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MEISO『夜の盗賊』

2009年12月9日リリースのファーストアルバム。

SEEDAのアルバムの惹句にこんなものがあった。"およそ日本語ラップというものの歴史上、これほどあらかじめ「クラシック」となることが期待され、同時に、正しくそれに応えるべく制作されたアルバムがあっただろうか"。本作は、「BBOY PARK2003 MC BATTLE」に外人二十一瞑想名義で登場し、初出場ながら優勝をかっさらい、その後の場外乱闘でさらに注目を集めたMEISOによるようやくの、本当に待たされたファーストフルアルバムだ。

その年のBボーイパークのコンピレーションアルバムに「SATORU」が収録され、その後も8th Wonder関連のプロジェクトやShing02絡みの企画への参加などはあったものの、まとまった音源は2007年10月に配信されたシングル『Jitensya』を待つしかなかったわけだが、そこに収録された4曲が強力だった。一発で叩きのめされた。そしてDJ A-1のアルバムではフリースタイルを披露し、昨年今年と立て続けに出された北海道のトラックメイカーMICHITAの作品でのHisomi-TNPとの華麗なマイクリレーなど焦らされに焦らされただけあって、喜びもひとしおだ。

そんなわけで最初の引用に戻るわけだけど、どれほどの日本語ラップファンに期待されていたのかは知らないが、本作は正しく期待に応えるべく誠実に制作されたアルバムであることは確かだ。力作であり、満足している。"クラシック"であるかは歴史が決めることだ。


全18曲。時間にして64分。もう何度聴いたか分からない既発曲の「自転者」や「盤上の駒」、「理想像」、「真夏の枯葉」、それとミチタのアルバムから2曲が収められ、1年以上前からYouTube上にPVがアップされている「防衛本能」、あるいは「悟」のような古い曲もある。またMUZUNOの手によるインストが3曲もあるわけで、純粋に初めて聴くラップ曲はわずか6曲となるわけだけど、曲構成がよく練られていて、新曲が少ないという不満を全く抱かずに聴けてしまう。もちろん既発曲の完成度がとても高いということもあるのだけど。

ミチタ作品からの曲はM3「ソラニシラレヌ (Young-G Remix)」とM17「雨の根 (雨乞編) feat. Hisomi-TNP」の2曲。それぞれリミックスされ、完全に生まれ変わっている。M3はStillichimiyaのYoung-Gが手掛け、ピアノがギターに代わり、そのアコースティックギターの旋律が比喩表現の巧みなリリックに抒情的に絡まる。こちらを聴いてしまうと正直オリジナルが物足りない。

もう一方のM17は、オリジナルが3分15秒なのに対しリミックスが5分5秒と、曲の長さを比較しても明らかなようにふたりのリリックが後半に追加されている。CHIYORIのコーラスも効果的だ。アコギとベースラインが心地良くラップを引き立たせる仕上がりになっているためにMEISOとヒソミTNPのラップの巧さが際立つ。そういえばヒソミTNPは次を出さないのだろうか。

完全な新曲は基本的には配信シングル『Jitensya』で聴けたスタイルをフロウの点でも、リリックの視点においても踏襲している。鋭く社会を斬るM1「キコエルカ?」では途中で高速ラップが堪能できる。ライブで音源通りにしっかり聴き取れるレベルで再現できるのか気になるところ。

初音源化となるM2「防衛本能」は暗喩を駆使しすぎて少し意味を詰め込みすぎた感がある。かたや、友人への感謝や思い出を綴ったM14「1994」では神門的なフロウも面白いが、とても分かりやすい表現が心掛けられているのが新鮮だ。M15「パンチドランク」のように恋愛を描いても内面を巧みに隠してしまうのだから。M11「Axis Dimensions」はおそらくハワイの仲間だろう3人とのマイクリレー。ここでのMEISOは日本語でラップしていて嬉しい。

M1と同じく鋭利な言葉の切れ味に惚れ惚れするM6「不響和音」はもう1ヴァース分聴きたかった。表題曲となるM10はエフェクトを掛け不穏さを醸し出したラップをするが、伝えたいメッセージをウイットに富んだ比喩で隠しすぎるきらいがここでも顔を出している。そういった点では先に発表された4曲はとてもうまかったのだなと改めて気づかされる。既発曲が収録されている意味はそこにあるのかも。馴染みの4曲が随所に挟み込まれることで、少し疲れかけた耳をリフレッシュさせてくれるのだ。それと、1分前後の短いインストも気分転換に役立つ。

最後のM18「夜道 (Album Mix)」はシンゴ2を招いた曲で、プロデュースもシンゴ2。バックは歪曲バンドのEmi Meyerと山口元輝が参加し、生音トラックとなっている。このふたりがコラボすればすごい化学反応が起きるだろうとの期待があっただけに、あっさり終わってしまうことにがっかり感は大きい。直前のヒソミTNPとの曲の方がずっと破壊力がある。


シングルの4曲では本人がトラックメイクしていたことは衝撃だったが、今回は外部のトラックメイカーに任しているものの、その雰囲気は変わらない。言葉の選択、ひとつの言葉に持たせる意味の大きさ、その連なりが作る驚異の滑らかさ、美しくも残酷にもなれる描写力等々、MEISOのラップには誉め言葉しか出てこないのだけど、何年も待たされたとはいえファーストアルバムでのこの完成度には本当に目を見張る。今後順調に作品がリリースされ続けた数年後に本作を聴いたら、もしかしたら荒削りだったとなるのかもしれない。しかし、現時点でそんじょそこらの日本語ラップ作品と比較すると、あまりに精緻で繊細なラップに満たされた非常に高い完成度を誇るアルバムであることは間違いない。




『夜の盗賊 wenod特典CD-R』


1.不響和音 (Spacifics Version) (03"16)
  produced by The Spacifics
2.PIANO (Interlude) (03"47)
  produced by Muzono
3.DARUMA (03"49)
  produced by Meiso


【追加】2010.01.18
・インタビュー
<HMV>
http://www.hmv.co.jp/news/article/912030075/
<wenod>
http://www.wenod.com/shop/special/yorunotouzoku/yorunotouzoku.html

・プロフィール&アルバム詳細
<Mary Joy>
http://d.hatena.ne.jp/maryjoy/20091111/p1

【追加】2010.02.03
・インタビュー
<Amebreak>
http://amebreak.ameba.jp/interview/2010/02/001298.html
2009.12.17 Thursday 23:59 | 音楽 | comments(3) | trackbacks(1)
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2017.06.22 Thursday 23:59 | - | - | -
コメント
日本人より日本人らしいラップをしてますよね。皮肉なことに。
rb | 2009.12.21 Mon 01:52
誰ということもありませんが、どこぞの不自由そうに似通った日本語を並べて歌う輩より余程流暢にラップしてますよね
とか偉そうなこと言ってますけど実はまだCD届いてなかったり・・・・・
P | 2009.12.21 Mon 18:15
rb様

こんばんは。
いつもありがとうございます。

MEISOってメンタリティはどっちなんでしょうね。インタビューを読むと、日本人の母親とアメリカ人の父親との間に生まれて、高校1年生からハワイ暮らしとなると、あまり偏りがないようにも
思うんですよね。その辺を突っ込んだインタビューが読んでみたいです。



P様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

そうですよね。アルバム単位で聴いても流暢で丁寧で繊細なラップが味わえて良かったです。ヒップホップはより直接的な言葉で、はっきりと相手に感情を伝える音楽だという理屈も分かるのですけど、もう少し言葉の音楽として繰り返し楽しめるタイプがあってもいいと思ってしまいます。来月にはKaigenとのコラボアルバムが控えているようですし、本当に楽しみです。
gogonyanta | 2009.12.27 Sun 13:30
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