すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
09 / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
<< S.L.A.C.K.『SWES SWES CHEAP』 | main | ZONE THE DARKNESS『THE N.E.X.T.』 >>
呂布カルマ『四次元HIP-HOP』

2010年8月18日リリースのセカンドアルバム。


前作『13 Shit』から1年半で早くも2枚目となる名古屋のソロラッパー・呂布カルマ。2010年はトラックメイカー・鷹の目と立ち上げたレーベルJET CITY PEOPLEから、矢継ぎ早に無料ダウンロード曲の配信があり、またレーベルコンピのリリースと精力的に動いていた印象がある。

彼の1枚目はとにかく噛みついていた。ポップなヒップホップだけではなく、名指しこそなかったものの弱虫MCからハスラーラップまで、名古屋といえども日本語ラップ人口を考えればそれほど大きい街とはいえないわけで、不遜な言動は身に危険を及ぼさないのかと他人事ながら心配になる。しかも、相棒の鷹の目もまたそのトラック同様にTwitterでの呟きが辛辣で、なかなか刺激的なふたり組でもある。

呂布カルマのラップスタイルはさんピンCAMP世代の延長にある。悪ぶりながら我こそ一番との見栄をかっこよく切ってみせる古き良きMCのスタイルは、分かりやすい共通の仮想敵がいた90年代は成功できたが、一度持ち上げられたら最後、バブル後にその姿勢を保ち続けられるラッパーは激減した。新たなラッパー像を生み出せなかった彼らは見事なまでに迷走していった。決定的だったのは歩んできた人生の浮き沈みを率直に語るSEEDAたちの登場だ。

2010年代に入り、一時隆盛を誇ったそのハスラーラップも当事者が塀の中暮らしを嗜む事態となり、現在は下火だ。今はビートへの言葉の乗せ方に美意識を見出すスタイルが主流となりつつあり、リリックも健全なものに変わりつつある。

そこで、呂布カルマだ。絆創膏だらけの人生という強力な後ろ盾なしに、言葉のみで相手を挑発するスタイルは、"リアル"を基準に評価しがちなヒップホップというジャンルにおいて一段劣る印象を持たれるが、彼の言葉は押韻の固さとそのとことんまで研磨した切っ先で、相手を容赦なく袈裟懸けにする。"リアル"とはひどく抽象的なものであり、ヒップホップエリートな人生がなくても、ラップされる言葉に強度があれば、そこに"リアル"が宿ってしまう。もちろんそのためには韻やフロウといった補強は必要だが、呂布カルマはその技術も持ち合わせている。

本作の彼は早くも風格すらまとい始めている。鷹の目を始めとする提供されたトラックは一様にエッジの立ったブレイクビーツであり、その荒波の上を彼は易々と進み、余裕綽々だ。客演は前作に引き続き身内から選ばれているが、1枚目以上に気合いの入ったヴァースが吹き込まれている。M3「ショットガン・ジャブ」に参加している現場叩き上げのTOSHIやTYRANTのYUKSTA-ILL、M7「JET CITYの週末」でのCROSS BORN VANGUARDのふたり、M12「呪詞」ではPsychedelic OrchestraからZOOとBB9のB-eatが加わり、それぞれが主役に負けない確かな爪痕を刻んだ。

日本語ラップの面白さは英語と違って理解しやすい日本語のリリックによるところが大きい。ダンスミュージックとしての要素はフロウや韻に託され体が自然と反応し、かたや言葉は頭で理解し、そんな表現があるのかという驚きや痛快さを覚える喜びがある。ありがちなヒップホップ・イディオムに囚われていてはいつまでたっても到達できない高みに彼は悪態をつきながら、あるいはガンジャでぶっ飛びながら歩を進め、同時にふざけた同業者をいたぶりつつ、聴き手をもてなすことを忘れない。

彼を評価する声をあまり聞かないのが本当に不思議だ。東京でライブをしないからなのか分からないが、もっと支持されてもおかしくないラッパーだと思う。コンスタントに発表されている無料配信曲の状況からも、レーベルに勢いがあるし、"鉄板の2nd"に続く伝説のサードを間を置かずに聴けるかもしれない。楽しみだ。
2011.02.14 Monday 23:58 | 音楽 | comments(3) | trackbacks(0)
スポンサーサイト
2020.09.09 Wednesday 23:58 | - | - | -
コメント
マールカイキの時はどうも

僕はかなり昔から現場に足を運ぶリスナーなんですが
今の若い子達はほとんど言葉で日本語ラップを聞かないんじゃないかと前々から思ってます
特にカルマ氏がいる方の現場では

ともかく騒がないんですよね
ライブのコール&レスポンスの時と曲間のMCでぽい事発言した時だけ声を上げるというか

曲ではフローも韻も分かりやすい物だけに声を上げ
テクニカルな箇所素通りな方が多いような

分かりやすく伝えるのは一つのスキルですが
私は最近それしか重視されてないような雰囲気を感じ取ります

で後は言葉のスムースさの中を首振るだけ
DJがどんな選曲をしても反応なし
首を振り続けるみたいな

まぁそうなれば評価される層を変えたらいいだけの話なんですが
カルマ氏が受けるトコってドコなんでしょうね
術の穴の周りかなと漠然と思ったりしてるんですが
. | 2011.03.04 Fri 12:51
こんばんは
以前コメントさせて頂きましたtmexです。

私も名古屋在住ということもあり、呂布カルマ応援しております。東海地区にも様々なラッパーがいる中で、gogonyantaさんの解説の中に出てきていますTYRANTのYUKSTA-ILL非常に引き付けられるます。ライブ等でも何度か拝見しましたが、この動画も純粋に「カッコイイ」と感じました。

http://www.youtube.com/watch?v=LKLlhL3vX28

「言葉」を楽しむラップとは違いますが、とてもリズミカルで聞き入りやすいこのようなラップはgogonyantaさんはどう感じ、どのように表現しますか?
tmex | 2011.03.10 Thu 23:18
. 様

こんにちは。
お返事が遅れてすみません。

> ともかく騒がないんですよね
> ライブのコール&レスポンスの時と曲間のMCでぽい事発言した時だけ声を上げるというか
> DJがどんな選曲をしても反応なし 首を振り続けるみたいな

今の若者ではないですし、ライブにもあまり足を運ばない人間ですが、私自身ハコの後ろで腕組んでじっと見ているタイプです。だから、. さんがおっしゃることにうなずくわけにはいかない立場(?)にあるわけですが、まあひとそれぞれの楽しみ方があっていいのかなとは思います。

SEEDA以降、フロウを強く意識したラッパーが出てきてから、日本のヒップホップは本当の意味でダンスミュージックになってきたなとは思っています。フロウを重視するあまりにリリックがないがしろにされているという意見も耳にしますが、私はあまりそうは思わないんですよね。

呂布カルマのような昔ながらのスタイルを貫き、言葉の強度を鋭くするラッパーもいますし、S.L.A.C.K.のように耳に心地良いフロウを繰り出しながらも同時にパンチラインをひねり込ませるラッパーもいます。

. さんが"テクニカル"という言葉をどういう意味で書いたのか分かりません。ただ、例えば、K DUB SHINEの「大掃除」のヴァースが巧いといっても、私にはあまりに響かないんです。それよりももっと直接的なパンチラインを求めてしまいます。MCバトルで育った世代はそれが会得できていますし、そう意味では日本語ラップは10年前より、リアルタイムで聴いたわけではないですけど、15年前よりも今こそが刺激的だと思っています。

あと、K DUB SHINEの上で挙げたスキルは完全否定するものではないですし、そうした表現があってもいいと思います。やっぱりそこもひとそれぞれ自分の得意な部分を伸ばせばいいわけですし。



tmex様

こんにちは。
コメントありがとうございます。

> TYRANTのYUKSTA-ILL非常に引き付けられるます。
> ライブ等でも何度か拝見しましたが、この動画も純粋に「カッコイイ」と感じました。

YUKSTA-ILLはライブもいいんですか!いいですね。見てみたいです。昨年だったか2009年だったかのミニアルバム『ADDICTIONARY』はwenodで買って、ちょくちょく聴いています。かっこいいですよね。名古屋といえば、確かdekishiもそうだったはずですが、彼も気に入っています。名古屋はホントに音が多様性に富んでいて面白い街だと思います。
gogonyanta | 2011.03.19 Sat 18:07
コメントする











この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック
Profile
Search This Site
Category
New Entries
Comment


Archives

今日も愚痴り中