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ツリー・オブ・ライフ / The Tree of Life

78点/100点満点中

2005年の『ニュー・ワールド』以来となるテレンス・マリック監督の最新作。本年度のカンヌ国際映画祭最高賞のパルムドールを受賞。人間ドラマ。主演はショーン・ペンとブラッド・ピット。製作費3200万ドル。2011年公開作品。

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成功した実業家ジャック・オブライエンは人生の岐路に立ち、自らの少年時代に思いをはせる。1950年代半ばのテキサスの小さな町に暮らすオブライエン一家。厳格な父は成功のためには力が必要だと、長男のジャックを始め3人の息子に理不尽なまでに厳しい態度で教え込む。一方、母親は子供たちを優しい愛で包み込むのだった。
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監督のテレンス・マリックは1973年の監督デビューからこれまでわずか5作と作品数が少ないにもかかわらず、本作のカンヌ・パルム・ドールを始め、同じカンヌで監督賞、ベルリン国際映画祭金熊賞と高い評価を得ている。劇場で見た彼の作品は金熊賞を受賞した『シン・レッド・ライン』だけだったが、今でもその時の感動を鮮やかに思い出せる。太平洋上の孤島で行われた日米の兵士による生々しい肉弾戦とそんなことは我関せずで静かに風に揺れる緑の原っぱ。戦争の愚かさだけが際立ち、カメラワークが本当に素晴らしかった。

その彼が、再びカンヌで輝きを放ったというのだから、しかも主演のひとりはブラッド・ピットだ、絶対に見たいと思った。しかし事前に耳に入ってくる評価は芳しくなく、どうやら体調を整えて見に行った方が良いとのこと。前日にしっかり睡眠を取り、新宿は歌舞伎町にある日本でも最大規模のスクリーンを擁するミラノ1番館に向かった(2週目だったけど、観客は数えるほど・・・)。


なるほど。難解だ。監督は前半で地球誕生からの生命の進化、まさに生命の樹(ツリー・オブ・ライフ)を映像化してしまおうと意気込む。それと同時に、現代と1950年代に暮らすアメリカ人5人家族の物語をクロスカッティングさせ、さらには芸術性の高いショットを放り込むものだから、順序立てて理解するというよりも、感覚で膨大なイメージを受け取ることになる。

次男を19歳でうしなう悲しみ、数十年後にショーン・ペン演じる長男ジャックが直面する様々な想い、経済的にまだ余裕があった頃のエピソード。そういった分かりやすいはずの家族ドラマも時系列がシャッフルされるものだから、隣から気持ちよさそうな寝息が聞こえてきたのもむべなるかなとは思う。

ただ、父と息子の葛藤、特に思春期に入り自分でも心の制御ができず、傷つけたくないのに思わず辛く当たってしまう長男とその父という家族ドラマは見応えがある。少しでも幸せになって欲しいと礼儀作法やより実践的な人生訓を息子に授けようとする父。それに比べるとやや理想的ではあるものの、子供の幸福を願うという意味では同等の気持ちを抱き、慈しみ育てる母親。どこにでもある話とはいえるが、とても大切な成長の過程を繊細に描いている。

しかし、やはり無理があるなと思うのは、俳優たちの熱演が繰り広げられているところに、地球創世の物語からユカタン半島に隕石が落ちるまでの進化の流れ、さらにはキリスト教への献身的な祈りも加わるものだから、イメージの氾濫が本当に大変なことになっていることだ。単細胞生物から多細胞への進化、恐竜の誕生から滅亡まで進むので、その先には人類の誕生と神の獲得の物語もあるのかなと思いきや、ユカタンで止まってしまうことには、不思議な旅が突然断絶された気分にもなる。

本作は詩だ。詩は抽象度の高い表現であり、受け手にも作品への積極的な介入を必要とする。また相性もかなり重要だ。ふいに挟み込まれるイメージ映像に託された監督の想いを観客がどう取り込み、どう組み立てるのか。私は家族ドラマを中心に見ていたこともあり、かなり楽しめた。流れていくイメージの断片も完全には理解できずともその映像美、特に人物を映し出す時の自然光の取り入れ方には魅了された。

カンヌ映画祭が選出する映画は私には理解できないことが多いが、本作は納得できたし、何より最高賞に選んだのだ。英断だと思う。やはり信頼すべき映画祭なのだろう。
2011.08.28 Sunday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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