すばらしくてNICE CHOICE

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GAGLE『SLOW BUT STEADY』

2009年9月16日リリースの4枚目のアルバム。

2008年は日本語ラップが豊作の年だったらしい。各所でそんな感想を見聞きしたけれど、私にはそんなものかねという思いが強かった。確かに待望のSUIKAのアルバムは傑作だったし、キリコSTERUSSらは期待通りの作品を発表し、まさかのメテオのソロアルバムもあった。最後の最後にはEVISBEATSのファーストという嬉しいサプライズまで用意されていた年ではあったが、豊作だったのかなという疑問はいまだ残る。

ただ、見方を変えれば、2006年の終わりにリリースされたSEEDAの『花と雨』以降、にわかに本流に躍り出た印象がある、昔はやんちゃもしたけど今は真っ当に生きようと努力してるよでも生活はカツカツだし時々は前のように羽目を外して憂さ晴らしもいいだろラップがこの年にひとつの頂点を迎えたことは事実だろう。注目作が多く出揃った。年初のSEEDA『HEAVEN』を始め、GEEKのOKIのソロ作、SD JUNKSTAのBRON-KやNORIKIYOのアルバム、さらにはBES、鬼一家、とどめのSCARSの2枚目と確かに勢いを感じた。この潮流を好む人たちにとっては豊作だったといえるのかもしれない。

私は今年こそが豊饒の年になりそうだと感じている。前半はドジが逮捕されたり、良盤が少なかったりと停滞した印象はなきにしもあらずだったが、SEEDAは常に話題を提供し続けてくれたし、中盤以降は聴き応えのある作品が揃ってきた。呂布カルマALTといった有望な新人が現れ、NATURAL 9 NATIONのようやくのファーストアルバムに、お久しぶりなTakatsukiのソロ作、順調に発表し続ける般若は今年も安定した1枚を出してくれたし、SEEDAのラストアルバムもあった。そして、この9月。アルバム数も集中し過ぎだが、打率も高過ぎと嬉しい悲鳴が漏れてしまう。

8th Wonderの待たせ過ぎな1枚目に始まり、KREVAの充実作、神門の力の入った2枚組、18歳の溌剌としたラップが光るPOCKYの処女作、まだ聴いていないが鎮座DOPENESSもすごいことになっていそうだし、チャート的にはAK-69やLGYankeesといったグループが前作に引き続き大健闘した。そして、今年の日本語ラップの勢いが決定的だなという思いを強くしたのが、この記事の主役、ようやくだけど、GAGLEの4枚目"とろいがでも着実に"だ。

MITSU THE BEATSが5月にリリースしたソロの2作目『A WORD TO THE WISE』に通じる、ますます滋味溢れていくトラックを、HUNGERは少しも損なうことなくラップを乗せていく。日本語が乗ることで時として感じてしまう気恥ずかしさが皆無で、頭の悪い言葉になってしまうが、大人が聴くことのできるヒップホップになっている。これまで以上にトラックを大事にしたハンガーのラップは以前の突拍子のなさが影を潜め、ビートに言葉を確実に定着させていく。

トラックは男前のベースラインを基調とし、歌ものフックが増え、格段にソウルフルになった。客演もBONNIE PINKや椎名純平、あるいはskidaroundというグループのMahitoといったシンガーたちであり、今回は外部ラッパーはなしだ。久しぶりに椎名の歌声を聴いたけれど、この人はR&B系では珍しく乾いた声を出して面白い。もっと活躍してもいいと思うのに残念。

J.Dillaっぽさやスペーシーな雰囲気も忘れていないし、フルートのワンループで最後まで聴かしてしまううまさ、あるいは攻撃的に鳴らされるドラムから徐々に音数が増えていく展開の面白さを味わえるなど、さすが世界のミツザビーツと唸らされる。

メロウな展開が続くために後半に冗長さを感じてしまうのも事実で、M6「ラップ狂ノ詩」でハンガーが高速ラップをかましたように雰囲気を変える1曲があれば良かったのかなとは思う。


そうはいっても、じっくり聴き込むことで毎回新たな発見ができたり、はたまた良質な音として流し聞きも可能な良盤であることには変わりがない。まさにジャケットの3匹の牛(仙台だから? でも米国生まれのヒップホップだからバイソンなの? 別名アメリカヤギュウというらしい)がこれまでゆっくりとでも確実に歩みを進めてきた中で、これまたのんびりゆったりでも留まることなく体内で反芻してきた音楽の技能・想いが凝縮された1枚になった。すばらしい。
2009.09.29 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(6) | trackbacks(0)
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2017.06.27 Tuesday 23:59 | - | - | -
コメント
お久しぶりです
GAGLEめっさ良かったですね〜!
待ちに待った新作がこんなに
名盤でホントうれしいです

トラックもさることながら
僕はハンガーの声とラップだけで
イケるタイプなんで大満足でした

なかなかタイミングが合わず
まだ一度もライブに行った事がないんですが
是非生で見てみたいです

関係ないですが
suika夜話に行けなくなりそうで
かなり凹んでます
what's? | 2009.10.01 Thu 22:58
>昔はやんちゃもしたけど今は真っ当に生きようと努力してるよでも生活はカツカツだし時々は前のように羽目を外して憂さ晴らしもいいだろラップ

SEEDA周辺のこの手のラップには正直もう辟易してます。

今年で言えばALT、NATURAL 9 NATION、ISSUGI、8th woderが良かったですね。
レビューされてないものだとbijaのthanatosも良かったですよ。
rb | 2009.10.02 Fri 02:21
what's? 様

こんばんは。
お久しぶりです。最近コメントがなくお恨み申し上げていたところです。嬉しいです。

GAGLEのライブが見たくて、なおかつスイカ祭を見逃しそうな方にお薦めのイベントがあります。

IN THE 家!Vol.6@吉祥寺Star Pine's Cafe
http://blog.livedoor.jp/intheie/archives/50267052.html

深夜のスイカが見られますし、GAGLEもダースレイダーも新作が不評のHAB I SCREAMまで付いてくるというなかなかおいしいパーティかと思います。来週の土曜日なのでちょっと急ですけどね。この日は、新宿ピカデリーのオールナイトイベントで、ファイナル・ディスティネーションシリーズを新作含め4作とも上映するというので、非常に迷うところです。



rb様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

SEEDAはスタイルを模索する姿勢や表現を大切にするところなど結構気に入ってるんですけどね。まあ、でもおっしゃりたいことはよく分かります。

ISSUGIはまだ書けるほど聴き込んでいないのですが、トラックが抜群でしたね。驚きました。

> bijaのthanatos
視聴機で聴いて、ちょっと違うかなと思ってしまったんですが、良盤ですか。気になってきました。余裕があるときに聴いてみます。

本当にいつも色々情報をありがとうございます。助かります。
gogonyanta | 2009.10.02 Fri 03:02
(`・д・)ノ こんばんわ!ビシッ
2008年はソロマイカーが活躍したのが印象的でした。今までの日本語ラッパーはソロでは不発ってケース多いですからね(^^;
ハスリングラップについては僕は今のが聴けますね。むしろ、はじめのころ(SEEDAあたりを出始めたころ)のが苦手でした。
免疫ができたってのもあるんだろうけど、
洋楽を聴く感覚っていうか、心の中で距離をとって聴いてます。「ああ、こうゆう考えや生き方の人もいるんだ。面白いなぁ」みたいな感じっす。(((^^)
てか、SEEDA周辺は彼らのアティチュードより、バイリンガル(もどき)スタイルのラップが苦手っす。
今年は。。正直、あまり日本語ラップは掘ってないんですが、
JUSWANNAのブラックボックスは良かったです。オーソドックスな日本語ラップが好きなんで。
鬼はハスリング路線なんだけど、なぜか好きです。
ライブラ周辺はハスリング路線でもうざったいバイリンガルスタイルじゃないせいか、好きです。
ぱーまん | 2009.10.02 Fri 20:18
ぱーまん様

こんばんは。
いつもありがとうございます。

確かにグループでの作品の方が以前は多かったですよね。それが今では、ワンマイクでのアルバムの方が数の上で勝っているように私も思います。作品の質もソロ作の方が上のものが多いですし。大人数のマイクリレーで下手なラップを聴かされるよりは、実力がはっきりしている、つまり実績のあるラッパーのソロアルバムが人気出るのは必然なんでしょうね。

"ハスリングラップ"の聴き方はぱーまんさんのやり方が正しそうですね。鬼は評判いいですよね。「小名浜」の1曲しか、しかもYouTubeで、聴いていないので、機会があれば最近出たアルバムを試してみたいです。

JUSWANNAはあそこまでしっかりとした世界観を構築したアルバムはなかなかないですよね。あれを聴いていると、今が本当に2009年なのかちょっと考えてしまいます。
gogonyanta | 2009.10.04 Sun 01:09
>gogonyanta氏

返事どうもです('・ω・)
鬼についてですが、新しいアルバムは小名浜や甘い思い出あたりで
鬼にはまった自分からすると、結構落ちる内容でした。
鬼はいい曲とそうじゃない曲の差が激しい気がするので
ある程度心して聴いたほうがいいと思います。
暴力的すぎる表現もあるから、これも合う合わないがあると
思いますし、赤落よりラップが下手になってる気がしますので
あまり期待しないほうがいいような(汗
実は一個前の自分のコメント後に獄窓を聴いて
自分の中で鬼に対する評価ががた落ちしたので・・・

ソロが主流なのは、ラップ業界におけるユニティ感が
弱まりつつあるから、あるいは、金やプロップス
(音楽シーンや現場にいるヘッズからの)を自分
一点(プロデューサー除き)に集中できるからじゃないかと。
いずれにせよ、ビジネスを念頭においてラップを
する場合にソロ意識が強まるのは当然なのかなと。
そう思います。
ぱーまん | 2009.10.04 Sun 10:46
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