すばらしくてNICE CHOICE

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SMRYTRPS『Orange Voyagers』

2011年9月9日リリースの5枚目のアルバム。
/5点中

SMRYTRPSが完全復活だ。2006年の前作『BEATNIKS』以降、ダークフォースに囚われゆるゆると暗黒面へ堕ちて行った彼らだったが、その後の数枚のシングルと2009年末から翌年初頭にかけて、童子-Tすらも"オッ好敵手現る"と勘違いしてしまいそうになるほどの極甘シングルを配信のみで3ヶ月連続リリースしたことで禊を済ませた(『ダイアリー 〜愛を誓う日〜』は1000万ダウンロードを記録したそうだ)のか、5年ぶりとなる本作にはTakatsuki主宰のインディーズレーベルnrecordsのロゴのみが刻印されている。ケツメイシで甘い汁をすすり勘違いしたTOY'S FACTORYやその傘下のKimiの焼印は見当たらない。

その間にメテオとY.O.Gが去り、Semmyが復活し、新たにトラックメイカー兼ライブDJとしてDJ TKYMが加わった。現在の固定メンバーは3代目リーダーのZomを始めタカツキ、Zoe、セミー(クレジットでは"Ytory 元セミー"と表記されているが、ブログなどではセミーのまま)の4MCに、DJ TKYMの1DJとなる。
シンプルにやりたいのさ 自分らしく自分らしく
もっと信じてやりたいのさ 感じたことを自分らしく
ラップ曲としてはオープニングにあたるM2「アレレ」のフックで歌われるのは彼ららしいゆるい決意だ。自らレーベルを立ち上げ、DIY精神でもって良質なヒップホップミュージックを奏でていたはずのサムライトループスがいつの間にか脇道に逸れ、自由だったはずの音楽が商品となり、流行の金太郎飴アレンジの導入を余儀なくされ、持ち前の快活さを霧散させた。それでもメジャーという土俵に自分たちの色を少しでも加えることでわずかばかりの抵抗を試みてはいたわけだが、やはり本作の帯の文句にあるように、2006年からの数年はまさに"道草食いすぎた"という表現が適切なのだろう。

だからこそ基本に戻った彼らは自分たちの良さを生かせる音と言葉を取り戻し、心の底から好きな音の上で何にも束縛されない言葉を紡ぎ出すことにしたのだ。自分たちの道を行くという断定口調ではなく、願望になっているのもらしいといえばらしい。
「まあいいよ」、「どうだっていいさ」
うそぶいて それでも探してたんだ
風が吹くなら 小さくても帆を広げて 乗りこなそう
ここにあるすべてのもの、全部つれて行こう。
M9「風に吹くなら」
しかし、道草を全否定はしていない。その過程で得たものも大きいに違いない。本作にはメジャー期のような間口の広いM10「虹が見えたんだ」なども収録されている。トイズファクトリー時代を糧として歩みを進めているのだ。だからこそアルバムに広がりが生まれている。チャート向けといってもいいほどポップな曲調がある一方で、セサミストリートをネタにしたM6「マナマナ」にはかつてのサムライトループスらしいユニークさがある。元々はタカツキがSUIKAかサムライトループス用に制作したトラックだったが、しばらくお蔵になっていたので、昨年ソロ曲として無料配信されたものだ。ここでは短いながらもマイクリレー曲に生まれ変わっている。

また、メジャーの時でもあまり変化せず、いつでも個人的な体験をラップし続けたゾエが幼い息子とふたりで過ごす休日を描いたM5「かんかんかん」は、ソロながらも本作の目玉のひとつといってしまっても良いほど素晴らしい。そのM5と同じくタカツキがトラックを手掛けたM13「レッツカモンジョイナスダイナマイトピッツァパーティー2011」は長い題名通りに真っ当なパーティラップな仕上がりで、少し意外な印象もあるが、リリックにはスチャダラパーを始め日本語ラップのキーワードがちりばめられていて楽しい曲だ。

全14曲中ラップ曲は8曲。そのうちDJ TKYMトラックが3曲、タカツキ3曲、Y.O.G.2曲といった具合。本作から参加したDJ TKYMの音はジャジーな香りを漂わせつつ温もりもあり、アングラヒップホップの基本に忠実だ。タカツキと陽気なY.O.G.とのちょうど中間ぐらいの明るさがあり、バランスも良い。それと何よりアルバム全体で低音が太く、最近の日本のヒップホップで不満を覚えるその点が解消されているのが嬉しい。

セカンドアルバム『ことばのおんがく』から次作『パレット』の間に企画されたものの、お蔵入りとなった音源を救出し、手直しを加えて2009年にリリースしたミックスアルバム『WORD IS BROWN pt.2』で効果的に取り入れていたインタールードが本作でも積極的に導入されている。4人もいると1曲1曲が重たくなる傾向にあるが、短いインストを差し挟むことで緩急ができ、聴きやすさが増しているのだ。

道草を経たことで得た広い視点だったり、かつてのインディーズ時代を思い起こさせる切り口の新しさ、あるいはセミーの正統派フロウの心地良さだったり、鋭さと温かさが同居するゾエやSUIKAやソロ作とは違いリラックスした雰囲気を漂わせるタカツキ、歌に磨きをかけてきたゾムといったキャラ立ちの良いマイクリレーを単純に楽しめるという点でもサムライトループスは本当の意味で復活したといえる。来月には本作と対をなすフルアルバム『Purple Gigant』が早くもリリースされるわけで、楽しみはまだまだ続く。




nレコーズの配信サイト・西陣クラフトで事前予約し購入すると付いてきた特典CD-R。

<mp3ファイル: M1だけ80kbps。他は160kbps>
1.Ride on fat (Ritual_Training) (3"01)
2.Hail and done (Ritual_Training) (3"07)
3.黒猫は眠らない (Ritual_Training) (6"07)
4.Dekinai_Otoko (remix) (4"07)
5.NO MONEY (2"54)
6.STREAM95 (5"16)
7.Snooze Days (4"15)

<動画ファイル>
・「かんかんかん」PV
・「マナマナ」PV
・「虹が見えたんだ」PV

mp3ファイルのうちM1からM3まではレコーディングセッションでざらついた音質。M1は次の『Purple Gigant』に収録される曲で、本作の最後の「(SMRY 4U) departure」でも少し聴ける。M2は題名の"Hail and done"を"昼行燈"と読ませる。セミ―から始まり、タカツキ、フックを挟みゾエに繋ぐ。完成版を聴きたい。M3はTakatsuki Bandでの音源。フル尺。

M4はサードアルバムに入っていた「できるオトコ」の自家製返歌なのかな。ギターの裏打ちループの上でゾエ、メテオ、Y.O.G.の順で進む。フックはY.O.G.。メテオはアルコールでの失敗をラップしている。ゾエが2008年に立ち上げたプロジェクトHIPHOP'Sで出した『V.I.P. Cruising STILL DO-UPPIN'』に収録されていたのがM5。ゾエのヴァースの鋭い入りが文句なしにかっこいい。ゾエ→Y.O.G.→セミーとなる。

M6では珍しくブリッとしたデジタル音が目立つトラックで、Y.O.G.、ゾエ、ゾム、タカツキの順でラップしていく。いまいち華が足りず、このような形で発表になるのも頷ける。ピアノループが印象的なM7はミックスアルバム『WORD IS BROWN pt.2』に当たり的な感覚でボーナストラックとして収録されていた楽曲。私は外れたので今回初めて聴けた。ゾエ、メテオ、タカツキ、Y.O.Gのヴァースがあり、フックはゾム。

しっかりレコーディングされている後半の4曲のうちM6だけは初出が不明だったけれど、他が何かしらの形で表に出ている中でこの曲だけが未発表とも思えないので、どこかですでに音源化されているかもしれない。



<HMV ON LINEの恒例企画>
・無人島 〜俺の10枚〜【ZOM編】【Takatsuki編】【Zoe編】【Semmy編】【DJ TKYM編
ゾムの10枚はかなり意外。そういった嗜好があるとは汲み取れず興味深い。タカツキのはブログを読んでることもあり、どれも納得。フィッシュマンズ!桂米朝!ゾエがメテオのセカンドアルバムを選び、セミーが『BEATNIKS』をピックアップしているのは感慨深い。
2011.11.04 Friday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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2020.09.09 Wednesday 23:59 | - | - | -
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