すばらしくてNICE CHOICE

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インセプション / Inception

98点/100点満点中

クリストファー・ノーラン監督のオリジナル脚本によるレオナルド・ディカプリオ主演のSFクライム・アクション。製作費1億6000万ドル。2010年公開作品。

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他人の夢の中に潜入し、アイデアを盗み出す企業スパイがいる時代。凄腕として鳴らすコブだったが、一方で妻モルの殺害容疑で国際指名手配犯として追われる身でもあった。そのコブと相棒のアーサーに、サイトーから依頼が舞い込む。これまでのように盗み出すのではなく、ターゲットの潜在意識にあるアイデアを植え付ける"インセプション"という不可能ともされるミッションだった。コブは最高のスペシャリスト集団で立ち向かうべく、メンバー探しを開始。相棒のアーサー、"設計士"アリアドネ、"偽造士"イームス、"調合師"ユスフ、そしてサイトーを加えた6人でターゲットのロバートの夢の中に潜入するのだが・・・。
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これは面白い映画だ!上映時間は148分と長いのだけど、どのセリフも聞き逃し厳禁な上に、めくるめく驚異の映像世界の連続に覚醒され続けた2時間半となる。ノーラン監督をコッポラ、キューブリックの系譜で言及している人がいたが、それも大いに納得。斬新な映像と世界観、作家性、そして何よりもエンターテインメント性の高さに、前作『ダークナイト』以上に圧倒された。数十年後もあの映画は面白いと語られ続ける作品だと思う。

物語の大まかな流れはとても単純でよくある話だ。泥棒が難攻不落の金庫なり部屋に侵入するべく、その道に秀でた一流の犯罪者を集める。『オーシャンズ11』みたいなものだ。実際に行うとなると困難を極めそうな外側の障害は結構あっさり解決されたりする。例えば、渡辺謙演じるサイトーのライバル企業の御曹司で、今回の標的となるロバートの身柄を航空機内で押さえると決めたときに、サイトーはいとも簡単にその航空会社を買収したから大丈夫だと1行の台詞でいってのけ、済ませてしまう。省略の潔さが反対に心地良かったりするほどだ。

物語内の目標は単純でも設定がやや難しい。薬品で強制的に眠らされた人の夢の中に侵入するということで、そこから脱出するための条件だったり、罠や不具合、夢での時間の経過といった馴染みのない設定はなかなか頭に入ってこない。しかも夢には階層があり、下へ下へと潜っていき、より深い夢に植え付ける(インセプション)ようとするから複雑さが増してしまう。

ただ、今彼らがどの階層にいるのかという状況は場面が切り替わっても即座に認識できる。よって緊迫する状況を伝えるべく、視点がめまぐるしく変わっても、今彼らに何が起こっているのかギリギリ付いていける。混乱したのは雪山の場面で、メンバー全員が雪中用の白い迷彩服を着てしまったことで誰が誰か分からなくなったシーンぐらいだ。

映像は画期的だ。CGをよしとしない監督らしく、できるだけ実写での映像にこだわったようだ。パリのカフェ脇の道路の石畳が破裂していくシーンは石に似せた軽い素材を吹き飛ばし、ガラスやレンガを後からCGで加えたという。そこの場面のような爆発を初めて見たので新鮮だった。折りたたまれるパリの街並みも映画館の大きなスクリーンで見るとさらに圧巻。4車線の道路を突き進む機関車、グラスの水だけが傾く違和感、無重力になったホテルの廊下。私たちが普段見ている夢の世界も何でもありだけど、それを巧みに実現させ、違和感なくリアリティを持たせているのに圧倒された。多用される超スローモーションの映像も効果的。

視覚効果や特殊効果などの技術的な面ばかりに目を奪われがちだが、俳優陣もそれに負けていない。ここ数年のレオナルド・ディカプリオのスクリーンでの存在感はかなりのものがあるが、今回も変わらない。華があると同時に泥臭さもある。若い頃からその高い演技力を評価されている俳優だったが、『タイタニック』でケチがついてしまい、その後何度もオスカーにノミネートされるもことごとく落選してきた。近年の頑張りを見ていると、そろそろなのかなと期待してしまう。本作でも妻モルとの悲哀に満ちた絡みはどうしても軽くなりがちな心理描写の面に重みを与えていた。最後の別れなどは、『タイタニック』のそれよりもずっと悲しみを誘う演技だ。

ディカプリオ演じる主人公コブの相棒役アーサーには、『(500)日のサマー』で主演を務めたジョゼフ・ゴードン=レヴィット。オールバックで男前度を上げ、かつ気品のようなものまで漂っていて、これから先もメジャーな映画に出演していきそうだ。期待の女優エレン・ペイジはこれほどの大作でもいつもと変わらない自然な演技で良かった。レヴィットととの話の展開とは何ら関係のないキスは面白かった。ある意味で地味に徹した(いつもだけど)ペイジとは対局にゴージャスさを前面に押し出したコブの妻モルを演じたマリオン・コティヤールは苦手な部類の顔だけど、なかなかの妖艶さで魅了する。しかし、なんといってもディカプリオに負けない存在感を放っていたのは我らがケン・ワタナベだ。思っていたよりも活躍していて驚いた。

主人公モブの抱える闇とミッションの成功の行方という両輪が物語を強力に牽引し、ド派手な映像効果とアクション、さらには複雑な設定でもって包み込み、最後は焦らして終わるという、最初から最後までノーラン監督のてのひらで楽しく踊ることができる映画だった。このままいくと今年のナンバー1になると思う。
2010.08.01 Sunday 23:59 | 映画 | comments(6) | trackbacks(0)
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2017.12.14 Thursday 23:59 | - | - | -
コメント
お久しぶりです。
お暑いですね。

インセプション。私も映画館で見ました。
非常によく出来ていておもしろかった。
相方は意味が分からずで途中で寝てしまいましたが…苦笑

強いて言えば3段階目の雪山は縛りがない分、もっとド派手にやってほしかった。

ラストカットも憎いなあ。いい映画でした。

それにしてもレオナルド・ディカプリオはかっこよい。
ぽち | 2010.08.04 Wed 19:41
こんにちは。
お久しぶりです。

僕も見に行ったのですが、本当にゴゴニャンタさんの仰るとおりだと思います。こんなに面白い映画を見たのは久しぶりだったなぁ。
僕としては、仲間がもう一癖あっても良いんじゃないかなとは思いましたが(みんな良い奴過ぎる笑)。最後の終わり方も素晴らしかったし。
何より映画館に見に行って、本当に良かったと思える作品でしたね。

俳優陣に関してもまったく同感です。
ワールドオブライズを見たときも思ったのですが、ディカプリオってこんな渋かったっけ?って感じでしたね。歳をとり、見た目も演技も円熟した感じが見ていてヤバかったです。
supremekicks | 2010.08.04 Wed 20:03
いやー日本語ラップと映画の趣味が合いますね!
これからも楽しみに読ませていただきます!
MAD若旦那 | 2010.08.05 Thu 00:23
ぽち様

こんばんは。
夜は心地良い風が入ってくるので、過ごしやすいのが救いですね。お久しぶりです。

> 相方は意味が分からずで途中で寝てしまいましたが…苦笑

ああ、残念。確かに物事のひとつひとつを説明しろといわれると、ちょっと無理ですけど、状況そのものは分かりやすく描かれていて、アクションとして十分スリリングなんですけどね。

> 強いて言えば3段階目の雪山は縛りがない分、もっとド派手にやってほしかった。

『ダークナイト』ほどの予算がなかったようですし、序盤で機関車を持ち出したり、カフェを爆発させちゃったりで最後で息切れしてしまったのかもしれません。

> ラストカットも憎いなあ。いい映画でした。

一応どちらにでも取れる終わり方ですもんね。憎いです。倒れろ倒れろって念じてました。



supremekicks様

こんばんは。
コメントありがとうございます。お久しぶりですね。

> 僕としては、仲間がもう一癖あっても良いんじゃないかなとは思いましたが

そうなるともっと面白くなりそうですけど、多分もっともっと長くなって緊張感の持続が難しそうです。人物についてはある程度割り切って演出され、記号的ではありました。仕方ないのかなと思いますね。



MAD若旦那様

こんばんは。
はじめまして。

> いやー日本語ラップと映画の趣味が合いますね!

良かったです。これからも気軽にコメントいただければ嬉しいです。よろしくお願いします。
gogonyanta | 2010.08.05 Thu 02:44
ご存知かもしれませんが、ラストは子供の服がコブの記憶と一部違うので、現実だったということになるらしいです。ただこれは監督が意図したことではないようで、監督自身はどちらともとれるようにしたつもりだったんだとか・・・。人から聞いた話なのでホントかどうかはわかりませんが、現実説の方がハッピーだし、ボクは信じてます。(あ、ネタバレ禁止だったらスミマセン・・・。)
blrpn | 2010.08.05 Thu 21:00
blrpn様

こんばんは。
いつもコメントありがとうございます。

> ラストは子供の服がコブの記憶と一部違うので、
> 現実だったということになるらしいです。

気づかなかった!あまり成長してないのねと思うぐらいで、服に注目していなかったです。教えていただき感謝です。ノーラン監督なら"どちらともとれる"エンディングを選択するというのも納得できる話です。

でも、子供の服装が違うから現実であることが分かるというのも、例えば『紅の豚』のエンディングでジーナのお店に赤い飛行艇が停泊しているのが小さく写ることから、"私たちだけの秘密(賭けの結果)"が分かるのと同種の粋な種明かしですね。

ネタバレについては私がこうして見て記事をかいている作品ついては全く問題ありません。大丈夫です。
gogonyanta | 2010.08.06 Fri 02:38
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