58点/100点満点中
2001年の韓国映画。青春ドラマ。主演には、先日見た『
アタック・ザ・ガス・ステーション!』で"無鉄砲"役だったユ・オソンと、後に"韓流四天王"のひとりと称され日本でも熱狂的なファンを生み出したらしいけれど、私には日本人ラッパーの般若のリリックにある"ババアの待受けチャンドンゴン"でようやくその存在を知ったチャン・ドンゴン。
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1976年夏の釜山。ヤクザの親分の息子ジュンソクと葬儀屋の息子ドンス、優等生サンテク、お調子者のジュンホの4人の小学生は育った環境は違うものの幼なじみの大親友だった。小学校を卒業し別々の中学へと進学。高校で4人は再び顔を合わせるが、以前のような親密な仲にはならない。ようやく屈託なく笑い合えるようになった直後に事件が起き、ジュンソクとドンスは退学していき、4人は別々の道を歩み始める。
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韓国では1999年に大ヒットを放った『シュリ』や2000年の『JSA』の興行記録をあっさり抜き去り、2003年の『シルミド』に破られるまで歴代1位だった人気作。ドラマ「冬のソナタ」の大ヒットに始まった2004年頃の韓流ブーム以前の映画ではあるけれど、確か日本でも話題になったはずで(公開は翌年の2002年)、予告編が劇場で流れていたのを覚えている。
小学生だった1976年、高校で再会する1981年、1983年にはジュンソクとドンスのふたりとサンテク、ジュンホのふたりの歩む道にさらに隔たりができている。優等生サンテクと率先して笑いを取りにいくジュンホは高校を無事卒業し大学生に。ヤクザのひとり息子ジュンソクは麻薬に走り、ドンスは家業を嫌い渡世人となっていた。そして1990年。ジュンホは結婚し店を出し、本作の語り手でもあるサンテクはアメリカ留学を目前に控えている。一方で、別組織の若頭的存在にのし上がっていたジュンソクとドンスは対立し合い、チング(親旧。韓国での使い方のニュアンス→信頼と実績の
Yahoo!知恵袋から)だったはずのふたりは周囲の思惑もあり、修羅場に突入してしまう。
それぞれの年代の4人を描いていくが、言葉の端々に辛うじて体制の状況だったり、着ている服や音楽、あるいは街を走る車に当時の風俗が表れるだけで韓国という国自体の変化の流れはほとんど垣間見られない。あくまでも4人が歩む人生に焦点が当てられる。
映画を見る際、事前情報を得ることなく素の状態で鑑賞することにしている。が、本作に関しては監督が経験した実話をベースにしていると先に知ってしまっていたためか、どうにも追想にふけりがちな演出に辟易しがちになる。それでもラストシーンでのソンテクとジュンソクのやりとりには涙腺が危うくなるのは認める。それでもやはり本作を評価する気になれないのは自身の思い出を肯定するのは当然としても、ヤクザ者を美化し結果的に擁護しているように見えることだ。ヤクザであってもチングであり、ひとりの人間であるという思いがあるのだろうが、共感という評価基準を排除しているものの、最後の最後までヤクザとしての美学を誇る姿を感動的に描いてみせることに後味の悪さが残る。
そんなことをエンドクレジットを見ながら思ったわけだけど、みんなの知識の集積地ウィキペディアで、監督のクァク・キョンテが"映画のモデルになった暴力団組長に揺すられて多額の謝礼を支払った"と知り、ジュンソクが正しくヤクザであり、ちょっと嬉しい。
作品中で話題になる水泳選手のチョ・オリョンとは、"1970年と1974年のアジア競技大会で2種目連覇を果たし"、「アジアのオットセイ」とも呼ばれた名選手だそう。2009年に56歳の若さで亡くなるが、その前年には、"独島宣言文に署名した33人の民族代表"を讃えるという趣旨で、泳いで竹島(独島)を33周する"独島プロジェクト"を行っていて、なかなかの愛国者だったようだ。