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VA『かなへびコンピ』

2012年8月18日リリースのコンピレーションアルバム。
/5点中

代々木公園で開催されているヒップホップの祭典BBOY PARKで、若手のCD-R商品や無料配布作品を扱う「かなへび屋」というお店が昨年から出店するようになった。その意欲的なお店の主ユッカさんが、今年は若手の作品をただ並べるだけではなく、日本にはこんなにも素晴らしい才能が眠っていて、それを多くのヒップホップファンが集まる年に一度のお祭りで広く知らしめたい!と思ったかどうかは知らないが、ネット上で"全国のやる気"のあるラッパーやトラックメイカーからオリジナル曲を募り、CD-Rに焼いて、わずか500円で売り出したのだ。それが本作となる。

予想以上に多くの応募があり、19曲収録された本編とは別に12曲を収めた『裏かなへびコンピ』も作られ、実質2枚組となっている。現在は彼女のブログから通販できる。そのブログ上で収録曲の人気投票を行ない、多くの得票を集めた上位の楽曲に賞金が出るというのも面白い試みだ(9月2日まで)。

以下曲目リスト。

『かなへびコンピ』 全19曲 67"14
1.DJMISQ「TARGET feat. GAPPER (from PSG)」
2.吉沼 (from Enpizlab)「Borderline」
3.かるまtheZIPPER & MCキムチババア「Magic Number (produced by DJ TATSUMA)」
4.DRO「spacy03」
5.T@K「Good Bye (produced by WARUSHI)」
6.chemical reaction「Natural」
7.Aloher「Kaello canah」YouTube
8.Ahos (from 10.010)「Coolish Summer in TOCHIGI」(Instrumental) SoundCloud
9.sk「恋。(雨の日remix)」SoundCloud(original ver.) DL可
10.Yoshihilow「My favorite」SoundCloud
11.ZEONN (from REGAL旅団)「Rock it!(produced by Ahos [from 10.010])」
12.NEO「Welcome」
13.FESONE「休日」 YouTube DL可
14.fzpo「Rules」(Instrumental)
15.milky「SAKE YOUR HEADS」SoundCloud DL可
16.Sly a.k.a 9llA Soundz「てきとー」
17.3.2ch「今宵も月が泣く」SoundCloud DL可
18.HightBeatz「サマーデイ feat. ICHIRO」YouTube(short ver.)
19.シマダカズユキ「BEATZ & VIBE」SoundCloud

『裏かなへびコンピ』 全12曲 39"32
1.DRO & メガネ「Right here」SoundCloud DL可
2.カナリアmimic「答えはNOだ」SoundCloud DL可
3.10.010「不謹慎」blog DL可
4.こえだ「Wash the dishes」SoundCloud DL可
5.milky「DREAM BOY」ニコニコ動画 DL可
6.Misawar「Shit」SoundCloud
7.メガネ「雨」SoundCloud DL可
8.3.2ch「CHOCOLATE BOX」
9.Aloher「Chakka」YouTube
10.REGAL楽団「REGALITION」SoundCloud DL可
11.NEO「NEW WORLD」
12.milky「SUMMER」(Instrumental) SoundCloud DL可
【Bonus Track】
13.9llA Soundz a.k.a Sly「おやすみ」


フリーダウンロード界隈でその名前を浸透させつつあるアーティストが多く参加していることもあり、すでに無料配信された既発曲もあるが、正規アルバムをリリース済みのアーティストにはもはや作り出せない勢いと危うさを兼ね備えた楽曲が放つ独特の魅力がぎっしりと詰め込まれていて、青田買いマニアにはたまらない逸品といえる。

気になった曲を挙げていく。各アーティストの詳しい経歴はユッカさんのブログで特集されている。

M1に参加したPSGのガッパーはさすがにこのメンツの中に並ぶと頭ひとつ、いやふたつばかし抜けている。M2の吉沼もキャリア的に見れば相当長いと聞くし、同年代の絶招やDovestと共に結成したエンピツラボでのミックステープ(DL先)も良盤だったわけで、そろそろ上を目指すのだろう。

M4のドロはトゥイッターやサウンドクラウド上で曲を配信するも、ほとんど告知をせずしかもわずかの時間だけアップをしすぐに引っ込めるため、あまり追えてはいないのだけど、その露悪的なリリックはこえだちゃん(裏コンピのM4)にも似る。ドロの方がもう少し邪悪で、ラップは決して巧いわけでもないが不思議な魅力を秘めている。ただこの曲はすごくまともで詩情にも溢れ、こうしたリリックも書けるのかと驚いた。

大阪在住で20歳になったばかりのM5のタクは今年のBBOY PARK MCバトルでも活躍したラッパーだ。バトルでは同郷のKOPERUに似ている印象を受けたが、会場で売られていたミニアルバム『Neverland』を聴くと元SIMI LABのQNスタイルに日本語を潰しグルーヴを生み出すラップをしている。M5はその作品にも収録されている。初めて聴くラッパーだと思ったのだけど、iTunes内をよく見たら実は昨年2本のミックステープを出していたことに気づいた。3月に発表された5曲入りの『T@K DEMO MP3』(DL先)と日本語ラップ曲をリミックスした11月の『Pray 4 J-RAP』(DL先)で、もしかしたらもっとあるのかもしれない。慌てて聴いたがかなり良い。スタイルのブレは垣間見られるものの、芯の強さは変わらない。

秋田県出身現在東京在住のdj tamuと、流れに流れて日本にやって来たアトランタ生まれのラッパーDavid Whitakerのふたりが組んだケミカル・リアクションによるM6はこのコンピには珍しく陽性な空気を纏った楽曲で特に目立っている。10.010のAhosが作るインスト曲M8は曲名通りに涼しげで、玉石混淆なラップ曲が並ぶ中、一息つくことができる。

M12はmahoutsukainote名義ではトラック制作やリミキサーとして次々に新しいリミックスをサウンドクラウド上に発表し、今回のようにネオ名義の時はラッパーとしての楽曲になる千葉の若手の作品。この曲自体4月に無料配信されたシングル『NEW WORLD』(現在配信終了)の1曲目となる。このラッパーも決して巧さはないものの、独特の温かみがあり、不思議と惹かれてしまう。コーラスでのメロディの作りに魅了されているのかもしれない。このコンピで初めて知ったひとりである広島のトラックメイカー兼ラッパーのミルキーのM15は酒酔いソングであり、2ヴァース目の小気味良さはなかなかのもの。

ベストの1曲はM18「サマーデイ」。今年3月に2本目のミックステープ『BOUDER LINE』(DL先)を発表している新潟出身のラッパー・ハイトビーツがこんなにも突き抜けた曲を作るとは思ってもいなかった。強い夏の陽射しになにかを期待するよくあるテーマを本当に気持ち良くラップしている。フックでのボーカルエフェクトがやや強すぎてもっとナチュラルに掛ける方が正解なのだろうけれど、ヴァースのフロウとリリックが良過ぎてそれほど気にならない。8月頭に出した3曲入りシングル『サマーデイ EP』の表題曲らしいが、売り方次第ではもっと広くヒットさせることができたのではと思えるほど聴くだけで夏の解放感が得られる良曲だ。

M18と肩を並べる完成度であると同時に真逆の空気を纏ったM19はシマダカズユキの楽曲で、トラックはILL SUGI。彼が暮らす東京・山谷を中心に下町の風景を切り取る。路上観察者の瞳には侮蔑や同情、持ち上げようとする色はなく、どちらかといえば優しい眼差しをするも中立を保とうとする語り口でもって世界でも有数の大都市である東京の裏道を描いていく。しかし、明るいか暗いかでいえば、後者でしかないこの曲を最後に持ってくるというのは勇気がある。


続いて裏コンピ。ブログを見るとボーナストラックとして13曲目が収録されているらしいけれど、BBPで購入したものは全12曲だった。

M3は10.010の7月発表のミックステープ(DL先)にも収録された楽曲。緊急地震速報のあの音がサンプリングされていて体が自然と反応してしまう。

M4はこえだちゃんというラッパーに初めて出会い、そのリリックに衝撃を受けた楽曲だ。S.l.a.c.k.(5lack)やtofubeatsたちの出現で、それまでのラッパー像――強い男であらねばならない――といったマチズモが気持ち良く崩壊し、日常のよしなしごとを独特の詩情で持って描き出すラッパーが増えた印象がある。もちろんスチャダラパーやキミドリ、Tokyo No.1 Soul Setといった先達もいるわけだけど、スラックやトーフビーツの登場は楽曲製作やフロウの面でも大きく変えた。歌詞もまた経済は相変わらず後退し続けるが、そのつまらない日常の中に喜びを見出し、でも安易な希望ではないところにその特徴がある。こえだちゃんの面白さ(というよりもこの曲でのユニークさ)は、深い穴の底にいるのに、自らのシャベルでもってさらに掘り下げようとし、そうしながらも上を見上げんとするその姿勢にある。

M11は上記したようにネオが以前配信したフリーDLシングル『NEW WORLD』の表題曲。本編M7では取り立てて印象に残らなかった大阪は枚方市出身のラッパーAloherのM9は持ち前の勢いが良い方向に作用し、フックが一本調子で退屈させるものの、ヴァースには力強さがある。



インターネットを通して募集を掛けたことで、集まった楽曲の傾向が文系ラップに括られるものに留まり、また人に聴かせられるレベルに到達しているとは到底思えない曲も収録されているものの、その中から光り輝くアーティストを探すことこそが面白いわけで、そういう意味でも非常に楽しめるコンピレーションアルバムになっている。あと、アルバムジャケットが夏とはいえ少し怖い。せっかくなら盤に描かれているカラフルなかわいいカナヘビの方をジャケットすればもっと手に取りやすいのにと思わなくもない。



【追記】2012.09.02
22時からのユーストリームで人気投票の順位が決定。かなへび賞はシマダカズユキ「BEATZ & VIBE」。

1位 吉沼「Borderline」
2位 Aloher「Kaello canah」
3位 DJMISQ「TARGET feat. GAPPER」
3位 かるまtheZIPPER & MCキムチババア「Magic Number」
3位 T@K「Good Bye」
3位 ZEONN「Rock it!」
3位 NEO「Welcome」
3位 3.2ch「今宵も月が泣く」
3位 シマダカズユキ「BEATZ & VIBE」
10位 sk「恋。(雨の日remix)」
10位 milky「SAKE YOUR HEADS」
10位 Sly a.k.a 9llA Soundz「てきとー」
10位 HightBeatz「サマーデイ feat. ICHIRO」
14位 chemical reaction「Natural」
14位 Ahos「Coolish Summer in TOCHIGI」
16位 DRO「spacy03」
16位 Yoshihilow「My favorite」
16位 FESONE「休日」
19位 fzpo「Rules」
2012.09.01 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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2017.08.23 Wednesday 23:59 | - | - | -
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