96点/100点満点中
現代スペイン映画といったらこの人、ギレルモ・デル・トロ製作による2010年サスペンスホラー。彼が同じように製作総指揮した2007年の傑作ホラー『
永遠のこどもたち』でも主演を果したベレン・ルエダが主人公フリアを演じる。撮影は『
永遠のこどもたち』のオスカル・ファウラ。製作製作費500万ユーロ。
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先天的な眼の病気で視力を失いつつあるフリア。先に視力を失った双子の姉サラが自殺したことを知らされ驚愕する。その死に不審なものを感じたフリアは、独自にサラの周辺を調べ始める。驚きの事実が明らかになるのと時を同じくして視力も急速に失われていき・・・。
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似たようなタイトルで移植された眼が見せる生前の殺人事件などといったスピリッチュアルホラー作品もあり、デル・トロ製作とはいえ失敗か思いながら借りたわけだけど、これがまた素晴らしい。『
永遠のこどもたち』も傑作といっていいホラー作品だったが、本作も負けていない。
主人公フリアの視力が弱まり、満足見られなくなった状況で、鑑賞側も同じように重要人物の顔を見ることができない演出は心憎い。わざとらしさはなく、巧みなカメラワークでその物が見えないという恐ろしさを生み出し、同時にそれがミステリにもなる。
後半にはある意味本当の狂人が現れる(あまり活躍することなく退場するのがもったいなくもある)こともあり、前半の怖さとは趣きが一変し、最後にはロマンまで演出させている。ひとつの映画の中でひと味だけに留めず、なめ続けると次々と味を変えていく辺りは『永遠のこどもたち』にも通じ、思っていた以上に楽しめる作品だ。