すばらしくてNICE CHOICE

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J・エドガー / J.Edgar

66点/100点満点中

初代FBI長官ジョン・エドガー・フーヴァーの伝記映画。監督はクリント・イーストウッド。主演にはレオナルド・ディカプリオ。共演は秘書役にナオミ・ワッツ、『ソーシャル・ネットワーク』でFacebookの原案を考える双子を演じていたアーミー・ハマーがフーヴァーの片腕クライド・トルソンを、最愛の母親役にはジュディ・デンチ。製作費3500万ドル。2012年公開作品。

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キング牧師が導く黒人公民権運動が盛り上がりをみせる1960年代。FBI長官J・E・フーバーは回顧録の作成にとりかかるべく、部下に書き取りを命じ、語り出す。1919年、司法省に勤務していたフーバーは、長官の目に留まり、新設された急進派対策課を任される。取締りの成果を上げていき、FBIの前身である司法省捜査局の長官代行となったフーバーは、片腕となるクライド・トルソンと秘書のヘレンだけを信頼し、自らの信じる正義を実現すべく、捜査の近代化と権力の集中を進めていく。
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FBIの絶対権力者として約半世紀に渡り君臨してきたジョン・エドガー・フーヴァー長官。その名前は当時を舞台にした小説や映画にたびたび登場し、近作ではジョニー・デップが大恐慌時代の銀行強盗ジョン・デンリンジャーを演じた『パブリック・エネミーズ』でも、彼を"社会の敵(パブリック・エネミー)No.1"と位置づけ、早期解決に全力を挙げる様子が描かれている。

そのフーヴァーの半生をイーストウッドが監督し、脂が乗りに乗ってるディカプリオが演じるというのだから、告知なされた時からずっと楽しみだった。しかし、いざ喜び勇んで見に行ってみたら、これがまあつまらなくはないけれど、最高に面白いわけでもない。

フーヴァーは信頼する仲間を必要最小限に留め、徹底した秘密主義を自分の死後まで貫いたため、いまだ解明されていない謎が多々あり、その人間性は一般的な偉人ほどには明らかではない。とはいえ、彼が公に行ったことは記録されている。捜査手法の近代化や政府から独立した捜査機関の確立と権限の拡充というはっきりと見える功績を描きつつ、同時に彼が秘めていたとされる同性愛や女装趣味にも果敢に踏み込むことも辞さない。が、しかしそこは扇情的に切り取るのではなくかなり公平な視点でもって映し出している。

鑑賞後にウィキペディアで彼の項を見ると、権力の座にあれだけ長いこと居座り、よきにつけ悪しきにつけ様々な事案に関わってきた人物の半生を本作はとても分かりやすく映像化していたことに気づく。ウィキに書かれていることのほとんどが映画でも取り上げられている。しかし、それは学習のための教材ならばまだしもエンターテイメント作品としては決して有利に働くことではない。

脚本担当のダスティン・ランス・ブラックはオスカーで脚本賞を受賞した前作『ミルク』に続き、同じ伝記物となったわけで、本作でも実力通りのよくまとめられた物語を作り出している。しかも『ミルク』ではゲイと公表しながら初めて大きな選挙区から公職に当選したハーヴェイ・ミルクの最後の10年弱を脚本化したのに比べ、今回は1919年から1972年までとかなり長い期間を137分に凝縮させるわけで、その巧みな見せ方はさすがオスカー受賞者と唸らざるを得ない。

一方で、エピソードが整然と展開しすぎる嫌いもある。何より問題なのは盛り上がりに欠けることだ。ハーヴェイ・ミルクの物語には偏見にさらされ苦労を重ねた結果ついに当選を勝ち取り、その喜びもつかの間凶行に見舞われるという劇的な展開が待ち受け、映画にうねりをもたらせていたが、本作にあるのは非常に穏やかなエピソードの連なりだ。確かにフーヴァーは現場に出向くのではなく組織の長としていわば影となり動く存在であるから、心動かされるドラマ作りが難しいことを理解できはするものの、やはり他国の政府高官の記録であるという遠さも手伝い、最後まで乗り切れない。

ただ、権力を手にしたがゆえの孤独とプライド、分かち得ぬ理想とする国家像を求め続ける一権力者をディカプリオが熱演し、2002年の『ブラッド・ワーク』以降のイーストウッドの右腕トム・スターンが重厚さと繊細さを兼ね備えたカメラワークで魅せ、監督のもうひとつの卓越した才能である音楽が映像をさらに引き立たせ、なんだかんだと2時間越えの映画であるにも関わらず、飽きずに見られるわけであり、そう貶める必要もないのだけど、まあ、普段見てる娯楽作品で活躍するGメン(Government Man)たちの所属する機関の歴史とはこういうものなんだと教養番組で勉強している気分に終始するのも事実。

もうひとつ最後まで気になったのは、フーヴァーやトルソンの晩年もディカプリオとハマーがそのまま演じているのだけど、その老け化粧が醜悪でしかなく、何かの冗談か罰ゲームみたいなことだ。ディカプリオの頑張りも理解できるが、そこは別の役者(フィリップ・シーモア・ホフマン辺りにでも)にバトンタッチしても良かったのではないかと思うほどに酷い。
2012.02.05 Sunday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
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