すばらしくてNICE CHOICE

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SEEDA『SEEDA』

2009年5月20日リリースの6枚目のアルバム。

6枚目にしてついに自身の名前をアルバムタイトルに持ってきたわけで、自信作なのだろう。実際に、SEEDA作品の中でもよくまとまっているし、『街風』で表現しようと試みたという"ここ3年間ほどのごく普通の日々"がここにきてようやく完成をみている。どの曲もユーモアが感じられ、サラッと最後まで聴き通せるし、何度繰り返しても飽きのこない作品である。

セカンドアルバム『Green』までの高速ラップからリリックを聴かせるスタイルに変更し、姉の死という重い過去を描くことで自身の内面をさらに深くえぐったサードアルバム『花と雨』、土俵をメジャーに移し、様々なアーティストとコラボレーションを果たすも、同時にストレスも抱え込んでしまった4枚目の『街風』、そのリリース後にすぐさま制作に入り、そこでの葛藤を言葉にし、やや混乱が垣間見られた5枚目の『HEAVEN』。

そして、引退宣言と共に発表された本作は、前作同様に空をまぶしそうに見上げるシーダがいれば、楽しそうに夜遊びを満喫する姿も描かれ、またオチを探す夜のドライブに気の置けない仲間と出かけ、かたやお馴染みの一服もある。

本作で一番ぐらいに気に入ったM12「JUST ANOTHER FEELING」でのリリック──"生き方を決めつけた日もあった だけど全て取っ払ったら楽しくなった"のラインに象徴されるように、どの曲でもどのテーマでも楽しそうにラップをしている。『HEAVEN』にあった辛さが今作では微塵も感じられない。ビーフについて書かれた彼のブログ記事に、マイナスの思考をできるだけ排除したという趣旨のことが書かれていたが、こういうことだったのかと納得できた。

それと、今作で顕著になったのは、力強いメッセージを発し始めたことだろう。客演仕事では以前からそういったラップを垣間見せていたが、自分のアルバムにも率直な言葉で語り始めたのはとても良い変化だ。

サイプレス上野が参加したM6「HELL'S KITCHEN」では、"俺らは次に何を残せるのか"と年相応の責任を意識し、また社会批判という言葉を使うほど大袈裟な曲ではないが、今の政治を見ていれば誰しもが漏らしてしまう愚痴をM3「DEAR JAPAN」では素直に吐き出している。

ビールを飲みながらつまみにニュース番組を見ているとついつい出てしまう愚にもつかない独り言のたぐいだ。"しょうがなねぇなぁ、麻生の腰抜けぶりは。オバマを見習えって。政治は信念とそれを思い描かせる言葉だろう"、といった。曽我部恵一が2001年末に緊急発売した「ギター」で歌われていた、"そしていまギターを弾いている / テレビではニュースが流れている / 戦争にはちょっと反対さ"と近いものがある。自分で何かデモのような行動するわけではないが、それでも表現者としては呟いてみたいものだろうし、そのメッセージは普通の人がテレビ画面に向かって突っ込みを入れるよりも遙かに射程距離が長いのだ。

ラップスタイルも以前のような早口を取り戻してみたり、得意の変則フロウを披露しつつ、オートチューンで歌ってみたりと飽きさせない。

悪いところのないアルバムのようだが、不満な点はトラックにある。きらびやかな電子音で飾り立てたトラックが好みではないのは置くとして、低音の軽さが最後まで気になった。ビートに重さが感じられないのだ。軽い声質のシーダとの相性を考えれば、このビートは意図的なものなのかもしれないが、ダンスミュージックとしての側面を考えると不満が残る。

街風』でもいい仕事ぶりを見せたFocisが手掛けたM5「SO HIGH」は愉快。それとBACH LOGICの変則ビートが冴えるM7「オチツカネエ」ではESSENCIALの珍妙なフロウの人が気になった。シーダをさらに変にした感じが面白い。ビートとぴったり寄り添うラップが味わえるM10「BLUE BIRD」も気に入った。歌ってもうまいSKY BEATSによるM12はとても良かった。

亡き姉のことを歌い、感傷に走りすぎた照れからか、蛇足的に置かれたM14「6 MILLION WAYS」だが、最後に一ラッパーとしての想いを吐露して終わるのも彼らしいのかもしれない。


引退宣言をしたシーダだが、音楽家の引退宣言はプロスポーツ選手のそれと同じように考えてはアホを見る。特にラッパーの言葉ほど信用のおけないものはない。アメリカであれほど引退宣言が出ているのに、日本で今までなかったのが不思議なぐらいだ。

彼は感情を言葉にして吐き出す、根っからの表現者だろうし、色々溜まってきたらきっと戻ってくるに違いない。その日を楽しみにしている。


【追記】2009.07.08
よく見たらM14はボーナストラック扱いだった。蛇足はいい過ぎでした。終わりよければ全て良しなアルバム。


2009年6月1日付オリコンアルバムチャート。
初登場第33位。初動3134枚。初動は前作より309枚増。
2009.05.28 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(4) | trackbacks(0)
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2017.04.19 Wednesday 23:59 | - | - | -
コメント
いつも見てます。更新大変でしょうが頑張って下さい!
あと、seeda本人曰く、これは7枚目のアルバムらしいですよ。
絢 | 2009.07.01 Wed 14:04
絢様

こんばんは。
おひさしぶりです。
それと、応援感謝です。

ギネスも、"アルバムが7枚 現実が見えない"って歌ってましたね。でもまあ、このブログでは6枚目のフルアルバムってことでよろしくお願いします。
gogonyanta | 2009.07.02 Thu 01:14
個人的には、前作『HEAVEN』のが良かったな。
時に凄く詩的になる時がある彼のラップは好きです。

彼はこの数年で日本語ラップシーンに多大な貢献してくれたと思います。
雑誌のインタビューで「また戻ります」とさえ言ってるくらいだから絶対に戻っては来ると思いますが、引退という名の大袈裟な休憩は人騒がせだなぁ。

gogonyantaさんのSEEDAに対する評価が当初とかなり変わっていて少し驚きつつもレビュー内容に頷きました。
私も最初はSEEDA含めfeat.勢が誰も似たように聴こえて「ギャングスタラップか」と毛嫌いしてたんですが、いざ聴いてみると歌詞が拙く聴こえる所も幾つかありましたが良い意味で期待を裏切られました。
ブロン | 2009.07.03 Fri 08:50
ブロン様

こんにちは。
コメントありがとうございます。

> SEEDAに対する評価が当初とかなり変わっていて
得意の手のひら返しってやつです。必殺技というよりも日常茶飯事的に使っているので、本人には何ら違和感がないのですが、人には奇異に映るのかも知れませんね。まあ、いい作品はいい作品としてフラットに評価できるようにと心掛けているつもりなんです。

> 引退
『花と雨』以降、他のラッパーと比べ驚異的なペースでアルバムをリリースしてきたわけで出し尽くしてしまった感があるのかもしれませんね。とりあえず復活の日を楽しみに待ちたいと思います。
gogonyanta | 2009.07.04 Sat 13:50
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