2009年6月10日リリースの8枚目のアルバム。
RIP SLYMEといえば、これまでも様々な音を取り込み、交配させ、ポップに昇華させ、誰もが楽しめるヒップホップを作り上げてきたわけだけど、前作『
FUNFAIR』はそのハイブリッドさの純度をさらに上げたおかげでとてつもないトラックが生み出され、傑作アルバムになった。DJ FUMIYAのマッドサイエンティストぶりが最高すぎて、ラップはただの音として機能していたにもかかわらず、十分楽しめたのもすごい話だった。
1年半ぶりのアルバムとなる本作は残念ながら
そこまで飛ばした楽曲はない。辿り着いた高みから数十歩ほど後退したところに立ち、これまで登ってきた道程を振り返りつつ、その眺めを楽しんでいるよう。それもあって、4人のラップは
前作より目立ち、さらには積極的に導入されたコーラスワークの面白さもあり、本来の楽しいリップスライムに立ち返っている。
ラップ曲の1曲目となるM2「Good Day」では小気味良いギターリフにオルガンが絡み、軽快にホーンが吹き鳴らされ、軽やかなラップがまさに出発を告げる。まず最初に向かうのは当然海だ。古くてもかっこいいコーラスアレンジが肝のM2「太陽とビキニ」は実にさわやか。ラップの聞こえが良くなっているのは、ロックンロールをリップスライム流に仕立て上げたM4「Rock'n' Roll Radio」と
前作に収録され同じ趣向の「SPEED KING」を比較すれば明らかだ。
メロウな曲を得意とするPESがまた作り上げた傑作はタイトル曲にもなっているM6「Journey」。とてもらしいトラックで、フックでのオートチューンの使い方に嫌みがなく、素直に楽しめる。
シングル『
太陽とビキニ』のカップリングだった「SPLASH」が11曲目に収録されている。どうせなら同じ
シングルの3曲目だった「Supa Sonic」をアルバムに入れて欲しかった。「SPLASH」よりもポップが弾ける同曲の方が作品に幅が生まれてより楽しめるアルバムになったと思うからだ。
ストリングスが入ったメロウ路線のM12「STAIRS」も悪くない。フックの歌メロもアコースティックギター主体のトラックも女性コーラスも、全てがひたすら心地良いM13「Beauty Focus」でアルバムが締められる。
もうベテランといってもいいリップスライムの風格の漂う作品。RINO & DJ YASの
アルバムにも参加していた若手のJUNGLIST YOUTHSを招いたり、トータス松本にフックを歌わせたりと作り手が一番楽しんでいるのが伝わってきて、なんとも頼もしい。