すばらしくてNICE CHOICE

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荒木経惟「センチメンタルな旅 春の旅」

つい先日Twitterで、アラーキーの愛猫チロの死を知った。しかも、チロの最期の数ヶ月を撮った写真展が今月18日まで開かれているという。慌てて南青山の「RAT HOLE GALLERY」に向かった。アラーキー自身もギャラリーで取材があったようで、ちょうど入口のところですれ違った。体調が思わしくないと聞いていたが、思ったよりも元気そうな様子で歩いていた。

アラーキー作品にはもう馴染みともいえる存在だし、最初知ったときは自分のネコでもないのに悲しみに襲われてしまった。ギャラリーでもらったチラシによれば、3月2日に22歳で他界。人間の歳に直せば105歳だという。20年前に亡くなったアラーキーの奥さん、ヨーコさんが生後4ヶ月でもらってきたのが始まりで、それから22年間アラーキーの家族となり被写体となり共に暮らしてきた大切な存在だった。

アラーキーの写真は彼の眼差しがそのまま印画紙に焼き付けられたものだ。それを見た人間はアラーキーの気持ちに感情移入してしまう。映画でいえば、『マルコヴィッチの穴』みたいなものか。写真表現は多かれ少なかれ、そういうものだとは思うけれど、アラーキーのそれは特にその力が強い。だから、写真を通してしか知らないはずのチロの死に強い悲しみを抱いてしまうのだ。

80点のモノクロ写真が部屋の3面に並ぶ。入口近くの写真では高齢ということもありチロはすでに毛並みにツヤが失われている。それでも台に飛び乗る瞬間の写真もあり、元気な様子が見られる。が、段々弱っていく。最期は毛布にくるまり、弱々しくレンズを見つめる。1枚、言葉は悪いけれど、アラーキーをうるんだ瞳で見つめる写真がとても良かった。その数枚後にはもう目をつぶっている。花に囲まれるチロ。首輪にアラーキーのキャラクターストラップを付けたチロ。硬直しているチロ。骨となるチロ。頭蓋骨。

写真家とは因果な表現者だなと思う。どんな現実でも心動かされれば切り取らずにはいられない。対象は生だけではなく、当然死もあり、悲しみと共にシャッターを切る。そうすることで心の落としどころがあるのかもしれないが、それは音楽家や画家とは違う、あまりに直接的すぎる表し方だ。アラーキーが近しい人を亡くしたときに写した作品を以前にも見たことがあるので、こうする人だとは分かってはいても、自分の愛猫が焼かれ、実験室の標本のごとく骨となった姿を写した作品を見てあらためて思った。

もうひとつの部屋では昨年11月頃からの写真がスライドで流されていた。数枚のチロの写真の後に、仕事で撮ったのだろう、女性のヌード写真が挟まれ、またチロの写真になり、続いてどこかのバーの光景が映し出される。一方は痩せ細り、もう一方では生々しい生がある。3月2日が過ぎ、お骨となり、その後しばらくの間アラーキーは空の写真を撮り続ける。実際は違うのかもしれないが、悲しみとそれを癒す物語があった。
2010.07.11 Sunday 23:59 | アート | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
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