すばらしくてNICE CHOICE

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S.L.A.C.K.『WHALABOUT』

2009年11月18日リリースのセカンドアルバム。

まさかまさかの2枚目。2月にファーストアルバム『My Space』を出してから、たったの9ヶ月でフルサイズのアルバムを発表してきた。1枚目と同じくほとんど自作曲で占められ、客演も最小限。しかも1枚目を凌駕する傑作ときたから言葉もない。22歳と聞いたけれど、本当にすごい才能の持ち主なのだと遅まきながら確信した作品となった。

1曲目「Sin Son(in)」からいきなりドゥーワップまがいの歌もので、デビュー年に2枚もアルバムをリリースすることに懐疑の念を抱いていた愚かな耳を嘲笑う。出鼻の足払いで作り手の算段そのままによろけてしまい、聴く体勢を整えられないところに、千鳥足で歩くキーボードの下に寸詰まりのビートが並べられたM2「Walk To Back」が続く。ここでまたしてもつまずくわけだけど、S.L.A.C.K.当人はそんな足元の不安定さなど少しも意に介さず、飄々とラップしていく。巧いのかそうではないのか全くもって判然としないが、新しいことは確かだ。そんな調子でアルバムは続き、新たな音の地平を強引に見させられ、なすすべもなく、才能に圧倒されたまま聴き終える。

ともかく一聴して気づくのはビートの取っつきにくさだ。緩さが際立っていた前作とは違い、細かく切りつめられ、押し潰されたビートに最初は戸惑う。仮り組み段階といってもいいようなトラックもある。でも不思議なもので、彼のラップと同じように次第にクセになっていく。巻き貝の最奥に潜むワタが美味しく感じるのと同じだ。間違いなく中毒性がある。前作ではラップの独特な個性が目立っていたが、今作ではトラックにまでその独自性が侵食している。

リリックについては歌詞カードがないために耳で聴き取るしかないわけだけど、彼のラップはいってみれば今話題のTwitterに近い印象を抱く。その瞬間の思いを140字で呟くというお手軽なミニブログなわけだけど、その文字制限ゆえに過度な説明が省かれ、読み手には想像の余地が生まれる。あるテレビ番組では俳句的であると評価されたそうだ。

"最低限で暮らしたい 意味はない別に やりたいからやってるだけ"だったり、"酔っぱらっていたよ"、"ビッグウェーブ来たら俺はこうする 伸るか反るかならどっちでもいいよ 考えても出てこないよ"等々、いわゆる一般的なラッパーとは違い、彼のラップは弱々しいまでの呟きに満ちている。その対象となるものは前作と変わらずとても身近なものだ。スケートボード、音楽活動、彼女、クラブ。一方で、"夢が僕を放せない"という力強い自信を伺わせる言葉もあるにはあるのだけど。

そういったリリックのひとつひとつのラインは鮮度の良さと共に短くも明瞭な表現がなされる。でも、呟きが積み重なったときに、その理解が非常に困難となっていく。ひとつの曲のテーマはこれこれだと言及できるし、ラインごとの意味も汲み取れる。けれど全体で言葉の流れを精査したときに、意味が分からなくなるのだ。その欠落がおかしな深みを与えている部分であり、彼の魅力でもある。


前作で纏っていたメロウさを再び引っ張り出してきてもおそらくは成功しただろう。しかし、安易に同じことを繰り返さず、新たな音を生み出したことをまず評価したい。そして、それがことごとく成功していることに大きな驚きと同時に畏怖の念すら覚える。たった9ヶ月のスパンと22歳という若さなのだ。もし次のアルバムがまた違う音の世界を見せてくれるなら、本当にすごいことだと思うし、それを期待して待ちたい。


【追加】2010.01.18
・インタビュー
<CDJournal.com>
http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/slack/1000000365

【追加】2010.01.31
・インタビュー
<ele-king>
http://www.dommune.com/ele-king/features/interview/000058/index-2.php
2009.11.26 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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2017.03.28 Tuesday 23:59 | - | - | -
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