武蔵大学でのKOCHITOLA HAGURETIC EMCEE'Sの
ライブが13時59分に終わり、すぐさま西武新宿線江古田駅まで猛ダッシュ。5分発の池袋行き各停に首尾良く乗れるはずだったのに、人身事故によるダイヤの乱れが行く手を阻む。ようやく来た列車に飛び乗り、池袋で有楽町線に乗り換え、一路飯田橋へ。そこから日頃のランニングの成果を今こそ発揮するときとばかりに走りに走って、自主法政祭で盛り上がる法政大学に飛び込み、中庭に作られたステージに急行。14時39分、人をかき分け、どうにかステージ正面へ。14時半開演だったので遅れを取ったかと思ったが、こちらも押していたようで、ちょうど川本真琴が姿を現したところだった。何とか間に合った。ラッキー。
【タイガーフェイクファ (川本真琴)】 14:41~15:17
タイガーフェイクファ名義でのライブとのことで、最近の活動を全く知らない身としてはバンドでの演奏になるのかなと考えていたのだけど、なんてことはない川本真琴のソロプロジェクト的な意味合いを持つ名前らしく、名義による音楽性の違いはMCを聞く限りではないようだ。
彼女のライブが見られるというので、武蔵大のneco眠るを諦め、法政大の学祭に行ったわけで、すごく楽しみだった。川本真琴といえば、1996年のデビューシングル『愛の才能』だろう。あの岡村靖幸(まだオリの中なの?)が作曲・演奏・プロデュースを手掛け、そのじゃじゃ馬のようなメロディに彼女が歌詞を書き、見事に乗りこなすという衝撃のデビュー作だった。岡村ちゃんは渡辺美里に曲を書いたりしていたので、彼の曲提供そのものが珍しかったわけではないが、本人が歌うのと同じぐらいにすばらしい躍動感に満ちた楽曲に仕上がっていて驚いた覚えがある。
その後発表されたファーストアルバムはオリコンのアルバムチャートでも1位に輝き、順調な滑り出しを見せた。その中身はといえば、岡村ちゃん印の曲は先のシングル1曲のみだったが、「やきそばパン」という今でもあのパンを見ると思い出すユニークな曲が収録されていたりと、それなりに楽しめる出来だった。その後の活動はどうにもパッとせず(本人としてはそれが望む方向性だったようなのだけど)、2001年にセカンドアルバムがリリースされるも結局手に取ることはなかった。
ただ、岡村ちゃんの曲をあれだけ歌いこなしていた彼女の才能は本物だと思ったし、今回は無料でもあり、いそいそというよりも懸命に走り、法政大の学祭に駆け込んだのだ。
ようやくライブの話。前半2曲はキーボードでの弾き語り。2曲目は矢野顕子の「SUPER FOLK SONG」をカバー。彼女の曲を歌う人はみな物真似になるのが面白い。反対に矢野が他人の曲をカバーすると、簡単に彼女色に染め上げてしまう。矢野ウイルスは強力だ。
横道に逸れた。カバーが2曲もあったからかもしれないが、商業的な意味でのポップミュージックにはもう興味がないのだなと感じた。ファーストアルバムにあった弾むようなポップさは影を潜めている。良くいえば過剰なポップ性に拘束されずに自由にやっているのだろう。が、どうにも一線を退いた印象は拭えず、10年以上聴いていなかった私に書く資格があるとも思えないけれど、何とも寂しい。
歌声には往時のかわいらしさは健在だった。しかし、高音で不安定になるときがあり、また「太陽ありがたいよう」での本人が楽しんでいるのは分かるし、意図的だとも思うのだが、風呂場で調子っぱずれに歌っているような演出はたいして面白くない。メロディの良さで聴かすのでなければ、歌唱力は必要なわけで、何とも残念だ。
3曲目の「蘇州夜曲」からはギターリストが登場し、そこからはふたりで最後まで演奏していた。親しみやすさを感じさせる率直なMCなどは面白く楽しんだが、やはりミュージシャンとしてはもう終わってしまったのだろうかという失望感は最後まで消えなかった。
1.ペンネ
2.SUPER FOLK SONG (矢野顕子のカバー)
3.蘇州夜曲 (カバー)
4.アイラブユー
5.太陽ありがたいよう
6.山羊王のテーマ
川本のライブが終わると、それまで満員だった観客スペースから人が一気に引いていく。それはもう恐ろしいほどに。やがてステージにDJブースが準備され始めると、ステージ最前列に30人ぐらいがセッティングする環ROYをじっと見上げている。まあでも、
昨年の自主法政祭での室内ステージからはその規模がランクアップしているわけで、それだけ彼の知名度も上がっているのだろう。
【環ROY】 15:28~15:57
というわけで環ロイのライブが始まる。お馴染みの「primal scream」でスタート。強気なポーズでの客いじりも毎度のことで新鮮味がない。演奏する曲が違っても変わりばえしないと感じてしまうのは、ひとりでDJも担っているからだろうか。ここで音をいじるんだろうなとかある程度予想できるということもあるが、単純にライブが面白くないのだ。
でも、ラップはうまいとは思う。NEWDEALと手を組んだ「hello!!」や「wowwow」は初めて聴いたが、ヒップホップの枠を軽く飛び出してダンスミュージックにダイビングしたトラックにもかかわらず、そのひたすら跳ねまわるビートの上でリリックが鮮明なラップを乗せてくる。その辺の怒鳴っているだけのラッパーとはひと味もふた味も違う。
ちょっとヒップホップよりの曲を、と始めたOlive Oilとの「Enjoy Pretty Bomb」は雰囲気のある曲なのに、短くて残念。「rain breaker」や「midnight breaking fishman」のゆるいトラックにも彼のラップは合うし、運動神経の良いラッパーであることは確かだ。
だからこそ、ライブを見ているときのワクワク感のなさは不思議に思える。直前にKOCHITOLA HAGURETIC EMCEE'Sの
ライブを、ちょっと前にはSTERUSSやSUIKAの
ライブを見てしまったからだろうか。コチトラハグレティックエムシーズのようにただ楽しい! というものでもないし、温かい気持ちにさせてくれるステルスのようでもない。何も心に残らないのだ。ただ器用だねと思うだけ。最近は立て続けにコラボレーション作品をリリースして意欲的な活動をしているわけで、ライブの本数も多いだろうに、何とも不可解な話だ。
1.primal scream
2.hello!!
3.wowwow
4.Enjoy Pretty Bomb
5.rain breaker
6.4heroes!
7.midnight breaking fishman
この後には赤い疑惑とDischarming manというふた組のバンドが控えていたが、どちらも知らないバンドだったし、武蔵大に戻ろうかとも思ってうだうだしていると、赤い疑惑が登場。その学生バンドのような締まらない演奏を何とはなしに聴いているうちにものすごい眠気と疲れに襲われてしまった。その上、風がいよいよ強くなり、雲行きも怪しくなってきたしで、家路につくことにした。