すばらしくてNICE CHOICE

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ドラゴン・タトゥーの女 / The Girl with the Dragon Tattoo

85点/100点満点中

デヴィッド・フィンチャー監督の最新作。原作はスウェーデン産の推理小説で3部作からなる「ミレニアム」シリーズの1作目の同名作品。主演はダニエル・クレイグ。ヒロインにはルーニー・マーラ。製作費9000万ドル。2012年公開作品。

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スウェーデンの社会派雑誌「ミレニアム」の発行責任者でジャーナリストでもあるミカエル・ブルムクヴィストは、大物実業家ヴェンネルストレムの不正告発記事を執筆するも、反対に名誉毀損裁判で敗訴し窮地に陥る。そんな時、国内有数の企業グループの元会長ヘンリック・ヴァンゲルから、40年前に彼が我が子のようにかわいがっていた一族の少女ハリエットが忽然と姿を消した迷宮入り事件の再調査をしてくれとの依頼が舞い込む。調査が暗礁に乗り上げたミカエルは、ヘンリックの弁護士から社会性はないものの驚異的な情報収集能力を持つ女性リサーチャー、リスベット・サランデルを紹介されるのだが・・・。
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デヴィッド・フィンチャーは本当に好きな監督で、映画を劇場のスクリーンでちゃんと見ようと思うようになったのも『セブン』を見てからだった。音楽プロモーションビデオ上がりの監督らしく、スタイリッシュな映像感覚とバッドエンドを恐れず、かといってお高く留まることもなく、エンターテイメントとして分かりやすく暴力だったりスリルを提示できる監督で、作品数は売れっ子監督としては少ないけれども、公開されれば内容を気にすることなく見に行かなければと思わせる人でもある。

ただ、『パニック・ルーム』(十分面白いけど)以降は、きれいにまとまりすぎな嫌いがあり、アカデミー賞主要部門は逃したものの2冠を手にした前作の『ソーシャル・ネットワーク』に至っては文芸作品としての格のようなたたずまいまで見せ始め、作品としては楽しんだが、若干さびしい気持ちになったのも事実だ。

が、本作で初期のフィンチャーが戻ってきた。諸手を挙げて絶賛するわけではないけれど、それでも彼が以前持っていたえげつなさや理不尽さ、けれん味、もっと簡単にいえば圧倒的な暴力がある。好きな映画というのはこういうものだったなと思い出すことができた。

オープニングからして素晴らしい。予告編でも鳴らされていたNine Inch Nailsのトレント・レズナーとYeah Yeah YeahsのカレンO(大好き映画『かいじゅうたちのいるところ』の音楽はこの人が担当)によるLed Zeppelinの「移民の歌」のカバーがもたらす高揚感ははやっぱり最高で、しかも独創的な映像がかぶされるというフィンチャーらしさ全開なのがたまらない。『セブン』のオープニングも様々な映画に影響を与えていたけれど、本作も同様なことになるのかもしれない。

しかし、いざ本編が始まると早々に設定の複雑さに面食らう。雑誌ミレニアムの発行人にして記者でもある主人公ミカエルは事情がはっきり説明されない名誉棄損裁判に敗訴。居場所をなくした彼はタイミング良く呼ばれた片田舎の大屋敷で、スウェーデンの一大財閥の元会長ヘンリックから40年も前に行方不明になった少女ハリエットの失踪の謎を解明して欲しいと依頼される。

入り組んでいるのはその財閥一家の関係図で、それこそ『ソーシャル・ネットワーク』のごとく早口で、誰々が仲が悪く、その人とその人は話はするけれど険悪、けれどその人とこの人は馬が合うといった一族の図式がヘンリックからミカエルに説明される。が、観客と同じように一度に込み入った事情を話されてもミカエルは理解できない。だから、彼はヘンリックにその旨を伝えるわけだけど、そこで初めて見ている側もひと息つくことができ、ミカエルと同調できるようになる。ただ、映画の中のミカエルは徐々に一族の複雑な思惑図を頭に入れ始めるが、メモも取れず見ているだけのこちらは慣れないスウェーデン名もあり、最後まで誰が誰の兄弟で孫なのか分からずじまいだ。

ミカエルが片田舎で捜索に励む一方で、12歳で精神を病み病院送りになっていた関係でいまだに後見人を必要とするヒロイン・リスベットの大変な物語も並行して語られていく。彼女はぶっ飛んでいるのだけど、スーパーハッカーで記憶力も抜群、しかも高い調査能力まである。背中には題名通りにドラゴンの刺青があり、そこらじゅうにピアスを開け、風貌はパンク少女そのもの。男だけではなく女性もオッケーという博愛主義といったまさに漫画的キャラクターだ。記号化された分かりやすいキーワードをまといながらもかなり念入りに彼女の性格や背景を描いていく。

だから上映時間が158分にもなってしまう。中だるみはもちろんないが、40年も前の謎が解明されるという折角のカタルシスに焦点を当てれば、それで十分見応えのある映画になるのだろうが、敗訴した冒頭のミカエルのミスを汚名返上するエピソードが相当な駆け足で最後に描かれて、あれよあれよという間にそれだけで映画1本分ではと思うような内容を回収してしまう。原作は未読なので3部作の割り振りを知らず、続編で語られるのだろうと高をくくっていた物語まで一気に語ってしまったようで驚くが、確かに2時間40分もかかるはずだ。

原作のシリーズ名には"ミレニアム"と雑誌名が付けられているので、これからどういう物語が描かれていくのか知らないけれど、本作はキャラ説明としての役割を十分果たしているわけで、次からは事件そのものの面白さを全面に押し出した話になるのだと思いたい。
2012.02.12 Sunday 23:59 | 映画 | comments(2) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
コメント
こんにちは!

僕もgogonyantaさん同様フィンチャーの作品は大好きですね。

今回の作品はnyantaさんが仰られるように内容以前に登場人物の名前や相関関係でつまずいた人も少なからずいると思います。っていうか僕がそうでした(笑 

あと僕も原作を読んでないので深く言及できないのですが、ラストのリスベットのミカエルに対する行動は、ちょっと意外というか、あそこは正直いらなかったかなと個人的に思うところでもありました。例えささやかな感情が芽生え始めたとしていても、描かなくても良かったかなと…。
supremekicks | 2012.02.21 Tue 23:40
supremekicks様

こんばんは。
コメントありがとうございます。

> ラストのリスベットのミカエルに対する行動

駆け足すぎましたもんね。私も残り2作がどう展開するのか分からないのですが、強引にでも1作目で詰め込まないと次に続かないって感じなのかもしれませんね。
gogonyanta | 2012.02.23 Thu 02:32
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