すばらしくてNICE CHOICE

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神門『栞』

2009年9月16日リリースのサードアルバム。

歌詞カードや帯の宣伝文句を見る限り、どこにもそんな紹介はないのだけど、タワレコやHMVのウェブページでは"未録音音源集というくくりで集められた楽曲"という説明がつく2枚組アルバム。1枚目は「詞集」と題され、全10曲(40分22秒)が並び、加えてボーナストラックとして4曲が収録されている。その4曲に付けられた副題は「四収」(17分48秒)。2枚目は読みは同じく"ししゅう"だが、当てられた漢字は「死終」。全11曲41分39秒のコンセプト作品になっている。


好きになったアーティストの作品はベタ褒めし、そうではない方々の場合は腐すというのがこのブログの通例であり、一度でも気に入ると甘めの評価になってしまうわけだが、今作は神門の頑張りは理解できるものの、作品として頭でっかちであり、神門の良さ、つまるところリリックなわけだけど、それが十二分に発揮されたとはいえない残念な曲が多いと書かざるを得ない。

"未録音音源"ということで各曲の制作時期はそれぞれ異なるのだろう。ただ、それを今出すことに疑問だ。自分の内から絞り出した言葉や音を作品として成就させることなく、消えるに任せるのは悲しいだろうことはたやすく想像できる。しかし、ディスク1に収録された曲は、これまで『三日月』と『こころ』という2枚のフルアルバムで表現してきたテーマの焼き直しであったり、へたすると言葉の言い換えでしかない曲だったりが多く、相変わらずの言葉の強さには目を見張るが、新たな挑戦がない故に成長が感じられない。過去曲を振りかえっている場合ではなく、もっともっと前に進むときではないのだろうか。

本作の肝が2枚目「死終」だということも分かる。三人称のストーリーテリング曲が集められている。『三日月』収録の「とある男女の恋物語」のようにこの手の曲がなかったわけではないが、あの曲は両親を主人公にしていたわけで、全くの架空の人物を描いていたものではなかった。だから新しい挑戦がここではなされている。

夫の死に直面し悲観のあまり幼子と心中する母親(M2「百合ノ花」)、それと対になる幼子視点のM8「百合ノ華」、独房の死刑囚(M3「蜘蛛」)、あるいは重病の夫を亡くした妻(M4「手」)、大海原に放り出され、自分が生きるために他人を蹴落とす事態に陥ったらというもしもの世界(M5「板」)、愛猫の死(M6「みーちゃん」)といった具合に徹底的に死を描いていく。

最後のラップ曲M10「いのち」でようやく本来の神門の視点でラップされ、"命の終わりなかったら 誰も今生きようとしなかったさ"と、死があるからこその生の尊さ、必死に生きることの大切さといった予定調和でもって、この大作を締めくくる。

ストーリーテリングや死を題材にするという点では確かにまたひとつ新しい引き出しを手にしたわけだが、しかし今作は『こころ』で改善された、"コンセプトで固めるとアルバムの幅がなくなる"という失敗を再び犯してしまった。彼としてはディスク1を抱き合わせることで、単純なコンセプトアルバムにはならず、テーマの幅を広げられたと捉えたのかもしれない。でも、そのディスク1自体が上述したように新鮮味がなく、さらには新たな冒険に挑んだディスク2でのオチの凡庸さ、また水増し曲の多さを考えるに、どうにも歯がゆさが残る。

そうはいってもラップ曲だけで22曲も収録されていれば、さすが神門と思える曲もあるわけで、ディスク1では、M1「yellow」、M4「大丈夫」、M10「成長」。「四収」からはやはりM14「成長III」だろう。M1は自作トラックなのになぜか乗りにくそうにし、しかもしばしラップがよれるほどなのだが、中途半端なラッパーに投げかける言葉の辛辣さは磨かれ、鋭さが増している。M4はDJ YUIのトラックが目玉。1ループのサンプリングトラックは神門のアルバムには珍しく明るい。聴いていて楽しい。M10とM14の成長シリーズはこれまでも各アルバムに1曲ずつ入っていたが、ここでも期待を裏切らない。

ディスク2からは死刑囚や戦時下の母子という想像しにくい登場人物よりも、夫を亡くす妻というありふれた物語のM4にグッときた。神門のしゃがれた声がより悲しみを誘う。M5はDJ YOKOIの太いビートが輝く。M7「夜汽車」は川端宏志によるトラックで、このトラックメイカーは今作で数曲手掛けているのだが、この曲だけがまともだった。リリックもまた夢とうつつの間を走る列車に乗り込む幻想的なもので新境地だ。

上でも少し書いてきたように、トラックに関しては今回もイマイチ。前作はDJ NAPEYが一手に引き受けていたので、責任の全てが彼にあるような書き方をしたが、今作を聴くとどうも神門のトラックを選ぶセンスに問題があるような気がしてきた。端に私の趣味と違うだけだろうが。

川端のトラックは上音にきれいな旋律を持ってくるのだが、ビートに工夫がなく、すぐに飽きる。槍玉に挙げるのは多くのトラックを提供した彼だけだが、他のトラックも似たり寄ったりだ。PC上で組み立てたと思しき安っぽい上音は無駄に厚みだけを増していくのだがチープさはいかんともしがたく、ヒップホップに大事なビートを疎かにしている。DJ YOKOIとDJ YUIのふたりが良かったぐらい。


ひと通り不満をぶちまけてきたが、ライブで実際にそのパフォーマンスを見ると曲への印象は大きく変わると思う。それほど強烈なライブをするわけで、次に見られるのが楽しみではある。
2009.09.25 Friday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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2017.04.19 Wednesday 23:59 | - | - | -
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