すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
本・音楽・漫画・映画の
勝手な感想を書いていきます。
08 / 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
<< 復讐者に憐れみを / 복수는 나의 것 | main | 親切なクムジャさん / 친절한 금자씨 >>
冷たい熱帯魚

81点/100点満点中

埼玉愛犬家連続殺人事件(1993年)を基にした園子温監督のスプラッタスリラー(間違ってないはず。アメリカではスプラッタ映画として公開されるらしい)。2011年公開作品。

************************************
2009年1月14日。小さな熱帯魚屋を経営する社本信行とその妻・妙子は、万引で捕まった娘・美津子を引き取りに行ったスーパーで、激高する店長を取りなす村田幸雄と知り合う。村田も熱帯魚屋のオーナーであり、美津子を自分の店で預かってもいいと提案、継母である妙子との不仲に頭を痛めていた社本は、その申し出を受入れる。さらに村田は高級熱帯魚の繁殖という儲け話にも社本を誘う。口の上手さと押しの強さに、社本はいつの間にか村田のペースに呑み込まれていく。
************************************

評判通りに今回も園子温はすごかった。見終えた後に言葉が出ない。『愛のむきだし』よりは上映時間が短い(それでも146分)ために、すっきりとした作品にはなっているが、暴力の連鎖が倍々ゲームで加速され、壮絶なスプラッタ修羅場と断ち切れない鎖の末端に囚われたままの人間が吐き出す悲しくも壮絶な言葉("やっと死にやがった")の前に立ちすくんでしまった。

私が偶然見に行ったテアトル新宿では楽日の1日前ということで、主な出演陣と園監督、共同脚本の高橋ヨシキによる舞台挨拶が上映後に行われ、かなり面白いエピソードが披露されたこともあり、どよ〜んとした気分が吹き飛んだのは幸いだった。

しかし、でんでんというおそらくこれまでも見てはいるのだろうけれど、ひとりの役者として初めてはっきりと認識できた彼の押し出しの強い演技は圧巻だった。その妻・村田愛子役だった黒沢あすかと共に豹変スイッチの入りがすばやく、またその牙を引っ込めるのも敏速で、作品の流れは完全に彼が演じる村田幸雄が握っていた。

暴力衝動というとても単純明快で、一度それに身を委ねると快感すら得られる強い感情は簡単に人にうつる。幼少期に身近にあれば、父から子への伝播はたやすい(そういえば、本作にはこの衝動に双子のごとく必ずくっついてくるアルコールがなかった)。一方、被害者ともいえる、吹越満演じる社本信行は、おどおどとした外見通りに人畜無害の仮面をかぶり続けるが、村田との強固な結びつき(擬似的な親子関係)を通し、突如変貌し、彼がというよりも、人間が普段は理性で覆い隠している醜悪な負の顔をこれでもかと暴いてみせ、物語を有終の美に繋げる。

『愛のむきだし』は、整理されていない作り手の感情のマグマを方々で噴出させる作品であり、その爆発力に驚かされたが、本作ではより分かりやすい物語になったことで、園監督のたぎった土石流には翻弄されなかったものの、キャラクターたちの感情のはじけ方は相変わらずすごいものがあり、楽しめた。


上映終了後の舞台挨拶には、園監督や高橋を始め、吹越、でんでん、黒沢、社本の妻・妙子役の神楽坂恵、社本の娘・美津子を演じた梶原ひかりらが登場。順番に感謝の言葉が述べられた後、観客からの質問コーナーに移った。最初に出た質問、"印象に残っているシーンは?"への答えが面白かったので、箇条書きにする。

吹越満(社本信行役)
撮影初日から殺害の手伝いを強制された翌朝にビールを流し込む場面で、まだどんな映画になるかも分からないまま朝7時に撮った。

神楽坂恵(社本妙子役)
終盤、娘が気絶してる脇で夫婦が抱き合うシーン。その撮り自体は早朝だったが、本当は前日の朝早くから撮影していたため丸一日続いた疲れから、最後の寝てるシーンで一瞬の睡魔に襲われてしまった。次に目を開けたらまだ撮影が続いていて、慌てて目をつむったがもう遅く、NGを出した。

梶原ひかり(社本美津子役)
撮影初日は、社本に振り回され彼氏の車に激突する場面。本気で押されたために鼻血が出たが、初日ということもありテンションが高く、カメラを止めてはいけないと自分で拭って、撮影を続けた。けれど、内心は鼻が痛いし、帰りたいと思ってもいた。また、撮影序盤は監督からのダメ出しが多く、"暗黒のクリスマス"を送った。

でんでん(村田幸雄役)
社本の妻・妙子との濡れ場で胸を揉みしだくシーン。神楽坂恵が何度もNGを出したので役得だったと役になりきった表現で会場を笑わせていた(地かもしれないけど)。フォローした監督いわく、神楽坂の演技に問題があったということではなく、ワンテイクで撮りたかったので数パターンか試し、でも結局最初のテイクを採用することになった。

黒沢あすか(村田愛子役)
三児の母親で、体型のことを考えると役をもらえるか不安だったが、役を得られた上に弁護士・筒井とのセックスシーンで、自分では難があると思っていた体型をカメラ位置を工夫し美しく撮ってくれたので、あのベッドシーンがお気に入りとのこと。続けて、撮影当日に監督から、"バック・騎乗位・正常位で"とリズムだけは良いが、その実あいまいな指示があっただけで、具体的にどうすれば良いのかと説明を求めると、いつもやってる通りでいいよとつれない答えが返ってくるだけで、仕方なく筒井役の渡辺哲と頑張ったとのこと。役者も大変だ。

高橋ヨシキ(共同脚本)
村田幸雄が社本にそのうちお前ひとりでやらなければいけないんだぞという、おぞましい解体シーン。繰り返し見れば見るほど笑えるとのこと。骨に醤油をかけて燃やしたのは、ベースとなった愛犬家連続殺人事件の供述に基づく。市街地で燃やしたため、臭いを考え、香ばしくなるよう醤油をかけた。

園子温(監督)
村田幸雄の勝新太郎、あるいは風呂場での脱腸がどうのという思わず笑ってしまう会話や鼻歌は俳優のアドリブであり、かなり助けられたとのこと。後半に時計がデシタル表記になる意味を問われると、ウィリアム・フリードキンの『L.A.大捜査線/狼たちの街』を若い時に見てかっこいいと思った演出であり、いつか自分の作品でもと考えていただけで、深い意味はないと答えていた。


45分ほどで舞台挨拶は終わり、最後には出口で監督・俳優が並び、ひとりずつ握手して見送られた。映画はできるだけ劇場で見ようとはしているけれど、舞台挨拶は初めてだった。結構面白いものだね。内容が内容だっただけに、弾む感じで劇場の外に出られたのは本当に良かった。
2011.03.30 Wednesday 23:58 | 映画 | comments(2) | trackbacks(1)
スポンサーサイト
2020.08.05 Wednesday 23:58 | - | - | -
コメント
こんばんワニ!
地震大丈夫でした?

冷たい熱帯魚良いですね!!!!!
この内容で、スター不在(しかも主役でんでん!)なのに
テアトルが立ち見が出るほどの満員でびっくりしました
映画秘宝効果なんですかね?
(たしかこの月の号が紀伊国屋で売り切れだったので)

僕は最初はでんでんの演技がクサすぎるなと思い
ちょっと嫌だたんですが、見てるうちに
あれ?リアルなキチ&#9825;イのおっさんって
こんな感じだったぞ!って
あのハイテンションにも納得いって楽しめました

僕はカルト臭が強くて、感動もできた「愛のむきだし」の方が
好きでしたが、
この映画のOPタイトルのかっこよさには痺れました
OPだけで傑作だと思います
あとは、愛のむきだしのゆら帝みたく
印象に残るテーマソングがあったらなぁと思いました
かまってちゃんとかでも良さそうだったのになぁ

あと
すごいタイミングでヒルズハブアイズ2の記事書きましたね!

地震のあった当日の人々が群れて帰る様子は
不謹慎ですが
みんなショッピングモールを目指してんじゃないか?と疑うほど
ほんとゾンビ映画に出てきそうな終末観漂ってて怖かったです

今後リアルなヒルズハブアイズが日本で展開されないことを
祈るばかりです

最近観たんでは、シアターN渋谷でやってる
韓国映画のビーデビルが良かったです
DVDは「ぼくのエリ200歳の少女」です。
構成の素晴らしさに殺られました

あとは、志人の音源が色々聴けて嬉しいですね〜

では、お互いこの時代をsurviveして行きましょう
what's? | 2011.04.13 Wed 23:27
what's? 様

こんにちワン。
毎度のことですが、遅れてすみませんりの道も一歩から。あのCM、かなり好きです。グレートうさぎバージョンをご覧になりましたか?ツボです。

ヴァイオレンス度は別にして、でんでんが怪演した村田幸雄の、ああいう押しの強さって小さいながらも一国一城の自負が強い社長さんに多くないですか?昔のいやぁ〜な思い出がフラッシュバックしてげんなりしつつも、楽しんだのですが。。。

> 僕はカルト臭が強くて、感動もできた「愛のむきだし」の方が好きでした

分かります。『愛の無機だし』の方が整理されない感情がそのまま詰め込まれていて、色々考えながら見ることができるという懐の深さみたいなものを感じました。

> すごいタイミングでヒルズハブアイズ2の記事書きましたね!

あんまり深く考えずにアップしてました。最近会員になったレンタル屋にあった(TSUTAYAは自主規制らしいです)ので、嬉しくなって速攻で借りたのですが、まあ内容は時期的にちょっと好ましくない感じですね。早く次の記事をアップしなきゃとも思ったんですけど、ずるずるとなっちゃいました。まあ、変なクレームが付かなくて良かったです。

> 最近観たんでは、シアターN渋谷でやってる韓国映画のビーデビルが良かったです

気になってはいたので、コメントがあってからすぐに重い腰を上げて行きました!良かったです!『チェイス』も『息もできない』もそうですが、向こうの新人監督はレベル高いですね。韓国、香港の良さ気な暴力映画が続けて公開されるようなので楽しみが続きます。

> DVDは「ぼくのエリ200歳の少女」です。

評判いいですよね。見るつもりです。

> 志人の音源が色々聴けて嬉しいですね〜

震災関連とはいえ、太っ腹ですよね。先日の高田馬場でのTemple ATS名義で行ったイベントにも行ったのですが、楽しめました。なのるなもないはちょっとアレでしたけど、志人は調子良さそうでした。ブログでの報告記事に曲名が入っていたのにも驚きました。今の調子でそろそろサードアルバムにまとめて欲しいものです。

頑張っていれば、降神の新しいのを聴ける日もきっと来るでしょう。生き抜きましょう!
gogonyanta | 2011.05.08 Sun 15:03
コメントする











この記事のトラックバックURL
トラックバック機能は終了しました。
トラックバック
-
管理者の承認待ちトラックバックです。
- | 2011.04.18 Mon 02:22
Profile
Search This Site
Category
New Entries
Comment


Archives

今日も愚痴り中