すばらしくてNICE CHOICE

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SMRYTRPS『MIX TAPE WORD IS BROWN pt.2』

2009年7月26日リリースのミックスアルバム。

KEN THE 390主催イベント「超・ライブへの道 Vol.1」からライブ会場限定で発売されているミックスアルバム(CD-R。1000円)。曲と曲が繋がっている上に1枚ファイルなので、確かにミックスアルバムな装いだけど、しかし内容は豪華に新曲が11曲も収録されていて、実質は『BEATNIKS』以来3年ぶりとなるニューアルバムといって良いと思う。

しかも、だ。先のシングルについて書いた記事で"SMRYTRPSとSamurai Troopsというグループは異なるグループなんだとようやく理解した"とかなんとか世迷い言を書いたわけだけど、ここに収められた音は完全に「SMRYTRPS」のそれである。

サンプリング主体のトラック、前に前にとラップを押しやる飾り気のない無骨で太いビート、軽やかに駆け下りていくウッドベース、時にオートチューンならぬ拡声器を通したようなボーカルエフェクト。もちろん、ほとんどの曲でSemmyが参加している。これが大きい! TakatsukiのラップもZomもY.O.G、Zoeもそれぞれスタイルがあり、それはとても良いことだと思うのだけど、セミーが加わったマイクリレーを聴いて実感するのはストレートなラップをする人がこのグループにはいないのだなということ。彼がいて初めて他のメンバーのラップが生きてくるのだ。メテオの不在よりもセミーがいないことの方がサムライトループスにとって大打撃だったことに気づかされる。

気に入った新曲をいくつか取り上げる。でもその前に曲名について、注意すべきことがある。最後の23曲目を見れば明らかなように、一応タイトルが付けられているが意味がないお遊びのようなものらしい。リリックやテーマに沿った題名がそれなりに付けられてはいるものの、ややおふざけが過ぎる傾向にある。

3曲目はアルバムタイトルにもなっている"My word is brown"が連呼される曲で、弓で弾いたようなベースが印象的。しかしもっと耳にこびりつくのがY.O.Gの"言葉はチャ~"のフレーズ。ダブルミーニングといって良いのか分からないが、とにかく耳に残る。先日のスイカ夜話祭でも最後にフロアに流していた。チャ~

曲間のインタールードはたいていが映画かテレビから持ってきたと思われる英語のセリフがシンプルなビートの上に乗せられている。

ゾムの制作っぽいレゲエ調のM8が終わった後に始まるのが、『ことばのおんがく』の頃のようなトラックに、サイレン音が駆けめぐり、その下を5人が疾駆するM9だ。"深紅のジャズ SMRYTRPS リンゴの月に落としたスパイス RED HOT RED HOT"とのフックも勢いがある。これはかっこいい。

ムーディなM11は題名も"御徒町ラプソディ"であり、これまでになかった曲調で面白い。そして本作で一番ぐらいに収穫だったのが、"午前3時の最も甘くてメロウな告白"的なタイトルが付けられたM13だ。名盤のセカンドからタカツキが手綱を握ったまま順調に作品を出し続けていたら、きっとこういう曲調の子供向けではないマイクリレーがもっと聴けただろうなと思わせてくれる逸品に仕上がっている。

ジャジーな鍵盤は生音なのかな。それとウッドベースとビートというとてもシンプルなトラック。フック後のラップはゾエから始まる。決して平易ではないものの人生・生活の重みを感じさせるリリックが実に彼らしい。続くタカツキヴァースもいつになく押韻を意識している。リリックもまた男前だ。"ねえ 裏切られてるマヌケの顔ってどんな顔 きっと俺と同じ顔"。

最後の1分半ほどは鍵盤とベース、太いビートだけの間奏になる。味わい深いので6分以上と長尺なのに聴けてしまうわけだけど、ここのパートはもしかしたら不参加のセミーが入るはずだったのかもしれない。彼が吹き込んだ完全版をぜひとも聴きたい。

まだ寄せ集めだった頃のサムライトループスっぽさが漂うM15。次のM16は小林大吾のトラックの上に、タカツキが"キーンコーンカランコローンとチャイムが鳴ればそうさ放課後 はみ出す帰宅部"と高らかにラップして始まる。タカツキ曰く"ジュブナイルラップ"だという。フックは"放課後はマイクセッション!"という具合。

生活を感じさせるゾエのラップがたまらないのが18曲目。"あかりを灯して待っていてくれる人を"と題されたこの曲では、音楽活動のために家族孝行が満足に出来ていないことを嘆きつつ、我が子を想う心情が綴られる。必殺のゾムの歌ものフックがまた優しい。"変わらない日々のために さぁ行こう"。

セカンドの頃を彷彿とさせるM20にも当然のように惹かれる。ベースラインと簡素なビート。最小限の音なのに、生き生きとした5人のラップがグルーヴを作り出す。


こういうラップが聴きたかった! 無駄にトラックを飾り立てるのではなく、5人がラップをしているかっこよさがサムライトループスの良さだったはず。5人が5人とも違うスタイルで、陳腐なリリックを丁寧に取り分け、日本語でラップする楽しさを自然な形で実現していたのが良かったのだ。彼らよりも下の世代が台頭してきているけれど、サムライトループスの代わりとなるグループはまだいない。マイクリレーの巧みさ、キャラ立ち、分かりやすさ、テーマの着眼点、トラックメイクのセンス、軽妙洒脱なリリック、唐突なエロ(メテオの担当)と彼らの長所を挙げていけばきりがない。そんなにすばらしさがあったのに、いや、本作を聴けばいまだに持ち合わせているわけで、無理にRIP SLYMEやケツメイシになる必要はないのだと思う。

ひとまず本作をインディーズで一般に流通させるべきだと思う。その際にはミックス仕様にはしないで欲しいし、タイトルも真面目に付けて欲しいが、ともかくこれを聴けば、一度は失望して離れていったファンたちも嬉々として戻ってくるだろう。それだけの完成度を誇る良盤だ。


<曲目(黄色字が新曲)>  [60:61(各曲の長さはおおよそで切り分けたときのもの)]
01. Agents always arrive to your door such night in boredom.  (01:26)
   【Hook→Y.O.G→Zom→Takatsuki→Semmy→Zoe】
02. We dont't care any protest about the colour of notebook  (00:25)
03. My word is brown. it must be...  (04:29)
   【Hook(Takatsuki)→Takatsuki→Zom→Hook→Zoe→Y.O.G→Hook】
04. How can you swim backstroke in the fruit shop or pointed stick?  (00:47)
05. Uuuuuu... It's all about you you you.  (02:57)
   【「YOU」:シングル『Re: El Carnaval』のc/w】
06. Any reason must be ignored  (00:22)
07. Down by the riverside. lay down to the Shinbashi sta.  (03:36)
   【Y.O.G→Takatsuki→Hook(all)→Semmy→Zoe & Zom→Hook】
08. Take me to the Fuji Rock Festival run run pra pra ran ran ran ( ).  (03:34)
   【Hook(Zom & Takatsuki)→Takatsuki→Zoe→Hook→Hook】
09. Too red too hot jazz in crimson  (02:48)
   【Hook(all)→Y.O.G→Takatsuki→Zom→Semmy→Zoe】
10. Fucx yo'self  (00:47)
11. Okachimachi rapsmry  (04:16)
   【Hook(Zom)→Takatsuki→Zom→Hook→Semmy→Hook→Zoe
    →Y.O.G→Hook】
12. City in gray  (00:45)
13. I confess. you confess. this is sweetest mellow confession at 3AM. (06:17)
   【Hook(Takatsuki)→Zoe→Zom→Hook→Y.O.G→Takatsuki→Hook】
14. Every pythonian got to give us single step and back again  (00:44)
15. Some times in your Parade life and festivity  (04:25)
   【Takatsuki→Hook(Zom)→Semmy→Hook→Zom→Zoe→Y.O.G→Hook】
16. Diago beats and smrytrps  (03:08)
   【Takatsuki→Semmy→Zoe→Hook(Takatsuki)→Zom】
17. rop rep rup (marry me marry him marry you)  (01:20)
18. Akariwotomoshitematteitekureruhitowo  (02:44)
   【Hook(Zom)→Zoe→Hook→Semmy→Y.O.G】
19. Fish day  (00:54)
20. Samurai Troops Funk love music P.O.1540012 Setagaya Komazawa
   【Zoe→Takatsuki→Semmy→Hook→Y.O.G→Zom→Hook】       (05:02)
21. I never know what you say part 2 (behave yourself)  (02:12)
22. Music mush room make me multiple...  (04:07)
   【「なんとなくさ」:シングル『Sa Yo Na Ra ~また、めぐり会えるから~』のc/w】
23. All titles mean nothing. kiss me!  (04:01)
   【「246」:シングル『Fun! Fun! Fun!』のc/w】
2009.10.20 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(5) | trackbacks(0)
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2017.10.15 Sunday 23:59 | - | - | -
コメント
文章を読めば読むほど欲しくなります。。

SUIKAのイベントでは販売とかされないんでしょうかね…
いっちゃ | 2009.10.26 Mon 16:48
このCD、「ことばのおんがく」からサムライにハマった身としては嬉しい内容ですよね。狙いすぎてないポップさとアングラ感(黒さのようなもの)がうまく同居している印象です。

ベースのきいたタカツキ製トラックの上で跳ね回るMC。みたいなアルバムをまだ期待してしまいます

ひとつ気になったのですが、このミックスのpt.1は存在するのでしょうか?
それなりに彼らの音源を追いかけてきたつもりだったのですが、いきなりpt.2が出てきたので戸惑っています。
r-k | 2009.10.29 Thu 10:04
いっちゃ様

こんにちは。
返事が遅くなり申し訳ないです。

スイカ夜話でも売られているみたいです。しかも、メテオの参加曲が収録されているバージョンだとか。私が持っているのは全23曲ですが、先日のスイカ夜話祭で購入された方に教わりました。



r-k様

こんにちは。
コメントありがとうございます。

> 狙いすぎてないポップさとアングラ感(黒さのようなもの)がうまく同居している印象です。

ホントそうですよね。バランスのいいグループです。彼らはあの頃の音楽性のままメジャーに上がってくれたらと今でも思ってしまいます。pt.1はどうなんでしょうね。彼らのブログのコメント欄で質問されたら確実のような気もしますが。。。私も知りたいですね。
gogonyanta | 2009.10.31 Sat 10:42
再び失礼します。
WORD IS BROWNについて、タカツキ氏に直接問い合わせてみました。

pt.1はことばのおんがくとパレットの間にあったプロジェクトとのことですが、ある程度できた時点でお蔵入りになって、今回トラックの一部をサルベージしてラップを入れなおしたりしたものがpt.2にも入っているとのことです。

つまりpt.1は出回ってない、ということみたいです。そう言われればこのCD、確かにことばのおんがくとパレットの中間って感じしますよね。

WORD IS BROWN pt.2で検索するとこちらのレビューが最初にヒットするので、同じ疑問を持った方の参考にもなればと思い書き込ませていただきました。

では、これからも楽しみに拝見させていただきます。
r-k | 2009.11.01 Sun 11:15
r-k様

こんにちは。
貴重な情報をありがとうございます。

> pt.1はことばのおんがくとパレットの間にあったプロジェクトとのことですが、
> ある程度できた時点でお蔵入りになって、今回トラックの一部をサルベージして
> ラップを入れなおしたりしたものがpt.2にも入っているとのことです。

『ことばのおんがく』と『パレット』の間。そんな感じのタカツキ作っぽいのがいくつかありますもんね。あまり現役グループの過去のみを賛美したくはないですが、彼らの場合はあきらかにインディーズ時代の音源の方が秀逸ですし、時間よ戻れ!って思ってしまいます。

問い合わせ結果を教えていただきありがとうございます。
gogonyanta | 2009.11.03 Tue 12:19
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