すばらしくてNICE CHOICE

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THIS IS PANIC『THIS IS PANIC 01』

2009年9月2日リリースのファーストシングル(iTunes Store配信限定)。

2008年結成。2MC──ウエダカズキとタカキHDR──に、ベースのマツザカ、ドラム・ケンジ、プログラミング・イケダという現役大学生による5人組グループ。iTunesストアの紹介文によれば、"ゆとり教育が生んだネオ渋谷系脱力派ラップバンド"。また彼らのホームページでは、日本語ラップならぬ、"にほんご・ラップ"とのこと。


iTunesストアでは毎週水曜日に、"ブレイク直前、注目の新進アーティスト"の曲が「今週のシングル」として無料配信される。9月9日にアップされたのがこのグループの「WARNING こちらパニック応答せよ」だった。まあどうってことない、まさに彼らが自称しているように"渋谷系脱力派ラップバンド"な音であり、これはこれで面白いと思ったわけだが、今現在、この曲のカスタマー評価並びにレビュー欄は大荒れ状態の笑える状況であり、取り上げてみた。

441件もあるカスタマー評価のうち、5段階評価の★ひとつがなんと390件。ずいぶんと嫌われたものだ。

150件弱あるレビューも奮ってる。"耳レイプを初めてされました"、"聞いていて不快になる音楽"、"頭が痛くなる"、"音楽を冒涜してますな"、"こんなに驚いたのは、ジョン・ケージ以来だ"、"あまりに酷かったので初レビューを書いてしまいました"、"損しかしないよ!!!"、"ホント酷いですね。友達同士集まってノリでとった歌をCDにしちゃいました的な全く深みのないペラペラ薄っぺらいものでした"、"びっくりするくらい糞だった。今までの今週のシングル史上一番酷いわ。というかもはや社会のゴミ"、"誉め言葉が一つも浮かびません"、"ジョイマンのネタ???"、"これは何かの事故でしょうか。恥を知りなさい"、"タダでもいらないと思ったのは初めてです"。

日本語ラップを聴いたことがない人たちが多いのかと思えばそうでもないようで、"頼むからもうこういう曲でラップを汚さないでほしい"、"こんなラップでジャパニーズヒップホップがどうとか言うなよ"、"スチャダラパーのコピーバンドとしか言いようがない"、"スチャダラを目指した中学生って感じ"、とある。

主観ではなく、もう少し分析を試みた意見としては、"オケとのバランスがひどい"、あるいは、"再生開始から16秒間サイレンの音が続き、続いて半音以上音階のズレた御題目もどきが流れる。旋律、和声、リズム、形式の四要素が全て欠損し、かつ音痴という救いようのない無い雑音である"、"Jazzベースなリズム隊&サンプリング、エモいギター、スチャダラパーとチョモランマトマトが核融合したよな脱力系棒読みRap"。しかし、こうした書き込みは少数であり、彼らに向けられた批判が具体的にどういうものなのかは不明なままだ。


さて、問題の「WARNING こちらパニック応答せよ」。iTunesで聴いていると、彼らの次にはThom Yorkeの「Live on Live on BBC Radio 2」からの曲が流れ、続いてThug Familyへ行き、TKCに変わるという趣味なためか、気分が悪くなるほどの拒絶感を抱くことはなかった。反対にこれは大いに有りだと思ったほどだ。

20数年前にアメリカからヒップホップがやってきて、ラップという言葉を詰め込んだ表現方法を日本語でどうやったらいいのか先人たちは試行錯誤を繰り返した。そのなかでどうにかビートに言葉を乗せ、それなりに本場のラップっぽくはなっていったが、韻に関してはないがしろにされ、新しい話芸に近かった。

そんな風潮の中、それはヒップホップではない、日本語でラップをするとはこういうことだと提示してみせたのが、空から降りてきたキングギドラのZEEBRAとK DUB SHINEだ。彼らやその周辺の、"J-Rap"ではなく自分たちがやっているのは日本語ラップだと称する人たちは懸命に努力し、野音でのイベントを成功させたりもするのだけど、売上そのものは低迷し続けた。結局、Dragon Ashのフックアップがあって初めて表舞台に出られたのだ。

体験したわけでもないのに、日本語ラップの歴史を語り出してしまったけれど、まあ、2000年代初頭はそれなりにラップが売れたわけだが、徐々に下火になり、かつてイベントを成功させブイブイいわせていたラッパーたちも下を向き始めた。そこに台頭してきたのが、不法行為をしていた過去やドラッグネタをリリックに散りばめ、"リアルなヒップホップ"を売りにしたラップだった。

やがて彼らのスタイルは本流となり、今現在も続いている。俺が一番すごい的なリリックがかつては大半を占めていたが、イリーガルな環境に身を置かざるを得なかった不幸な生い立ちを語るなかで、次第にリリックは内面を深くえぐり出していく。そのドラマ性が高ければ高いほど喜ばれるわけだが、そうなると重みも増していくため、反対にうっとうしくもなる。

ここで彼らTHIS IS PANICのラップだ。"ロックンロールを捨てた"彼らがなぜヒップホップだったのかは分からないし、日本語ラップの流れを知っていて、敢えてこのラップスタイルを選択したのかどうかも知らないが、彼らは鮮やかに原点回帰をしてみせている。そして、今の主流からいえば、彼らの立ち位置は確かに"オルタナティブ"だ。

キングギドラが登場する前後、スチャダラパーが中心となったLB NATIONの面々の、ラップが取り立てて好きってわけでもないけれど、新鮮で面白いからやってみたというのと同種の気軽さがあり、また彼らの音は、そもそもヒップホップって眉間にしわを寄せる音楽ではないし、楽しいものだったんじゃないと思い出させる。日本語ラップ村の住人でこうした音を出す人は少なく、外の口口口やthe chef cooks meといったグループにこそ自由な雰囲気が宿っているのも面白い。

カラオケで歌われ、共感を得ることが目的のFUNKY MONKEY BABYSやGReeeeNといったグループとも異なる。リリックをよく聴けば分かるが、彼らは自分の言葉で自己表現をしている。いらだちをおちゃらけた韻に包み込み、音に乗せている。


彼らのMySpaceの"影響を受けた音楽"欄には、スチャダラパー、かせきさいだぁ、RIP SLYME、The Pharcydeといったヒップホップ勢に並び、いまだに正当な評価を得られていないELEPHANT LOVEが挙げられている。また、ミクスチャーバンドのDragon Ash、RIZE、あるいは惜しくも解散したSuper Butter Dog等が記され、GEISHA GIRLSにはなるほどと頷く。


M1「WARNING こちらパニック応答せよ」もM2「ゆらめいてLOVE、炎のゴブリン」も日本のオールドスクールともいうべき懐かしさいっぱいのフロウが炸裂する。生音のビートがもう少し堅めのセッティングだと気持ち良いが、楽器陣は音の隙間をずいぶんと意識しているようで、ラップを引き立たせる演奏は悪くない。

驚いたのがM3「anywhere」。オレンジレンジのような曲で、なかなか見事な歌メロと歌心を感じさせるラップが絶妙に絡む。前半がアコギ主体で進み、後半でストリングスが入るのもいい。

M3の路線でいけば売れそうだが、M1やM2の曲調こそが面白いのだから、日和ることなく突っ走って欲しい。
2009.09.13 Sunday 00:00 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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