すばらしくてNICE CHOICE

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松本敏将(tobaccojuice)@世田谷ものづくり学校GO SLOW ゆっくりとカフェ
昨年夏に活動を休止したtobaccojuiceのボーカル松本敏将による東京では初となる弾き語りワンマンライブ「ふさふさナイト☆」に行ってきた。場所はかつて中学校だった校舎を再利用した世田谷ものづくり学校内にあるカフェ「GO SLOWゆっくりとカフェ」。入口をくぐり、左の端となる107号室だ。以前は保健室だったらしい。10数人分の椅子が用意され、50人も入るといっぱいになりそうな店だ。ステージの真向かいにキッチンがある。


【第1部】 19:38〜20:25

開始予定時刻を少し過ぎてから、アコースティックギターを片手に現れた松本は、"振る舞い酒なんで"と白ワインの瓶を掲げてみせる。ギターのチューニングを丁寧にした後に、さっ始めるかと顔を挙げた瞬間にタイミング悪く(あるいは良く)、振る舞い酒欲しい方はいって下さいとのスタッフの声がして、場がいい感じにほぐれていく。

祈りにも似た不思議な旋律の短い曲「Lugu Lugu Kan Ibi」で幕を開ける。台湾の原住民族ブヌン族の民謡だという。続いてタバコジュースがリリースしたカバーアルバムに収録されていた「ダニー・ボーイ」。歌う前にはメロディの歴史を紐解くMCがあった。オリジナルですと告げ、"恋をしてしまった"という歌い出しの「ゆうやけほろほろ」が始まる。"ああ無様だ 人間という動物さ ああ会いたいな ゆうやけほろほろ"とやや大上段に構えながらも恋に落ちる心模様が抒情的に歌われる。

私生活での時の移り変わりに想いを馳せるMC後に始めた、引っ越しの歌「ガタガタ」はディレイをかけたカズ―を吹き鳴らして終わる。仲間が集う吉祥寺の行きつけの飲み屋を歌った「NHRB(ネオハチハウス・ロイヤルビアガーデン)」では"妖怪の絵を描いた缶ビールで乾杯をする"との歌詞が心に残る。確かに麒麟は妖怪だ。トーキングブルーズのように歌われる「バティークータのプリズムレディオ」はぜひともバンドでやって欲しいと思うようなかっこ良さで、次第に熱を帯び、やがてアジ演説のようになったかと思えば次の瞬間には穏やかな歌になっているという静と動の躍動感に満ちている。

「メキシコ」は高音の歌声が優しく降り注ぎ、歌詞もかわいらしく素敵だ。第1部の締めはタバコジュースのサードアルバムに入っている「ヘッドフォンゴースト」。いつ聴いても何度聴いても胸が締め付けられる歌だ。


20分ほどの休憩時間。


【第2部】 20:45〜21:45
2部は「レッツダンス」という曲をソロで歌い上げた後、セッションタイムに突入。

ひとり目のゲストは若手ロックバンドandymoriのギターボーカル小山田壮平。

彼が来るまでみんなで歌おうかと「オー・シャンゼリゼ」の前奏を松本が鳴らし始めたところに小山田が登場。楽曲自体は好きだけど、歌詞を覚えていないと告げる小山田だが、大丈夫大丈夫Aメロは歌うからサビ歌ってねと松本は意に介さず、この歌詞がホントに好きでねといいながら始めてしまう。そんな松本は歌のピークで、"あ、歌詞間違えた"と曲を止めていたけれど、実に楽しそうに歌うものだから客席もつられて一緒に口ずさむ。

よく聴いているアンディモリの曲で、好きな1曲なんだと松本は小山田に語りかけ、彼も気を良くしたところに、"YouTubeでだけど"と同じミュージシャン仲間にずいぶんなぶっちゃっけをして小山田の顔を微妙に固まらせてから、事前のリハーサルもなしにいきなり始まったのが、昨年リリースされたアンディモリのサードアルバム『革命』に収録の「投げKISSをあげるよ」。

最後の1曲はBen E. Kingの「Stand By Me」のカバー。映画の主題歌にもなり誰もが知っているヒット曲で、ごまかしの利かない曲となるが、ふたりは自分の歌声で新しい色を付け、原曲の枯れた良さではなく、あの映画に宿っていた若さをそのまま封じ込める仕上がりになった。アコギをかきむしる松本とブルーズハープを吹き鳴らす終盤も盛り上がった。ライブでも音源でも数多くカバーされているが、この日のふたりのパフォーマンスは強く印象に残るものとなりそうだ。

アンディモリ自体は昨年の早稲田祭で一度見ている。が、あまりに拙いステージに失望し、また傑作だったセカンドアルバムに続くサードがはっきり失速と分かる期待外れな作品で落胆させられたわけだけど、この日の小山田は張りのある歌声にシャープな動きで、音楽を奏でたくてうずうずしている若者というとても好印象なものだった。何か特別なことをしているわけではないのに魅せる所作には華やかさすら感じられ、そうなるとあのライブはなんだったのだろうと思えてくる。

次のゲストは休止中のタバコジュースのギター・大久保秀孝。まずはバーカウンターにカンパリソーダを注文。セッティングにしばし時間をかけ、実にタバコジュースらしい時間が作られていく。"はやく〜"とふざける松本に、"俺はいつもとしまさを待っていたんだよ"と返すやりとりがいい。披露されたのは未音源の「意味のない朝食」に、3回目で入りを成功させた「僕のペガサス」。

他のメンバーが音楽活動を積極的に進める中、大久保は音楽とは関係ない工芸などのワークショップを開催し、ギターを置いてしまっている印象を受ける。が、彼のギターの音色を実際に聴くとやはりギターリストとしての才能に強く惹きつけられる。松本の歌声を殺さず引き立たせ、なおかつ自分も生きるカラフルな音を出す。慣れ親しんだ曲を演奏しているということもあるのだろうが、その才能を眠らせたままにするのはもったいない。

"実はラップができる友達が来てるんです"との紹介で登場したのは生音ヒップホップバンドSUIKAのATOM!

「ダイバー」というサビしかできていない曲のAメロを彼に全て任せるという無茶振りをして、ラッパーを交えたセッションが急遽始まる。曲のイメージは"何か潜っていく感じ"と最初に断ってはいたが、アトムのフリースタイル・ラップはいきなり空高く飛び上がる。てっきり水中に潜っていくことを連想させる言葉が紡がれるものと思っていたのでどうなるのかと戸惑うも、その後急降下し始めた。

ラップが面白いのはやはり即興性の高さだ。初めて聴いた音とテーマでも、その場で一瞬で新しい曲を作り上げる。ラップヴァースから松本の"ダイバーダイバー"と歌われるサビに入る瞬間の流れるような美しさはこの日咲いた素敵な魔法のひとつだ。アトムはラップ慣れしていない客が多いと判断したのか、ワッツアップなどのいかにもヒップホップらしい言葉を多用していたのも面白い。

本編の最後を飾るのはタバコジュース時代の名曲「ガーベラ」。この曲を生み出したバンドが一時でも歩みを止めることは日本のロック/ポップス史の損失なのではないかと大げさかもしれないけれど考えてしまう。


アコールを求める拍手が鳴り出す前に、"アンコール(の拍手)ないんですけどやっていいですか"と松本が大久保を従えてもう1曲始めた。「パーティーブルース」のメロディに乗せて、"こんな夜があってもいいよね 広がっていく 何が広がる ふさふさナイト☆ ふさふさって何?"といった歌詞が即興で歌われる。"ぶっ壊せ"のフレーズが気に入ったのか何度も連呼し、やや物騒な曲になりながらも最後にはふさふさな曲調に着地させ、来場を感謝し、コール&レスポンス・タイムもあり、でも"ぼろぼろのスカイツリー 放射能に負けない新しい体を持つ子供たち"なんていう鋭い感性がえぐり取る言葉も交えつつ、お馴染みの"あそぼーぜたのしもーぜ"が飛び出したところで、そのまま「パーティーブルース」の1番に突入した。

下記のセットリストは松本のブログを参考にしたもので、最後のアンコール曲は「パーティーブルースふさふさバージョン」と名付けられている。"ふさふさ"の名前を冠した10分弱もある長い曲を聴いても、結局"ふさふさ"が何なのか分からずじまいなのだけど、でもきっとあの優しくほわほわして、時に熱い空間をひと言で表す言葉なのだろう。どうにも"もふもふ"といい間違えてしまうのだけど。



松本敏将のソロライブを見たのはこれで二度目だ。一度目は昨年11月末に祖師ケ谷大蔵のカフェで行われたライブだった。その時はハモンドオルガン奏者のゲストという形だったために、ギターの大久保秀孝とのセッションがありつつも、バンド時代の曲とカバー曲(岡村ちゃんの「イケナイコトカイ」を歌っていた)の披露だったので、ソロ曲を聴けなかったわけだが、今回はワンマンということで、ソロをたっぷり聴けて満足だった。

ただ、ソロとはいってもどうしてもタバコジュースだったらどうなるのだろうと思いながら見ていたのも事実で、バンドとして演奏した時に面白くなるかどうかが楽しむ基準になっていたのは否めない。「ゆうやけほろほろ」や「ガタガタ」といった曲には、素の彼らしさが詰まっているように思えたが、楽曲としてのまとまり、特にポップスとしてどうなのかといえば、まだまだ粗削りだった。バンドメンバーがこのメロディを受け取り、曲としてアレンジも含めて練り上げていき、その先にあるひと皮むけた姿を見たいと思った。

一方で、「バティークータのプリズムレディオ」や「メキシコ」などはすでにタバコジュースらしさがあり、曲として完成されている。バンドがどう鳴らすのかもイメージできた。いつまでもバンドの幻影を追い求めるファンはうっとうしいものだが、やはり心に響くのだから仕方ない。記事を書くにあたり、検索をかけたら松本の以前のブログ記事に歌詞の一部が掲載されていたので、「バティークータのプリズムレディオ」はタバコジュースの曲として披露されていたのかもしれない。「メキシコ」も同じようにバンドの曲だったようだ。セットリストをライブ毎に公表していたドラムの脇山広介のブログにその曲名がある。分かってしまえばな〜んだという感じではあるが、しかしレコーディングされなかった楽曲はどれぐらいあるのだろう。もったいない話だ。

とはいえ、楽しかったのは事実だ。すごく良いライブだった。タバコジュースは活動休止中だけど、3人が音を出し続けていることが何より嬉しいし、松本が変わらぬ声で「ガーベラ」や「ヘッドフォンゴースト」を歌っていることに、いつの日かまた・・・との希望を持てた。意外なゲストの登場というサプライズは嬉しいものだ。アンディモリを見直すことができたし、アトムのラップまで聴けた。彼はまたこの場所でやりたいと口にしていたし、次があることを心の底から願っている。



第1部
1.Lugu Lugu Kan Ibi
2.ダニー・ボーイ
3.ゆうやけほろほろ
4.ガタガタ
5.NHRB(ネオハチハウス・ロイヤルビアガーデン)
6.バティークータのプリズムレディオ
7.メキシコ
8.ヘッドフォンゴースト

第2部
9.レッツダンス
10.オー・シャンゼリゼ
11.みら with 小山田壮平(andymori)
12.投げKISSをあげるよ with 小山田壮平
13.Stand By Me with 小山田壮平
14.意味のない朝食 with 大久保秀孝(tobaccojuice)
14.僕のペガサス with大久保秀孝
15.ダイバー with 大久保秀孝 & ATOM(SUIKA)
16.ガーベラ with 大久保秀孝

アンコール
17.パーティーブルースふさふさバージョン with 大久保秀孝
2012.01.22 Sunday 23:59 | 音楽 | comments(2) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
コメント
初めてコメントいたします。すごく行きたいライブでしたが、九州住のため行けませんでした…丁寧なレポートで少し行った気になれました♪ありがとうございます。
colorman | 2012.01.30 Mon 18:49
colorman様

こんばんは!
はじめまして。

そうおっしゃっていただけると書いた甲斐があったいうものです。ありがとうございます。
gogonyanta | 2012.01.31 Tue 00:33
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