すばらしくてNICE CHOICE

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ヘルプ 心がつなぐストーリー / The Help

80点/100点満点中

エマ・ストーン主演の社会派人間ドラマ。共演にヴィオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサー、ジェシカ・チャステインら。製作費2500万ドル。2012年公開作品。

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1960年代のアメリカ南部ミシシッピ州ジャクソン。上流階級に生まれ、黒人メイドに育てられた作家志望の白人女性スキーターは地元新聞社で家事に関するコラムの代筆を担当するに。家事に疎い彼女は友人宅のベテラン黒人メイド・エイビリーンに相談。話を聞くうち、彼女たちが置かれた立場に違和感を覚え始め、黒人メイドの証言を集めて本にしようと思い立つ。ところがエイビリーンは真実を口にすれば、この町では生きていけなくなると取材を拒否する。
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教育的でありながらも押しつけがましさのないとても良い映画だ。黒人への人種差別を描いた作品ではあるが、例えばスパイク・リーのように攻撃的な見せ方をするのではなく、時代が少しずつ動いているにも関わらず南部ミシシッピ州で平然と行われていた恒常的な差別を、もっと酷かったであろう側面を切り落とし、ユーモアとしたたかさを前面に押し出すことで明るく展開させる。

一方的に搾取されていた黒人の強い被害者意識を盾にして訴えるのではなく、白人が黒人に行った良い行ないも忘れずに盛り込み、どちらかといえば黒人を下に見る風潮を目の当たりにして育ったがために、子が親を真似て黒人を蔑むというどうしようもない悪循環こそを憐れむ視点で描かれる。そのおかげもあり、まあ直接には人種間の差別を意識しない(日本にもあるわけだけど)私にも、物語を素直に受け入れて楽しみながら、一緒に悔しがり、黒人と無知な白人を共に同情し、鑑賞することができる。

舞台は1960年代。ケネディ大統領が暗殺され悲しむ場面があり、またヒッピーという言葉も飛び出す時代。ラジオからは初期の牧歌的なロックンロールが流れる。とはいえ、わずか半世紀前の出来事なのに驚く。三十代の身にはついこの間のことのようにも思える。そのころのアメリカ南部にはバスの座席位置から利用できるお店、トイレ等々と黒人と白人を隔てる壁が目に見える形ではっきりとあったのだ。わずか50年前のことなのだ。第二次世界大戦が終結して20年弱にもなろうとしているのに、まだジム・クロウ法などというふざけた法律が存在していた時代。

今だってもちろん差別はあるのだろう。しかし、映画やドラマ、音楽、小説といったポップカルチャーを通してアメリカを吸収していると人種差別などというのは遠い昔の愚策のひとつとしか思えない時もある。特にドラマで顕著なのは白人、黒人、アジア系、ヒスパニック系が平等にキャスティングされるようになっている。そこには意図的な配慮と同時に、市場を考えても効果的なのだろう。また音楽を見れば、黒人の歌手やラッパーが派手に浮かれ騒いでいるプロモーションビデオがチャートの上位に付けている。

それでも、今年初めにフロリダ州では、ゲーテッドコミュニティ("車や歩行者の流入を厳格に制限し、防犯性を向上させた住宅地")でフードをかぶり歩いていた17歳の黒人少年を自警団員のヒスパニック系白人男性が射殺し、しかも地元警察が男性の"正当防衛"の主張を認め、無罪放免したために全米で大問題となった事件があったばかりであり、本作の頃のように顕在化している差別は少なくなったものの、それでも地域によっては厳然として差別意識は残っているのだろう。

エマ・ストーン演じる本作の主人公ユージニア・フェラン(愛称はスキーター)はミシシッピ大学でジャーナリズムを学び、生まれ育った街ミシシッピ州ジャクソンに戻ってくる。作家になりたい彼女は地元の新聞社でコラムの代理執筆の仕事を得ると共に各家庭でメイドとして働く黒人女性の仕事の実態がいいネタになるのではないかと思い付き、出版社に交渉する。版元もまた、高まる公民権運動を背景に衝撃を呼び売れるのではないかと後押しをしてくれる。

声高に差別を告発することを狙いとした書籍ではないとしても、ばれたら職を失うだけではなく、命の危険にされされる可能性もあるので、当初誰もスキーターに協力するものはいなかったが、やがてひとりふたりと彼女のインタビューに答える黒人が現れる。

証言をしようと決断する黒人女性の勇気を讃えるべき作品ではあるが、主人公であり白人女性スキーターの異端さがそれほど説明されずにいるのが気になる。ストーンの凛々しい眉毛を見るまでもなく、意志の強さ、それとちょっとした使命感のようなものは演技からは伝わるが、彼女自身についてのエピソードが乏しい。

黒人を使役することが当然の土地で育ち、ジャーナリズムを勉強するために4年間離れていたとはいえ同じ州の大学であり、彼女の同級生たちと同じ考え方であってもおかしくないはずなのだ。パーティに出て楽しみ、恋をしたいと考えたりする若い女性らしさを描いてもいる。白人が享受する贅沢を十分に受け入れていながら、同時に差別について憂えることが相容れないことではないが、彼女の生い立ちから書こうと思い至る契機がよく分からないのが不満といえば不満だ。

職業として福利厚生が整備されていないメイドという職業ではあるのだけど、仕事に誇りを持ち、生きている黒人女性をエイビリーン役のヴィオラ・デイヴィスや、ミニーを演じるオクタヴィア・スペンサーらが生き生きと演じている。『ダウト 〜あるカトリック学校で〜』でメリル・ストリープやフィリップ・シーモアといった歴戦の名俳優がいながらも何ら負けることのない存在感を放ち続けたデイヴィスの演技は今回もやはり素晴らしい。それはもう極悪非道な仕打ちをするくりくりとした目のミリーに扮したスペンサーは本作でアカデミー賞助演女優賞を受賞した。

同時にお高くとまる白人女性たちの演技も良い。彼女たちが立派に悪役を演じるからこそ作品としては盛り上がるわけで、ヒリー役のブライス・ダラス・ハワード(ロン・ハワード監督の娘)を始め、その親友たちが生み出しているハイソな雰囲気は効果的だ。

一方で、スターキーと同じくよそ者であるシーリア・フットの存在が面白い。白人でありながら、コミュニティのリーダーであるヒリーに嫌われ、それでも負けないバイタリティを持っている彼女はスターキーとも違う異質さがあり、その物語に不思議な躍動感をもたらしている。おバカさんと断じてもいいのだろうけれど、黒人に対して何ら偏見を持たないその性根はとても美しい。

そういえば、『キャリー』のシシー・スペイセクが年老いてボケが始まっているヒリーの母親として好演している。クレジットを見て知ったのだけど、まだ62歳と若いのに年齢以上に年を重ねているように映る。

北部のシカゴから母親を訪ねてくる黒人女性は白人と相対してもへつらわないシーンを取り入れ、当時からすでに南部の人権意識がおかしかったことを随所に織り込んだりするなど、少し長過ぎる感もあるにはあるが、本作を通して気になったり、興味をもったりしたところをまとめていけばずいぶんとアメリカの差別問題について学べるわけで、最初にも書いたように教育的な映画ではある。
2012.09.16 Sunday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:58 | - | - | -
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