すばらしくてNICE CHOICE

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私が、生きる肌 / La piel que habito

**点/100点満点中

『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥ・ハー』『ボルベール〈帰郷〉』の"女性賛歌三部作"で世界的にも大きな評価を得ているスペイン人監督ペドロ・アルモドバルが2011年に発表したサスペンスドラマ。原作はティエリ・ジョンケの小説『蜘蛛の微笑』。主演はアントニオ・バンデラス。製作費1000万ユーロ。

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スペイン・トレドの大邸宅に暮らすロベル・レガルは、最先端バイオテクノロジーを駆使した人工皮膚開発の世界的権威として知られる。その屋敷の一室には、初老のメイド・マリリアの監視の下、特殊なボディストッキングをまとった美女ベラが監禁されている。彼女は12年前に交通事故で全身大火傷を負い、その後自殺したロベルの妻ガルとそっくりだった。
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問題作や衝撃作と形容されている本作。レンタルする時も付けられていたポップに似たような事が書かれていた。確かに驚きはある。実際に起きたら大問題だろうが、たいていのことがそうであるように事実は小説より奇なりということは圧倒的に少なく、映画や小説の絵空事の世界で描かれる衝撃的な内容と比較してしまうとそれほどのことはない。

ただ、感想ひとつ書くにもどうしてもネタバレが必要となってしまう。このブログはそんなことはお構いなしに記述するのが通例ではあるのだけど、本作に関しては内容を全く知らずに見た方が、驚きと多くのツッコミを覚えることができて面白いと思う。だから、もしこれから本作を鑑賞しようと考えている方は先を読むことはお勧めしない。


正直書けば監督が何を描きたいのか分からない映画だ。もともとアルモドバル監督とは相性が悪い。心の底から面白いとは思わないのに作品の話題性などで主要作を見てきたこともあり、今回が特別ではないのだが。

娘ノルマを結果的に自殺させた青年ビセンテを拉致し監禁した主人公ロベルが、かねてより医者仲間と非合法な形で行っていた自宅での手術の一環として、ビセンテの男性器を切り取り女性器を形成させるという性転換手術を無断で強行する。

ここまではいい。道徳的には問題だろうが、愛する娘を襲った青年に憤る父親の心境を推し量ることは容易だし、報道される強姦事件の犯人のナニを切り捨ててしまえとは普段から思うところだ。ロベルがどうしてその手術を施したのか説明らしいセリフはひとつもないが、私が彼の行いに共感めいたものを抱くとすれば、もう二度と他の女性を悲しませないための処置だったからという理由だ。切り取るだけでも良いとは思うが。

しかし、ロベルは長い時間をかけてビセンテの肉体改造をさらに進める。乳房を作り、皮膚を張り替え、顔の形を変え、声帯まで取り換えてしまう。そして生まれ変わった女性としてのビセンテにベラという名前を与える。それの容姿はロベルを裏切り、結果交通事故で全身やけどを負い、それでも命だけはどうにか助かったものの、無残にも変わり果てた自分の姿に絶望し、娘のノルマの目の前で投身自殺した妻ガルにそっくりだった。

やがてロベルはベラに惹かれていく。ここの心境が一番の謎だ。ビセンテが姿形を変えて、亡き妻ガルとそっくりになったからといって、娘ノルマを結果的に自殺に導いた男なのだ。とはいえ理屈ではなく、心の奥底で感じる感情の揺れ、あるいは人間の業といったものを率直に描いている点では確かに面白い。

ふたりの微妙な関係を一気に突き動かす人間が現れる。ロベルには知らされていないが、ロベルの異父兄弟であるトラ人間セカの登場だ。彼こそは本作で理性に惑わされず本能のままに動くキャラクターとなる。ロベルの豪邸で家政婦として働く母マリリアを頼ってやって来た彼はベラを発見する。セカはかつてロベルの妻ガルを寝取った過去がある。ふたりはそのまま家を飛び出し、その逃避行の果てにあったのが自動車事故なのだ。同乗していたセカはどうにか逃げ出し無事だった。今回生き写しのベラを見て、ガルが生きていたと勘違いし、強引に抱いてしまう。

そこに帰宅したロベルはセカを撃ち殺す。そして、セカと自分の妻ガルが通じていたように、ベラがセカと体を重ねたことで、ますますロベルの中でガルとベラの同一化が進んだのだろう。ロベルのベラへの気持ちがよりはっきりしていく。かつて果たせなかったセカへの復讐を果し、また守り通せなかった妻ガルを、身体的にも、セカからも守ったことで彼の中の何かが救われたのかもしれない。

しかし、お気楽な人生を送っていたとはいえ突然狂わされたビセンテにとってはロベルの行いは悪魔の所業であり、彼への復讐の念を忘れることはなかったわけだ。

だからどうしたとは思うが、やっぱりこうなると相性の問題だろう。
2012.11.23 Friday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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