評価したい。無料音源ということで、受け手としてはただ喜びはしゃいでいればいいのかもしれないが、先行している米国の質を知っているだけに不満もある。


radio aktive projeqt『neworlder Mixtape』

2009年5月1日アップのフリーダウンロードミックステープ。

DJオアシスのブログ(http://ameblo.jp/djoasis/entry-10252774132.html)から入手できる。5月27日発売のファーストアルバムの販促のためのもので、DJ MASTERKEYが3部構成で繋いでいく。

前半は新譜からの6曲が短く紹介されていく。中盤ではCommonの「I Used to Love H.E.R.」やGang Starrの「Mass Appeal」といったクラシックから、50 Centの昨年のシングル「Get Up」まで様々な向こうの楽曲にふたりがラップを乗せる。曲名にそれぞれフリースタイルと銘打たれているが、とてもそんな感じはしない。Wu-Tang Clanの「It's Yourz」に乗せたM13ではL-VOKALが参加していて、短いヴァースながらもふたりに現役との格の違いを見せつける。

後半は、2人のソロアルバムやDJマスターキーの作品からふたりが共演している曲が取り上げられている。その5曲中3曲が本当なら童子-Tパートもあったわけで、3人の絆の固さをうかがい知ることができる。

一聴して非常に鬱陶しさを感じさせるのは、DJマスターキーによる"アルバムインストア、5.27"という判を押したような言葉の挿入だ。隙あらばスパンスパンとスタンプしていく。当然プロモーションのためなのだから、それも致し方ないのかなとは思うものの、昨年聴いたBlack Milkのフリーダウンロードアルバムを思い出すと、ずいぶんと違うものだなと思ってしまうのだ。

ブラックミルクのそれもまたアルバムの1ヶ月前に発表され、新譜からは3曲しか紹介されなかったが、最近のプロデュース仕事を繋いでいく形で結構なボリュームがある上に、ひとつの作品として楽しめた。翻って本作をいまいち楽しめない点は、ケーダブのラップスキル云々は置くとして、ただ販促のためというお金の匂いを嗅げてしまうからだ。ベテランなのだし、お金を払っても惜しくはないほどの完璧な作品として出して欲しい。

さて、来る5月27日にリリースされるデビューアルバムからの6曲は"ワックなラップ"を批判するか、警察や音楽業界に愚痴る内容のものである。既存の音源に乗せる中盤もほぼ同じ。"皆殺しだぜ着メロラッパー まずとりあえずあいつだろやっぱ 存在感ないCMスポット ヒップホップと違う別のJ-Pop"というラインでは、今は立派に大成したかつての仲間を指してるのだろうなと分かるものの、これだけ"ワックなMC"がどうのこうのと毒を吐きながら、何ら実名を出さない腰の引け具合はベテランの要領の良さの表れなのだろう。それとも今回はカットされたヴァースや曲に直接言及しているラインがあるのかな。

ケーダブのラップについては書く気も起こらないが、アカペラで聴いたらさぞや酷いだろうなと想像するだけである。"売られたケンカ しょうがなくまた買う"といった嘘や、"ビッグコッタ 知性の塊 ~ やたらに頭いいリリック おまけに心に響く 他が出せるかこのクオリティ"と相変わらずのセンスの良さが発揮されている。

一方、DJオアシスのラップが上達していて驚いた。DJオアシスといえば「マイク持つDJ」であり、あのラップは嘲笑の対象でしかなかったが、本作で聴けるフロウは言葉のビートへの乗せ方が懐かしの日本語ラップのそれであり、どちらかというとファーストアルバムの頃のZeebraに近い柔軟性がある。


1.ジュリーIntro
2.R.A.P.
3.そりゃぁないよ
4.超よくねぇ? feat. UZI
5.シ・ョ・ク・シ・ツ feat. JA飛龍
6.アルファベットと番号のみ
7.ウチの feat. JUN-GMC
8.Get Up freestyle / 50 Cent from SG 2008
9.Notorious freestyle / Notorious B.I.G. from『Born Again』1999
10.Mass Appeal freestyle / Gang Starr from『Hard to Earn』1994
11.Cross Over freestyle / EPMD「Crossover」from『Business Never Personal』1992
12.Fakin' the Funk freestyle / Main Source from SG 1992
13.Its Yourz freestyle / Wu-Tang Clan「It's Yourz」from『Wu-Tang Forever』1997
14.Ego Trippin freestyle / De La Soul「Ego Trippin'(Part Two)」
                                 from『Buhloone Mindstate』1994
15.I Used to Love H.E.R. freestyle / Common from『Resurrection』1994
16.Pop Gose the Weasel freestyle / 3rd Base「Pop Goes the Weasel」
                                 from『Derelicts of Dialect』1991
17.これ / OASIS『ウォーターワールド』2005
18.デイアフタートゥモロー / DJ MASTERKEY『DADDY'S HOUSE VOL.3』2005
19.ほんとあの頃が / K DUB SHINE『理由』2004
20.だからどこでも / 『ウォーターワールド』
21.アトミックボム / 『ウォーターワールド』



MINT & Girlz N' Boyz『SUPER FREE』

2009年5月3日アップのフリーダウンロードアルバム。

MINTのブログ(http://minchan.blog22.fc2.com/blog-entry-329.html)から落とせる。

ミンちゃんのラップは韻踏合組合でのラップしか知らず、ソロ作品を聴いたことがないので比較しようがないのだが、今作での彼は自由にいいたいことを好きなようにラップしていて楽しそうだ。ただ、YamaneやROM君といったラッパーのソロ曲も含まれているために、ややとっちらかった印象は否めず、無料で聴ける以上の価値を見出すのはなかなか難しいところではある。

良くも悪くもミンちゃんだけが際立っていて、彼が参加した曲とそうではない曲との完成度の差が激しい。ミンちゃんのラップはスキルがどうのではなく、言葉が勝手に耳に飛び込んで来て出ていくことをしない。"今のシーンとか全然見えへん進歩が"とか、"似た者同士で群れたがるのはどうして"だとか。

強烈なのはやはり、Lil'諭吉の別名Cherry Brownと組んだM13「おまんちょ」だろう。"ギャルの(おまんちょ) 現役の(おまんちょ) 私立の(おまんちょ) 公立の(おまんちょ)"と続いていく。そこにどんな差異があるのか分からないのだが、その年齢がストライクゾーンの彼にとっては大きな違いがあるのだろう。まあ、そこは突っ込むところではない。ここぞとばかりに連呼される言葉にリビドーの暴走を見ることができる、インディーズならではの曲ということだ。


1.Intro
2.Count Up / Yamane, MINT & ROM君 (produced by 2 Much for BTP)
3.CATHLEEN / Yamane (produced by NEW SWOL PRODUCTION)
4.ミンちゃんのシッポ / Yamane (produced by Vector)
5.翼を下さい (interlude)
6.SUPER FREE / MINT (produced by Vector)
7.YES/NO / FASHION HELLZ(Vector+MINT) (produced by Vector)
8.毎日イェイ (interlude)
9.なにめあて / ROM君
10.noninonino / Yamane feat. MINT (produced by Swollen Drumz)
11.ヤッター!! 08/12.18の気持ち / ROM君
12.なんもない / MINT, ROM君, Cherry Brown & Yamane
13.おまんちょ / MINT & Cherry Brown (produced by Lil'諭吉)
14.Muji Tee (Remix) / Cherry Brown feat. MINT (produced by Lil'諭吉)
15.K1nd A L0n3ly Freestyle / MINT (produced by Lil'諭吉)
16.Outro



米国ではフリーダウンロード形式で様々な音源が発表されている。今をときめく白人ラッパーAsher Rothにしても人気に火が付いたのは自身のMySpaceにフリーミックステープをアップしたことによる。そこから話題になり、メジャーレーベルとの契約に至ったわけだ。ここで大事なのは無料の作品でスタートしても、才能さえあればメジャーに行けるということだ。受け皿を思い浮かべることができるからこそ、最初にただで餌を撒こうという気にもなるのだろう。何作も作品を出しているラッパーが販促として同じことをやるのも、確かな市場があるからこそだ。

そして、日本語ラップ界でこれまでこういった動きがなかったのは仕方のないことなのだろう。いくら無料で配っても将来的に利益を見込めないのだから。でも、アマチュアレベルが金をかき集め懸命にCDを作り、漫然と売れないのをただ眺めているよりは、このやり方でみんなに聴いてもらう方法を選択した方がより広く手に取ってもらえる可能性があり、うまくすれば人気が高まるのでは、とリスナー視点で安易に考えてしまうのだがどうなのだろう。



【追記】2009.05.11
たいしたことではないのだが、radio aktive projeqtのmp3ファイルは320kbps、MINTのはVBR。製品版に比べ音質が落とされているのに320kbpsは高くないか? 128kbpsぐらいにしてもっとダウンロードしやすくしても良いと思う。また、VBRの方が仕組みとして音質が良くなるのは理解できても、性格としてビットレート数が一定にならないのは苦手。128や192できれいに並ぶ方がいい。

何にせよ、無料で音が聴けたことには感謝感謝。ありがたいことです。
2009.05.09 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(11) | trackbacks(0)
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2017.03.28 Tuesday 23:59 | - | - | -
コメント
こんにちは。
Blogをチェックさせていただきました。
僕もヒップホップのBlogをやっていますので、是非チェックしてみてください。
Dan
http://blog.goo.ne.jp/danpgr/
Dan | 2009.05.11 Mon 11:06
R.A.P.なんて聴かないだろうな〜、と思ってましたが、ちゃっかり聴かれてましたか。
私も聴きましたが、全体的に微妙でした。K DUB SHINEのラップが退化してるのは聴く前から目に見えてましたが、DJ MASTERKEYのシャウトはウザったい事この上なかったです。
今ならDJ OASISのブログで効果音の入ってないフリースタイルを単曲でダウンロードできるっぽいです。
あと、二人とも意地張って腕が鈍る前に、客演とか他のアーティストのプロデュースに回った方を優先した方がいいですよね。
アルバム出すのに何年もかかる訳だし。そっちの方が、お金も稼げるしスキルも磨けて一石二鳥だとは思いますけどね。
CUP | 2009.05.11 Mon 11:06
>皆殺しだぜ着メロラッパー まずとりあえずあいつだろやっぱ 存在感ないCMスポット ヒップホップと違う別のJ-Pop

僕は実名出すよりこういう表現の方がニヤッとしちゃいますね。
モザイクはあった方が逆にイイって感じで。
カマイタチ | 2009.05.11 Mon 12:52
Dan様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

ブログ、拝見しました。50 CentとRick Rossのビーフはどうなったのかなぁと思っていたところに、相変わらずに50セント節なインタビューが読めて良かったです。ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします。



CUP様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

まあ、ケーダブはスキルはアレですけど、スタイルを変えないことだけは立派だなと思います。ただ、DJ OASISは本作を聴いてちょっと評価できたので、新しいソロ作は聴いてもいいかなと思いました。



カマイタチ様

こんばんは。
お久しぶりです。

確かに日本語ラップの伝統ではありますよね。日本人ならではの奥ゆかしさというか。"色眼鏡の詐欺師がイラつかせるあそこんちのピザ~"や、"ストリップだけはするなよ Mr.エンターティナー"といったラインは秀逸です。

ただ、今回のユニットの存在理由を考えたり、ここまで色々ワックワックいうなら、面倒くさいから実名出せよって思ってしまうんですよね。
gogonyanta | 2009.05.12 Tue 01:23
DJ OASISは宇多丸がfeat.した曲がいいですよ。
今ならDJ OASISのブログから幻の「キ・キ・チ・ガ・イ」がダウンロードできると思うんで聴いてみてください。
CUP | 2009.05.12 Tue 02:00
いつも拝見させていただいております。

[ストリップだけはするなよ Mr.エンターティナー]って本当ですか。。。
BLUE HERB「人斬り」のまんまパクリですね。。恥ずかし過ぎです。

K DUB SHINEは嫌いじゃないですけどね。
| 2009.05.12 Tue 16:48
CUP様

おお、ありがとうございます。早速ダウンロードしました。「キ・キ・チ・ガ・イ」いいですね。宇多丸の"天皇制反対"や"裁かれずに死んだ酷い人"="裕仁"というのは痛快です。日本語ラップには、ただアナーキーを気取るのではなく、もっと政治に踏み込んだテーマがあってもいいと思いますね。というか、そういうものを聴きたいです。



名無し様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

すみません。誤解させてしまいました。そのラインはもちろんIll-Bosstinoです。前半の色眼鏡云々はスチャダラパーです。

モザイク式のものが多かった日本のディスの表現方法という話の流れで、昔のいくつか見事だと思ったラインを挙げてみただけだったのです。申し訳なかったです。
gogonyanta | 2009.05.13 Wed 00:53
「キ・キ・チ・ガ・イ」のリリックです。
http://www.bomblabo.com/artist/oa/an/01.kikic/01.html
CUP | 2009.05.13 Wed 01:13
CUP様

またまたありがとうございます。

早速見てきました。ところでこれって、公式なものなのでしょうか? 公式っていういい方もおかしいですが、一度歌詞カードになったものを起こしたのか、それとも誰かの聴き取りによるものなのかということなんですが。。。

というのも例えば、イントロでの、"言葉の隠し芸 使って事の確信へ近づいてやる"というラインですが、文章の流れからは"核心"、あるいは彼の思想的には"革新"もあり得ることですが、というのが自然で、"確信"ではないと思うんですよね。

ああ、何だか申し訳ないですね。せっかく教えてもらっておきながら、質問するのもおかしな話です。もしご存知でしたらお願いします。ありがとうございました。
gogonyanta | 2009.05.13 Wed 01:41
あのリリックはアトミックボムのサイトにあったんで公式のものだと思います。
というか、「キ・キ・チ・ガ・イ」はタイトル通り、聞き違うようなリリックなんで、あぁ、そういう隠喩なんだなと気づくような曲なんですよ。
CUP | 2009.05.13 Wed 02:14
CUP様

何から何までありがとうございます。

天皇制反対などのダブルミーニング的なところはすごく面白いし、いいと思えるんですが、"ボケのムス違和みたく高質"のように、適当なあてリリックは意味が分からないし、別にそこは普通に書いても問題ないよねと思ってしまうんですけど、まあ宇多丸なりのこだわりがあるんでしょうね。

本当にありがとうございました。
gogonyanta | 2009.05.14 Thu 01:28
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