すばらしくてNICE CHOICE

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二階堂和美『にじみ』

2011年7月6日リリースの4枚目のアルバム。
/5点中

購入したのは半年も前の話。聴いたのはついこのあいだ。ずいぶんとCD棚にお宝を眠らせていたことになる。その不甲斐なさにどうにかなってしまいそうだ。そもそも特典CD-R付初回盤がないと知りながら、あえてタワーレコードで買ったのはその日見たインストアライブでの彼女のパフォーマンスがそれはそれは素晴らしかったからだ。あまりにすご過ぎて、普段は店内ライブを見たぐらいでは作品にまで手を伸ばすことはないのに、思わずレジに走り、握手会の列に並んでしまった。彼女がひとりひとりと丁寧に力強く握手していくなか私の番が来て、先程のライブの感動を強調したいがために、"アルバムよりすごい良かったです"と訳の分からない失礼極まりないことを口走ってしまった。自分で自分に怒りの鉄槌を振り下ろしたい気分になる。緊張しやすいということもあるにせよ、あまりに不用意な発言であり、本作を聴いた今となっては穴があったら入りたいぐらいだ。

本作は素晴らしい。そうとしか書きようがない。童女のようなあどけない表情を見せたかと思えば、場末のスナックで媚びを張り付けた老いたママの顔となり、時に美空ひばりを呼び出しコブシを利かせ、あるいはエディット・ピアフを憑依させ、聴く者をバラ色に包み込む。ポップス、ジャズ、ブルーズ、唱歌、歌謡曲、民謡。幸せを音にするスティールパンの響き、喜びを抑えきれないスキャット、シンプルにかつ雄弁につま弾かれるベース、愁いを帯びたブルーズハープ、歌に寄り添いテーマをより深くよりくっきりと描き出すヴァイオリンの音、どこまでも献身的なピアノと歌の語り合いは聴いていてひたすら楽しい。

必要最小限で紡がれる音たちの至上命題は歌を盛り立てることであり、精鋭たちが奏でる確かな存在感を持つ音の上にやわらかく着地した二階堂和美の歌に、歌声ってこんなにも様々な生活だったり生き方、考え方、喜怒哀楽を表現できるものなんだねと今さらのように驚かされる。

歌を時に否定しながらも圧倒的な存在感で歌い上げていくM1「歌はいらない」、二度寝してしまい跳ね起き、逆ギレさながらにジャズに乗せて歌うM5「PUSH DOWN」(歌詞カードのデザインもかわいい)、童謡のような素直なメロディに乗せて、"八月のなき声は蝉にたくして 悲しみも悔しさも蝉にたくして"と歌われるM8「蝉にたくして」は彼女の生まれ育った県を思えばそういう曲なのだろう。

彼女の歌の力が最大限に発揮され圧巻としかいいようがないのがM9「岬」だ。空に伸びゆく声は祈りのように響く。何度も繰り返し聴いていると胸が締め付けられ苦しくなるけれど、でも同時に頭の中に溜まっていた澱が浄化していくようでもある。うとうとしながらこの曲を聴いていた時の多幸感はすごかった。落ち着いたジャジーな音に囲まれたM13「とつとつアイラヴユー」で切々と健気な乙女心を歌ったかと思えば、続くM14「いつのまにやら現在でした」ではそうした恋愛をして結婚したはいいけれど、"どうもこの人じゃなかった"と気づいてしまう女性の歌でこの2曲の流れは楽しい。

前作『二階堂和美のアルバム』も疑いようがない名作だったが、本作はさらに表現力が増し、ただ歌うだけで、それも歌詞がないスキャットだけでも十分に聴き手を別の世界に連れて行き、それまでの苦しみを忘れさせ、音楽を聴くことのかけがえのなさを教えてくれる。ライブを見て感動して本人に直接伝えられる機会があったからといって、アルバムよりも良かったですなんてどの口がいえたのだろう。思い出すだけでも赤面する。まあ、なんにせよ本作が不世出の傑作であることは確かだ。
2012.02.17 Friday 23:59 | 音楽 | comments(3) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
コメント
知りませんでした。聴いてみようと思います♪
C | 2012.03.01 Thu 11:22
お名前しか存じ上げてないので近々聴いてみようと思います。
浮き雲 | 2012.03.01 Thu 17:47
C様

こんにちは。
コメントありがとうございます。

私も全作品をフォローしてるわけではないのですが、聴いた限りではどれもハズシがなく、満足できるアルバムばかりでした。お勧めです。



浮き雲様

こんにちは。
こちらにもありがとうございます。

確か前作の『二階堂和美のアルバム』(イルリメがプロデュースしています)はTSUTAYAに置いてありました。そっちもかなりいいです。
gogonyanta | 2012.03.03 Sat 10:53
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