すばらしくてNICE CHOICE

暇な時に、
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書籍(3月分)
東直己『旧友は春に帰る』

読了 2012.03.01
☆☆☆/5点中

シリーズ2作目が北海道出身の俳優大泉洋を主演に昨年映画化されたススキノ探偵シリーズの2009年に上梓された9作目。1作目の『探偵はバーにいる』に登場した高級コールガールの"モンロー"(当然覚えていない)が北海道に戻ってきて、四半世紀ぶりに主人公の"俺"に連絡をよこしてくるところから始まる。助けてくれとあるので、彼女の潜伏先の夕張に迎えに行くも、そのホテルはすでにヤクザたちに見張られていた。元自衛隊でゲイのアンジェラの助けを借り、なんとかススキノに戻ってこられるが・・・。

このシリーズはもはや物語自体を楽しむものというよりも作者の東と同一視しても良さそうな"俺"の言葉だったり思想、あるいは思い込み、偏見を愛でるためのものであるが、今回は帯で"渾身の傑作"と煽っているだけのことはある力作だ。かつてはススキノの街を肩で風を切って歩いていたモンローが年を取り、それでも過去の栄光にすがり、幸せな人生を送ることのできる可能性がありながらもそれができない哀しい性。それが語られるケラーのカウンターでの最後の余韻など最後まで楽しく読める。

恒例の登場人物たちの近況。"俺"は52歳に。前作と同じように携帯電話を嫌悪し、自宅の固定電話か公衆電話を利用。パソコンも自分のかネットカフェのを使う。松江華との付き合いは続いている。ひとり息子は北大を来年卒業予定で、友人の高田はミニFMでのDJを続け、ケラーもバーテンダーふたりも健在。"俺"より10歳年上のヤクザの桐原は62歳となり、相田の病状は変わらず。退職した警官・種谷とは飲み屋の甲田で時々会い内部情報を仕入れ、北海道日報の松尾(離婚した)も、人生研究所の濱谷も、聞潮庵のふたりのおばあちゃんも元気だ。ススキノの古株ポーター・アキラは2年前に引退し、今は立ち飲み屋の親父になっている。

ファンへの義理で今この馴染みのキャラクターが登場しているのだろうなと思う場面も確かにあるが、でも顔を見せないと読んでいる方もさびしい気分になるし、シリーズが長くなると仕方ないのだろう。

1982年にレコードデビューした札幌出身の歌手、佐々木好の「ドライブ」(YouTube)と「雪虫」(YouTube)。Third Ear Band「Mosaic」(YouTube)、The Pentangle「Cruel Sister」(YouTube)。どれも初めて聴いた。佐々木好が好きという人間が1960年代後半に登場した英国プログレバンド、サード・イアー・バンドの音を立て続けに聴いたという設定は、字面だけで読むと特になんとも思わないが、こうしてユーチューブで視聴してみると興味深い。

翡翠、麒麟、鳳凰についてはこっち


大石直紀『グラウンドキーパー狂詩曲(ラプソディー)』

読了 2012.03.04
☆☆/5点中

文学賞を受賞しデビュー作からベストセラーを放った作家がやがて鳴かず飛ばずとなり、恋人も離れ編集者からもちやほやされなくなり、失意の下郷里へと戻り、スポーツ公園管理事務所で働くことに。そこは公務員たちの天下り先であり、小さいながらも不祥事の温床でもあるが、同僚の片山や北村と共にもっと大きな巨悪をとっちめる話。日本ミステリー文学大賞新人賞を始めに他にもいくつかの賞に輝いている著者自身を反映させているわけではまさかないだろうけれど、最近は以前のような骨太の冒険小説ではなく、ノベライズ本中心に執筆しているようで色々あるんだろうなと思わせる感じではある。本書は携帯サイトで連載していたものに大幅に手を加えたものらしい。手軽に読めはするけれど、グッとは来ない。


道尾秀介『背の眼 上・下』

読了 2012.03.11
☆☆/5点中

2004年に第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、著者のデビュー作となった作品。1月読んだ『骸の爪』の前作に当たり、作家の道尾とその同窓生で今は霊現象探求所を営む真備が福島県の山間の村・白峠村で起きた児童失踪事件の謎を解く。

『骸の爪』では張り巡らせた伏線を一気に回収するという荒業に出ていたが、本書ではオーソドックスな怪奇ミステリーであり、しかも読み込んだ資料を盛り込みすぎて説明過多になりすぎの嫌いがある。デビュー作の熱やそれ故の構成のいびつさもある。


樋口有介『窓の外は向日葵の畑』

読了 2012.03.18
☆☆☆/5点中

東京・佃島で暮らす父と息子の親子が謎を解くミステリー。息子は高校生。3年前に亡くなった幼馴染の幽霊を見え話せる。一方、父親はかつては警察官で今はハードボイルド作家を目指すかたわら、おかしな名前の飲料水の販売で儲けている。

なぜ舞台が佃島かといえば、多分著者が数年前から手掛け始めた時代小説に出てくる土地にほど近く、書きやすかったからだろう。新しいといえば、ふたつの視点を盛り込んでいるのも樋口作品では初かもしれない。男子学生の息子と父親という中年男性からの視点。それが交互に描かれていく。それと幽霊が登場するも珍しい。視点についてはどちらも著者が得意とする年齢であり、大きな違和感はないものの、ひと粒で二度おいしいとならなかったのは残念。

夏の下町ということもあり、ヒロインの眼鏡っ子との青春要素を多めに加えながら、高校生視点一択で展開した方が良かったように思う。また、事件の真相のネタは確か初期作品にもあって、その時はリーダーとなる女子高生が自ら運営していた。今回はもう少し大がかりにさせているが、でもやはりかぶっている感じは否めない。


道尾秀介『ソロモンの犬』

読了 2012.03
☆☆/5点中

夏休みに自転車便のアルバイトに精を出す秋内は、その仕事中に、大学で教えを受けている助教授のひとり息子で知り合いでもある陽介少年が突然飼い犬に引きずられて通りに出てしまい、運が悪いことにやってきたトラックにひき殺される瞬間を見てしまう。その直前にちょうど向かいのファミリーレストランから出てきた学友でいつもグループを組んでいるひとり、京也がその事態を引き起こしたのではないかと疑うが・・・。

犬の習性が事件を解く鍵ということで、大学の動物生態学の間宮助教授が登場し、彼がホームズ役となり、解決させていくわけだけど、なかなか奇抜なキャラクターで1作だけの起用というのはもったいない気もする。

ただ、展開そのものはラストで二転三転させ魅せるものの、序盤からいかにも伏線ですよというヒモが見え見えな様子で垂れ下がっている文章にはさすが鼻白む。気になる箇所にはページの角を折り曲げ(ドッグイア)ながら読むために、読了後は本来の厚みよりもずいぶんと幅が出ていた。

巧みな伏線だろうと見え見えだろうと上手に回収されれば不満はない。『骸の爪』のごとくこれは一挙に回収型かな、映画でいえば『ユージュアル・サスペクツ』タイプかとワクワクしながら読み進めたら、小さな伏線をちびちびと小さく集め始め、爽快感などあろうはずもなく、ただ意味のない謎っぽさを作り出す文章の不自然さだけが際立ってしまっている。


樋口有介『刑事さん、さようなら』

読了 2011.03
☆☆☆/5点中

昨年2月に上梓された書下ろし作。前作に当たる『窓の外は向日葵の畑』と同様にふたつの視点で展開するミステリー。そのふたつとは埼玉県本庄市の刑事課所属の須貝と西川口の焼き肉店で働くヨシオで、交互に描かれていく、著者にしては珍しく硬派な印象を抱く警察小説でもある。樋口作品には欠かせない美女も登場するが、今回はいささか控えめな活躍だ。

正月早々に起きた介護苦による殺人、本庄署の警官の自殺、そして利根川河川敷に遺棄された身元不明の男の死。その事件を追う中で警察内の問題もまた深く関わってきて、なかなか読ませる展開だ。確かに佐々木譲の警察物に比べるとゆるさはあるが、警察社会で生きるために清濁併せ呑まざるを得ない男を自然に描き、おかしな潔癖さが排されているのは好感が持てる。

そして樋口作品でこのラストは想像していなかった。現実を描くとなるとこのラストしかないのだろう。
2012.03.31 Saturday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
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