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haiiro de rossi『same same but different』

2010年6月16日リリースのセカンドアルバム。
/5点中

粋なジャジートラックの上で"風の中を歩く"がごとくラップする注目の若手ラッパーhaiiro de rossiの1年7ヶ月ぶりとなる2枚目のフルアルバム。これはかなりの力作。そして良盤。

前作『True Blues』の歌詞カードに掲載されたライナーノーツで、"「風の中を歩く」と称される流麗なフロー"と賞賛されていたわけだが、捉え方によっては批判ともいえる。彼のラップは流暢すぎて、その内容に踏み込む前に、言葉が右の耳から左の耳へと駆け抜けてしまう。日本語によるラップであるにもかかわらず、お洒落カフェのBGMに流しても違和感ないほどだったからだ。

しかし、本作でハイイロデロッシは自分を強く出し始める。これまでのスタイルを考えると幾分の照れ("こんな詩を書く 恥ずかし気も無く"なんてリリックも)はあるのだろうが、ハイイロというラッパーの内面がよりはっきりと出ている。神戸のラッパー・神門の曲「さてどう生きようか」を挙げ、同い年のアーティストとしてある意味ライバルであるにもかかわらず、"心底やられたんだ"、あるいは"この曲が今の心の生き場です"と絶賛の気持ちを素直に吐露したりもする。

彼らしいかっこいい表現を捨て去ったわけではない。神門が登場するそのM12「飛鳥」のフックは、"街の端 海の端 月の匂いが眉間に刺さる / 何かを得てまた何かを失う 世界に触れて心を培う"といった非常に詩情溢れるリリックだ。

ただ、面白いのは歌詞カードを見ながらじっくり聴くと、内容的には前作とそれほど大きな隔たりがあるとは思えないことだ。『True Blues』をよく聴けば、自分語りはあったし、脆さも弱さも表現してはいた。けれど、今作はそれがよりダイレクトに伝わってくる。ラップで表現するということにかなり努力したのだろう。

もうひとつ大きく変わったのがトラックだ。前作はジャジーのひと言で片付けても十分だったが、今作ではM1「Modern Tribe」からビートの活きが全く違う。丸い輪郭のリズムが躍動しているのだ。プロデュースしたのはYakkle。Shing02のリミックス作品で名前を挙げた人だが、ボーナストラックを含め他2曲で関わっていて、どの曲でも温かみのある強力なビートを提供している。

プロデューサーといえば、EeMuも声ネタの使い方がすてきなM3「Yellow Bohemian」とM12で良い仕事をしている。環ROYの新譜にも参加していたHimuro YoshiteruはM5「月光睡蓮」で弦楽器の勇壮な響きを生かしたトラックに仕上げている。非常にかっこいい。それに負けずに印象的なリリックを吐き出すハイイロの成長にも目を見張る。

DJ Old Fashionのプロデュース曲は2曲。ロックテイストのループに思わず弾んでしまうM8「Be Free」と題名通りに淫靡なジャズとなったM9「Nasty Jazz」。特にM9はハイイロの挑発的なリリックが面白い。このアルバムが本当にいいなと思うのは、あの曲のあの歌詞がいいねといった調子で、そのスリリングな楽しさをいつまでも語れそうなところだ。

もちろん生音を使った大人なジャジートラックも忘れてはいない。M13「True Blues (Album Ver.)」ではファーストアルバムでのかっこよさを甦らせている。

人柄がより伝わるようになったリリック、より力強くなったトラック、そして最後にもうひとつ良くなった点がある。アルバムの構成だ。ジャズによる統一感がなくなったことでトラックに多様性が生また。また後半には彼のラップとは趣の異なるラッパーを交えたことも功を奏している。なかでも宙チートの登場のタイミングはうまい。彼の隙のあるラップでひと息つけるからだ。M14「7days Drama」に参加しているTAKUMA The Greatというバイリンガル(なのかな?)ラッパーもいい味を出している。英語混じりのリリックなのだけど、まずもって声が良く、聴き惚れる。

巧みな構成で飽きさせないのだから、ボーナストラックなど収録せずに、シンプルに全15曲で勝負しても良かったと思う。ついでに書けば、新宿タワーレコードで購入した際に付いてきた特典CD-Rも、販促のために必要なのは理解できるが、本作の完成度の前では蛇足でしかない。


1作目から確かに新人離れしたラップをしていたし、聴けば彼だとすぐに分かる独自性があった。そのまま次の1歩を普通に踏み出しても、それがハイイロデロッシのラップスタイルだと受け入れられただろう。けれど、彼の次の踏み出しは聴き手の想像の上をいく遙かに大きなもので、かなり驚かされた。全く感じさせなかった"二年目のジンクス"だったわけだけど、次は多くのミュージシャンの行く手を阻んできた3枚目でもある。彼がどう出るのか、気が早い話ではあるけれど、今から楽しみだ。
2010.06.29 Tuesday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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2018.10.06 Saturday 23:59 | - | - | -
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