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<< ゾンビ・クロニクル2 / Zombie Apocalypse | main | 2011〜2012年国産ヒップホップ音源売上 その2 >>
無料配信ミックステープ12月号(2012)
2012年12月に発表された国産ヒップホップのフリーダウンロードミックステープの一覧。日本語ラップ情報サイトJPRAP.COM、並びに2Dcolvicsのおかげでこの1年間毎日のように新しいDL情報を仕入れることができ、音源と生まれたばかりの才能をいち早く堪能することができた。心の底から感謝です。もちろん、無料で音楽を提供して下さるアーティストたちにも最大級の賛辞を贈ります。ありがとうございます。



てっとり早くお勧めを教えてくれという方には上の3枚!左端は滋賀のNakajiが蛇名義で発表した新作。偏りがちな日本語ラップに鋭いクロスカウンターをぶち込む。真ん中が今年3枚目となるニコ動出身ラッパーRAq。当然必聴。右端は元ズットズレテルズのMCだった呂布がIOというラッパーとのコラボ作。ジャケットクリックでDL先に飛びます。



【○】NF Zessho『training EP』
2012.12.01 / 全8曲18分 / 320kbps / YouTube
以前は絶招として活動し、このNF Zessho名義では5ヶ月ぶり2本目となるミックステープ(前作はここから)。若いラッパーに顕著な日本語を崩しグルーヴを優先するラップはこれまで通り。フロウがかっこいいだけのラップから、リリックの内容や楽曲としても優れている方向にそろそろ向かってもいい。前作にはその片鱗が垣間見えたし、若くも才能溢れるアーティストだけに一歩進んだラップを聴きたい。


【○】maru-ai『fuck my life』
2012.12.01 / 全12曲36分 / 256kbps(m4a) / Twitter
1994年生まれ長野の現役高校生ラッパーの初作。同郷のBGYが率いるクルーのミックステープでも2曲で参加している。オリジナルと洋楽リミックスを混ぜた構成で、年齢を考えれば堂々としたラップを披露。M10ではB.I.G. JOEを彷彿させる感情過多なフロウを見せ、若さゆえの勢いだけではない。一方、歌フックの多用は良いが、ヴァースと噛み合わず悪目立ちする。歌詞に内容が欲しいけれど、さすがに求めすぎか。


【◎】蛇『悶談蛇頭』
2012.12.01 / 全13曲41分 / 320kbps / bandcamp
滋賀を拠点に活動している近江Records主宰のNakajiが蛇名義で発表した通算4作目のミックステープ。本作がフリーでの最後の作品になるのではと思うほどにこれまでに発表してきた彼の持ち味が存分に注ぎ込まれ、ひとつの到達点に達している。

三味線に始まるトラックからも明らかなようにレトロな音色を意識的に使ったビートは健在で、さらにラップ技術の高さを証明せんばかりに最新のビート(今回はジューク)をも鮮やかに乗りこなす。鋭くとがった攻撃的なラップと、古びた言葉ながら耳馴染という点でも郷愁を含んだ語感という意味においてもこれ以上ない単語を巧みな押韻を駆使して畳み掛ける。そして重要なことは、そうした道具立てに振り回されるのではなく、独自性の支えとしながら伝えたいテーマのための装置にしていることだ。

同時に彼が素晴らしいのはストーリーテリングの巧さだ。それはヒップホップ的な男の世界でだけではなく、艶歌としても発揮される。今回は名義を変えたこともあり、前半はやや陰鬱な雰囲気を漂わせるが、M6から一気に明るさを増す。ここでの転換は作品としての聴きやすさに繋がる。終盤の2曲での物悲しさにはこれまでにない説得力がある。

フリーダウンロードのミックステープはお金を出して買った作品に比べ粗雑に扱われがちだが、それでもその完成度の高さからしばらく経っても聴き直したくなるものがある。KAKATOだったり、LB、RANL、ミンちゃんのだったりするわけだけど、本作もそうした製品版では代替できない、ここにしかない良さがある。


【×】Siro da funk『ALIVE』
2012.12.02 / 全8曲30分 / 160kbps / Twitter
新潟のラッパー。昨年末にファーストアルバム『不夜城』をリリースしているようだが、その前の7月に8曲入りミックステープ『光明』を発表していて、彼のラップを聴くのはそれ以来となる。

本作はフリーDLする上で私が最悪だと考えることを全て行っている。気持ちいいぐらいに。無料ミックステープがブームとなり、国産ヒップホップだけでも月に30本前後が発表されている。そのまま商品化できるレベルのものから目も当てられないものまで、その出来はピンきりで、また作品の中身だけではなくその装いの作り込みも色々だ。大事なのは楽曲の出来なのはもっともだし、フリー作にどこまで求めるのかという話にもなる。しかし、本作の問題点を見れば分かるように、すぐにでも解決可能なことばかりだ。あとは曲さえ良ければ認知度をより高めることに繋がるし、丁寧な作りは音楽ファイルであっても聴き手の愛着にも繋がり得る。

.ファイルアップロードサイトにFirestorageを使用。
.曲順が分からない。
.トラックメイカーが不明。
.ビットレートがわずか160kbps。
.アーティスト名欄に客演を"feat."の形で付記する。
.ファイルの"読みがな"タブにご丁寧にも平仮名を記入。

のファイアストレージは少しでも混雑する可能性があるならば、DL先を多く作り対処するか、より安定したmediafire(最近は不甲斐ないが・・・)やLimelinxShareBeastRapidShareDepositFilesなど、ただで利用できるサイトがいくらでもある。

は言語道断だ。確かにDL販売の普及でアルバム本位から曲単位で聴かれることが多くなってはきたけれど、ひとつのファイルを落させてまとまった楽曲を聴かせるならば、そこには曲順によって作られる、アーティストが当初意図した展開があるはずで、それは大事な表現のひとつだ。曲順が分からずに、ただ"A"から並んでいる作品は本当に自分の表現物をリスナーに聴かせたいのか疑問だ。のトラックメイカーの名前が明記していないのはトラックを提供、あるいは許諾してくれたミュージシャンを侮辱しているとしか思えない。

シロダファンクの場合、数日後にアップしたブログ記事(それと発表の1週間前の記事にも)に曲順やトラックメイカーを掲載している。が、トゥイッター経由でダウンロードした場合、その大事な情報を手にすることはできない。アカウントのプロフィール欄にブログのURLを記載するだけでも違うのに、彼はそれすらもしない。以前に比べるとはるかに自分の売込みが容易になっている時代に、彼は少しも有効活用せず、楽曲が良ければそれでいいというスタンスを取る。ヒップホップ精神にのっとれば、リスナーは与えられたものを享受するだけではなく、自らの手で欲しい情報を探索すべしとなるのかもしれないが、本作に関していえばアーティストが怠惰で傲慢なだけだ。

のビットレートについていえば、それぞれに思惑があるだろう。誰もがパソコンからダウンロードするわけではなく、可能な限り小さい容量で配布する意図もあれば、今は低ビットレートで流し、後から販売用に高音質をというパターンもある。ただ、DJたちにクラブで流してくださいなどと宣伝しているファイルが128kbpsだったりするとどんな冗談だろうと思う時はある。

もまた人それぞれで、私のように不快に思う人間もいれば、情報タブの"アルバムアーティスト"を有効利用することでアーティスト欄に客演陣が入っている方が良いとする積極派もいる。トゥイッターなどでも周期的に起きる話題のひとつだが、前者の方がいささか多数派な印象だ。人それぞれということではも同じで、"読みがな"を記入すると、アルファベットのアーティスト名でも、例えば"Siro da funk"の場合だと、"S"の行ではなく、日本語の"し"の並びになってしまう。非常に不便だ。

不便でひとつ思い出したが、"歌詞"タブにもあった。リリックを記したことは素晴らしいが、一行空きの表記はアメーバブログみたいで見にくく、間が抜けている。

しかし、彼は"音量調整"を最大値の"+100%"にしていないだけまだマシなのかもしれない。とはいえ、無料ではあっても愛情と心血を注いで作り上げた作品であるのに、音楽以外のところで手を抜き、作品の魅力を半減させてしまうのはもったいない話だ。同じ新潟出身のラッパー・LBはフリー作品であっても細部まで丹念に作り上げ、巧みにネットを活用しているわけで、シロダファンクが彼の先輩に当たるのか後輩なのかは知らないが、しっかり見習うべきだ。

肝心のラップについては、過去があり今があるといった至極当たり前のことをドヤ顔で語る辺りが全てを物語るわけだけど、和をやや意識させたトラックに、不幸物語とそこからの脱出を与太者めいた口調で、前のめりの浪花節をも取り入れてつつラップする。そうした熱さを好む向きにはたまらないのだろう。客演している空也MCがひとり光っている印象だ。


【○】ZONE THE DARKNESS『日々』
2012.12.07 / 全11曲26分 / 160kbps / Twitter
配信終了。ゾーン・ザ・ダークネスのまさかのフリーDL作。彼は自分を安売りすることなくきっちり値札を(しかもやや高めに)付けるラッパーと考えていたので驚きだ。彼と同じ新小岩で育ち、現在は香港で働くトラックメイカーMarmelloが全曲を担当する。フックアップの意味合い、あるいは前半でのややアーバンな音色に合わせて、SALUを思い出させるフロウを試したりと実験的な趣を備えていることからも今回はフリーなのかもしれない。最新作の『DARK SIDE』よりリラックスした語り口で猥雑な街や気の置けない仲間たちを描写していく。Marmelloは5月に外国人ラッパーとのコラボミックステープを発表していて、それも聴き応えがある。→DL


【○】VA『On the RAWS (rework)』
2012.12.09 / 全10曲21分 / 320kbps / bandcamp
トラックメーカーが生バンドの演奏をその場で調理し、新しいビートを生み出すというOgiyy主宰のパーティ「RAWS-ONE」のネット版企画。募集で集まったビートは制作に24時間という制限があるためか、どの楽曲も素朴な味わいだ。じっくり煮込んだシチューではなく、浅漬けのような素材の瑞々しさを楽しめる。ただ、それが目の前で構築されるなら感動を覚えるだろうが、数多く出回るビート集のひとつとなるといささか味気ない。PigeondustやYoshinumaといった気鋭トラックメイカーが参加しているので、お気に入りのアーティストが普段見せない一面を垣間見られるという意味で面白いかもしれない。


【○】Andherpackage『Drawing EP』
2012.12.10 / 全12曲21分 / 320kbps / bandcamp
配信終了。4月にNaoto Taguchi名義で作品を発表し始め、やがてN▲OTO T△G▼CHⓘに表記が変わり、8月からは現在のAndherpackageとなったナオトタグチの、手元にあるだけで18本目となるミックステープ。ずいぶんと出したものだ。音はまた新たな段階に突入しているようで、攻撃的な弾けた音が繰り出される。特に後半が良い。


【○】DARTHREIDER『ROCKIN IN THE 90S VOL.0』
2012.12.11 / 全6曲15分 / 320kbps / blog
配信終了。M1の曲名そのままに、2012年12月12日が"ダース"の日ということで、Da.Me.RecordsのCEO・ダースレイダーの初フリーDLミックステープ。作品名から彼の傑作ソロアルバム『CHANGE YOUR WORLD』的なものかと一瞬期待させるが、今回はヘビーロックを中心にサンプリングしていて勝手な期待はものの見事に打ち砕かれる。録音の粗さや最後の歌物も含めて無料ならこの程度でいいかという思いが透けて見える。


【○】DJOKWR『JACKIN O MIX』
2012.12.11 / 全13曲45分 / 320kbps / blog
名古屋を拠点とする國枝UrbanCampの一員であり、DJオカワリ、O.della名義でも活動している1990年生まれのトラックメイカー。フリーDLミックステープの体裁としてとても理想的だ。リンク先に飛べば分かるように、参加者ひとりひとりを丁寧に紹介し、彼は以前から実施していることではあるが、1枚のファイルにまとめたバージョンとトラック分けした版を用意している周到さだ。彼が選んだ洋楽曲に同年代の若手MCたちが乗る趣向で、前半ではM4やM5に惹かれるものの、後半はクルー仲間のNIHA-Cの孤軍奮闘ぶりが際立つのみで、他はことごとく取るに足らないパフォーマンスに終わる。初のリーダー作ということで期待があっただけに残念だ。


【○】mikE maTida『Hey MIKEE vol.5』
2012.12.11 / 全6曲18分 / 192kbps / Tumlbr
2010年に始まるこのシリーズはその年に一気にVol.3まで出て、昨年『vol.4』(DL先)を、今年はKREVAの楽曲を丸々使ったミックステープもあったりして、そして待望のシリーズ最新作の登場だ。マイク・マティーダはご存じ大分県出身、現在は東京暮らしで、つまるところ杉並の星だ。リリックにあるように、Cherry Brownと共に正規リリースが待たれるフリーDL界隈の最後の怪物といえる。オリジナルトラック分では注目の若手トラックメイカーのひとりistが2曲を提供し、L-VOKALが参加したりと内容は盛り沢山。M1で宣言している来年発売予定のアルバムが待ち遠しい。


【○】KILLASUGA『SUGAR FREE vol.2』
2012.12.11 / 全12曲37分 / 192kbps / Twitter
F.E.S(FarEastSiders)というクルーに所属し、池袋を拠点に活躍するソロラッパーによる4月に発表した『vol.1』(DL先)に続く第2弾ミックステープ。スワッグを自称し、マネー・ビッチ・ドラッグをテーマにラップし続けるのかと思いきやM3でセーフセックスを唱え、自分の誕生パーティを面白おかしく語り、おでんをネタにしたり、今年2月にFBIによって閉鎖に追い込まれたアップロードサイトMegaUploadへの哀悼の意を表したりと、切り口がユニークだ。しかしそれも続かず、その後は紋切型の社会批判となり、意外性が失われる。基本姿勢は前作と変わらず、洋楽トラックのリミックスを主体にしたイケイケなラップであり、全く好みではないが、前半だけは上述した通りに楽しんで聴ける。


【○】DJ PERRO『Please use in order to stop a nuclear』
2012.12.12 / 全9曲28分 / 320kbps / bandcamp
配信終了。北海道を代表するMIC JACK PRODUCTIONの屋台骨のひとりであり、DOGGやP.QUESTION名義でも活躍するDJペロのビート集。空虚なだけの派手な鳴りを廃し、良くも悪くもストイックな音が詰め込まれている。一番強く主張しているのは作品名だ。ラッパーによるリミックスというといまだに向こうのヒット曲が定番だけど、日本人が作る良質なビートもこうして日々アップされているわけで、本作の音に反原発のメッセージを乗せる乗せないは別にして使ってみるのも一興だ。


【○】MIRROR『Gently The Blackness』
2012.12.12 / 全6曲16分 / wav / blog, Twitter
大阪のラッパー、ミラーが同郷のトラックメイカーFAT ONE TRACKSと作り上げた新作。ブログや事前にアップされた動画の説明から、もしかしたら本作の名義は題名と同じかもしれない。いずれにせよ、ジャケットが端的に表しているように、大阪でイメージさせる音とは違い、非常にスムースで成熟した音の上で、その雰囲気の良さを邪魔しない、しなやかなラップを乗せる。大阪ということもあり韻シストのラップを連想する。


【○】T@K『Let'S Dance』
2012.12.12 / 全7曲20分 / 160,192kbps / YouTube
今年のBBOY PARK MCバトルでは踊らせるフロウで魅了していた大阪の20歳のラッパー。把握しているだけで本作で4本目となる。Japp pepperというラッパーと72SKaleというユニットを組む。ダブステップのビートをリミックスするという挑戦心は買うものの、M7でham-Rの名前を出し同じ曲に乗っているが、彼のようには印象的なフレーズを残せず、音としてはビートの荒波に乗れても、日本語としては溺れてしまう。フリー音源を"遊び"(blog)とし、果敢に新しい試みに挑む姿勢は正しいが、夏にリリースしたミニアルバム『Neverland』で見せていた素直なラップも時には聴いてみたい。


【○】VA『W Record vol.01』
2012.12.12 / 全8曲27分 / 320kbps / HP
渋谷シネマライズの地階劇場だった場所に、2010年音楽チャンネル・スペースシャワーTVがライブハウスWWWを作り、そのWWWが今年立ち上げたレーベルがW Recordとなる。"多様なジャンルから気鋭のビートメーカーをフューチャーするべくLAの人気パーティー「LOW END THEORY」の名物企画「BEAT INVITATIONAL」とタッグを組んで"発表との説明がなされているように、本作はテクノ畑の日本人アーティストを中心としたビート集となる。ヒップホップ畑からはstillichimiyaのYOUNG-GやSIMI LABのOMSB、ILL.SUGIとの活動でも知られるyagiらが参加。また日本語ラップ勢に楽曲を提供しているJemapurやHimuro Yoshiteruもいる。参加陣は確かに興味深いが、面白いかと問われると微妙。


【○】3ISLE『LOST STEEZ』
2012.12.14 / 全8曲25分 / 160kbps,wav / YouTube
北海道札幌市の東に位置する北広島市在住のラッパー・スリーアイル。本作にも参加しているDaCowやKou(KOH?)と組んでいるRa-Tribeの一員でもある。JPラップコムが今年9月に出したミックステープ『REV TAPE VOL.1』(DL先)にもM4が収録されていた。そのM4はQNが昨年発表したビート集からのインストであり、他のトラックも洋邦混じったものとなる。それらの上に乗せられるフロウは今はやりのスタイルで、確かにまたこの手のラップかという声に同調したくなるが、フロウに破綻がなくすでに自分の物としているため安心して聴ける。その手のラップでは特にパンチラインが重要となる。流暢なフロウだけに言葉が右から左に流れて終わってしまう自称スワッグが多い中、彼は最後の最後で、"向上心が俺を眠らせない"という強烈な言葉を繰り出し、一気にラップが光り出す。耳を惹きつけるフレーズは大切だ。


【◎】RAq『Detention』
2012.12.14 / 全7曲20分 / 320kbps / blog
いきなり冒頭にKEN THE 390が主宰するDREAM BOYを名指しで批判していると話題になった「超嫌い」が収録されている。大阪のラッパーがすぐさま追従に走り、ラックへのろくでもないディス曲を発表(YouTube)したがすぐに返り討ちに合っていた(YouTube)。M1をさらに説明したのがM2であり、その大阪のこわっぱが出した2本目(YouTube)への返答も兼ねているのだろう。しかし、M2はそんな小さいテーマに留まる曲ではなく、いまだ社会全体に重く漂う同調圧力への強い疑念を含んでいる。HAIIRO DE ROSSIがshow-kとのビーフの際に、"理想も語れないMCは肉だ"とラップしたことにハッとさせられたが、本作での前半の3曲にも同じように背筋を伸ばさせる力強さがある。一方、主義主張に引きずられることで、持ち味である軽快なフロウが失われているが、それでもラップに力がみなぎり魅力的なリリックがここには確かにある。

終わりの2曲は"結構前の曲"と説明にあるが、M6は11月に、M7は5月にニコニコ動画にアップされていて、それほど前にも思えないけれど、彼の状況の変化を考えると実感として"結構前"になるのかもしれない。その2曲もまた今回のテーマに関連している。特にM7では"KEN THE 390は良い人でラップは下手"とまたずいぶんときれいに的を射た歌詞が含まれる。最初から首尾一貫していることがうかがえる。


【○】乳歯人BEATS a.k.a. DJ Koki『乳歯人BEATS REMIXES VOL.1』
2012.12.14 / 全14曲49分 / 320kbps(m4a) / SoundCloud
東京在住の弱冠20歳のトラックメイカー。同い年のBeats ZanとプロデュースユニットRole Model Tracksを組んだりもしている乳歯人ビーツが、初作となる先月の刺激的なミックステープ(DL先)に続き、2作目の本作はまとまることをかねてより待ち望んでいた日本語ラップ・リミックス集だ。前作でも声ネタ程度の取り入れ方はしていたが、今回はラップそのものを聴かせるリミックスとなる。ただ、あれだけ暴力的な気持ちの良い音を先に聴いてしまったので、不幸ではあるけれど、今回は刺激という点で薄い。彼が得意とする荒れ狂うビートは般若や漢、A-Thug、RUMIのようなアクの強いラッパーだけが堂々と立ち向かうことができるもので、中盤に物足りなさが生じる。般若を多く起用しているのもそういうことなのだろう。しかし、M3の彼のラップは本当に最低で楽しい。


【○】前迫潤哉『oidon』
2012.12.17 / 全17曲47分 / 160kbps / HP
鹿児島出身で現在は東京で暮らすR&B歌手の初ミックステープ。日本語ラップのフリーDL界隈でよく見かけるOtowaやRESTiBTRAX、gesubiらによるオリジナルトラックとリミックスが半々となる構成で、柔らかくいかにもR&Bといった雰囲気の歌声が乗る。中音域のマイルドさには魅力を覚えるものの、EXILEならそれでいいのかもしれないが高音だと苦しく、聴き続けると曲数が多いこともあり、粗がどんどん見えてくる。声質とも相まって、熱いテーマであっても歌詞が空疎。本人は面白いと思っているらしいスキットにしても全く笑えず、最後のネタとなる江南スタイルリミックスにいたってはダダスベりだ。初歩の音量調整すらできていない(M5に注意)わけで、ミキシングの出来は推して知るべし。R&Bからのミックステープはまだ物珍しさがあるが、無料でも1周できるかどうかという作品。


【○】Enya-Sang『まさかサイドカーで来るなんて』
2012.12.17 / 全7曲28分 / 192kbps / HP
ヒップホップのミックステープを紹介する記事に、本作を取り上げるのは場違いかもしれないが、名古屋のヒップホップレーベルJET CITY PEOPLEと近い関係にあり、鷹の目がリミックスを手掛けたりもする(DL先)わけだけど、まず何より音楽性が独特で面白いのでこの記事に並べてみた。エンヤサンはボーカルを担当する兄のY-クルーズ・エンヤと、その実弟でギターやトラックメイクを担うJr.TEAによる兄弟ユニットとなる。

直前に発表された兄Y-クルーズ・エンヤのソロフリーDLシングル(DL先)ではフィッシュマンズを彷彿させる浮遊感のある歌声を聴かせていたが、本作では今や飛ぶ鳥を落とす勢いの星野源を連想させるアコースティックなポップスとなっている。吹っ切れない想いを歌うM3やポエトリーリーディングを取り入れたM5に特に惹かれる。しかし、聴き手とは本当に勝手なもので、真面目な路線の楽曲が収録されていると今度はシングルにあったエロさが足りないと思ってしまうのだ。そのバランスはやはり難しいのだろうか。


【○】MICHO『THE MACHINE』
2012.12.18 / 全13曲46分 / 320kbps / Twitter
歌を大胆に取り入れ聴きやすさを意識した3月発表の前作(DL先)での予想外の良作ぶりに驚かされ、キャッチーな「ジャパニーズギャル」も生み出しつつ、TOKYO SOUTHからの仲間であり、彼女を全面的に支えるプロデューサーJOE IRONが先月出したリーダー作(DL先)では7曲で活躍と、まだまだ少ない女性ラッパーの中でもコンスタントに曲を発表しているミッチョの今年2本目となるミックステープ。

前半は以前のような攻めのラップに固執することで、期待をあっさり裏切る。ラッパー魂を忘れない姿勢は褒められて然るべきものだけど、ラップ技術そのものについては依然として平均点以下なのを忘れてはいけない。SCARSのSTICKYやEGOらが参加するもたいした手助けにはなっていない。女性ラッパーだってハーコーなスタイルがあっていいし、その方が面白い。ただ、男女の区別は関係なしに、そこでは言葉のセンスが問われる。本作は全体的にその要素を失いがちだ。M8から歌を取り入れているも、聴けるのはM11のみ。


【○】KLOOZ『It's My Turn XenRoN Remix EP』
2012.12.18 / 全6曲16分 / 320kbps / Tumblr
配信終了。今年はクルーズサンタだけではなく、シェンロンサンタも現れて、1週間限定でのプレゼントを振る舞ってくれた。その趣向に沿う形で音を表現するなら、キラキラと点滅する電飾とツリーを美しく飾り立てるモールやオーナメントのようなまばゆく親しみやすい音使いであり、インタールードを挟み、音の表情をがらりと変えるなど、全体の構成も小気味良い。客演のY'sやGoku Greenのようなのっぺりとしたラップに明るい配色が意外に映えて聴きやすさの増す配慮がある。その一方で、表題曲でいえばY.G.S.Pが手掛けたリミックス(SoundCloud)との比較が分かりやすいのだけど、ビートに強さがないのは気になる。その代わりに、いつになく力強いクルーズのラップだからこそだとは思うが、複雑に色を重ねたトラックを敢えてぶつけていて、そういう意味でも非常にスリリングだ。全体のデザインも含めシェンロンというトラックメイカーが持つ強みを凝縮した作品になっている。


【○】ANPYO & PARKGOLF『1990』
2012.12.19 / 全5曲19分 / 320kbps / Twitter
8月にBUZZ BOXのMC、VANILLAとダブル名義でミックステープを出している日本語ラップウェブマガジンCOMPASS出身のラッパー・あんぴょうが今度はトラックメイカーのパークゴルフと共に5曲入りを発表。先の作品がバニラの勢いの良いラップに牽引されていたからこそ良作になったのだということが詳らかになる。緩めの聴かせるラップを試みているが、厳しい仕上がりだ。一方のトラックは魅せる絵を描きつつもその筆致は淡く、音とラップの相性は悪くないもののふたりして押し出しが弱い。ならばとM3でイルリメっぽいポップさを指向するも反対に作品の雰囲気を壊してしまう。


【△】雪猫『お別れ.zip』
2012.12.19 / 全5曲18分 / 320kbps / ニコニコ動画
愛媛県在住のニコ動ラッパー。本作では祖母を亡くした悲しみをラップする。その深い嘆きはリリックから理解できても、ラップそのものが稚拙であり、表現への理解となるとかなり難題だ。オートチューンをかけてもごまかせない歌唱力のなさも問題。


【○】PR0P0SE『PR0P0SE』
2012.12.20 / 全7曲25分 / 320kbps / HP
tofubeatsとのコラボでも知られるラッパー・オノマトペ大臣とそのトーフビーツと同じ大学に通う友人でもあるthamesbeatのふたりが新たに組んだユニット。アーバンなトラックの上で青春と恋心と日常を少しのロマンティックで味付けしたラップを乗せる。本作は評価も高く、気に入りたいのだけど、いまだにオノマトペ大臣のラップと相性が悪い。M4にかなり惹かれるが、M5からの調子っぱずれな歌パートにポップスになろうと試みて、でも敢えて外すといった作り手のひねくれ心を感じてしまい、微妙な出来という印象に終わる。


【○】A$K×DJ ABELT『Project Again』
2012.12.20 / 全18曲35分 / 320kbps / blog
新潟の20歳になるラッパー・アスクとDJアベルトとのダブル名義ミックステープ第2弾。5月に出した『Project A』(DL先)の続編となる。最新洋楽トラックにアスクがラップを乗せるリミックス曲を本来的な意味でのミックステープのようにDJアベルトが繋いでいく趣向は変わらない。サンプル元との組み合わせなど面白いが、その一方で肝心のラップは原曲のフロウのトレースであることが多い。習作ではそれも仕方ないにせよ、言葉をビートにただ乗せるだけではなく、言葉遊びでもいいから耳に引っかかるラップが欲しい。


【○】NICE GUY$『Kissin n Dreamin』
2012.12.22 / 全11曲38分 / 320kbps / Twitter
OH!KISS、赤いリボン、THUGRAS、BLACKMONNEY、kkmi、そして女性ラッパーのlil Mらからなり、一部で高評価を受けている東京のヒップホップグループ・ナイスガイズの初作。中心はオーキスと赤いリボンというふたりのラッパーと、サグラスとブラックマネーが作り出す黒いループトラックのようだ。ERA後のフロウで日常を活写するやさぐれ社会人ラップともいう感じで、リリックの雰囲気はBLACK SMOKERにも近い。ヒップホップ本来のかっこ良さを体現しているといえるのだろうが、アクの強さの前に尻尾が丸まってしまう。


【○】VA『LOW HIGH WHO? NEWS LETTER LIMITED FREEDOWNLOAD ALBUM Vol.2』
2012.12.22 / 全14曲52分 / 160kbps / mail
Paranel主宰のLOW HIGH WHO?から今年もクリスマスプレゼントが届いた。HPから一度でもフリーDLしたことがある人にはきっと届いているはずだ。今年は6曲の既発曲と8曲の未発表曲から成り、旬のdaokoを始めとしたレーベルメンバーの楽曲が揃う。来年から加入するwaniwaveのお披露目ともなっている。所属アーティストは増えたけれど、理知的な音を基調とするそのカラーにブレがなく、充実しながらも静かな躍進だった2012年に引き続き、2013年も信頼できるインディーズレーベルであり続けるのだろう。


【○】Ryohu×IO『Fellas Ship』
2012.12.23 / 全7曲22分 / 192kbps / Tw,SoundCloud
ロックバンドOKAMOTO'Sの中核メンバーが組んでいた日本語ラップ×ファンクバンド、ズットズレテルズ(解散後アルバム1枚をリリース)でMC担当だった呂布がIOと共に出したミックステープ。呂布は以前からサウンドクラウドにラップ曲を発表していて、そのどこかさんピンCAMP期の懐かしさを感じさせる語り口の優しいラップに惹かれていたのだけど、今作でも孔雀の菊丸を始めとした仲間を多く呼び、リラックスしながら自分の街をクルージングしている感のあるラップが非常に心地良く響く。


【○】Leaseka『Dive to droom』
2012.12.23 / 全7曲15分 / VBR / Twitter
以前LHW?に所属していたmocsmallとのんかによるユニット・リーセカの、7月のデビュー作『1 week rain』(DL先)に続く第2弾。世紀末に飛び込むのか部屋で没入するのか分からないが、エレクトロなインスト曲はM7の曲名の世界に到達する音の旅のようだ。一方で歌の入るM2やM4では途端に耳馴染の良い音となり、こちらが"room"なのだろうか。収録時間が短いこともあり全体として音に統一感が失われていて、もったいない印象を受ける。"doom"な音をもっと聴きたい。


【△】Takachangman & TAKUMI『Re: Poppin' Luv』
2012.12.24 / 全8曲31分 / 128kbps / YouTube
矢継ぎ早にミックステープを濫造し続けているようにしか映らない東京の20歳になるソロラッパー・タカチャンマンが7月の『Poppin' Luv』(DL先)に続く歌手のタクミとのコラボ作第2弾。ラップには目に見える成長がなく、また歌い手は歌唱力のなさをオートチューンでごまかそうとするが、その掛け方の粗さが出来をさらに酷くしていて目も当てられない。


【○】mototag『mototag ep』
2012.12.24 / 全8曲15分 / 320kbps / bandcamp
長崎在住のdj motoraと博多のOilworks.rec所属のトラックメイカー、ナオトタグチによるユニット・モトタグからのクリスマスプレゼント。さすがにナオトタグチのソロ名義ではないために、得意の音のよれは弱めで、いくらか流麗さを感じさせるぶっといビートが集められている。


【○】Lil'諭吉『Ghetto Pop Idol』
2012.12.24 / 全5曲19分 / 320kbps / bandcamp
配信終了。チェリー・ブラウン/リル諭吉からの今年のプレゼントは本作。女性アイドル曲をリミックスしている。とはいえ楽曲の一部に手を加えるというよりも、素材として一部を利用することで全く新しい魅力を引き出そうとする。同じリル諭吉名義で2月に発表した『FewScoops』(現在視聴のみ)の続編なのだろう。M4でのしっとりとした雰囲気は素晴らしく、後藤真希を誉める日が来るとは思いもしなかった。オマケもあって、ロシアからの逆輸入ギャングスタラッパーKAAKOの曲があるのは嬉しい。


【×】3.2ch『RAPLOID -vol.1-』
2012.12.26 / 全7曲26分 / 192,320kbps / Twitter
徹頭徹尾ダサい。久し振りにこんなにも肌に合わないラップを聴いた。"3.2ch"と書いて"みずち"と読む、1991年生まれのニコ動ラッパーらしいが、最近はニコニコ動画出身のラッパーたちもかっこいいフロウを聴かせ、その差がなくなりつつあるのかなと思っていたところに、ニコ動から連想させるラップがむき出しのままイヤホンから流れ込んできたものだから唖然とする。ただ、その揺るぎのなさは完成度といい換えることも可能であり、また、私が感じるダサいという感情は結局のところアメリカのヒップホップに多大な影響を受けたさんピン以降の価値観でもあるわけで、3.2chのラップは正しく純国産といえるのだろう。とはいえ、ギターの音色を利かしたトラックも含めて、全てが受け付けない。


【△】3.2ch『音戯話』
2012.12.26 / 全8曲35分 / 192kbps / Twitter
その3.2chが同時に出した2枚目が本作。息も絶え絶えにスタートボタンを押したが、ビートは耳慣れたヒップホップ寄りで、また客演陣にはよく見かけるラッパー(WARUSHIの安心感よ)が揃っていることもあり、先程のに比べるとまだマシ。が、油断していると後半で足を引っ掛けられ、膝から崩れ落ちる。しかしフックの歌はラップ以上に難ありだ。あと、show-kがこんなところにまで顔を出して、いつもの演説をぶっているのが興味深い。


【○】COMPASS POSSE『COMPOSITE : kerberos remixes』
2012.12.27 / 全10曲46分 / 320kbps / bandcamp
今は亡き日本語ラップウェブマガジン・コンパスの主力メンバー(上記のあんぴょうも参加)が昨年再結集し、なんとペンをマイクに持ち替え「COMPOSITE」という曲を発表(SoundCloud)した。それぞれの想いが詰まった聴かせる曲で、それをピジョンダスト名義で普段活動しているケルベロスがひとりで8パターンものリミックスを作ってしまったのが本作。どこか似た雰囲気を漂わせつつ、バリエーション豊かに仕上げてくる辺りは若手トラックメイカーの中でもひとり突出しているだけある。歌謡曲を使った異色のM7が特に良い塩梅だ。


【○】Andherpackage『Sundance.LP』
2012.12.27 / 全21曲49分 / 320kbps / bandcamp
配信終了。今月2本目のナオトタグチの別名プロジェクト。珍しくLPサイズ。例のよれた音(覚えた)でラップ曲が多めにリミックスされている。気に入ったのはM15以降の後半のメロウなインストか。


【○】ssRAMUNE『佐倉杏子DEMO ver.2.0』
2012.12.28 / 全6曲15分 / 160,192kbps / YouTube
題名の女性の名前はテレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の登場人物だという。そのアニメを知らないが、全編で使われている声ネタやエピソードがそうなのだろう。アニメのキャラクターに向けたラップは気持ち悪いとしか思えないが、でも映画の中の架空の人物になりきったり、自己を投映するラッパーも多いわけで、人それぞれだ。もっといえばブロガーがネットで好きなものを語るのと同じく、ラッパーが好きなものを曲にすることに何ら違いはない。ラップそのものは普通でテーマの新しさ以上のものはない。


【○】Skare Skale『Sketchbook』
2012.12.28 / 全9曲29分 / 192kbps / Twitter
1989年生まれの栃木県育ち、ニコニコ動画を中心に活動をしているソロラッパー、スケア・スケイルのこの3年間のラップから再録曲を中心にまとめたミックステープ。序盤の2曲を聴くと感受性が高く詩的な表現に向かうことに納得できるが、リリックが説明的だったり、押韻を意識するためか選んだ言葉が日本語として不自然になってしまうことが多い。またビートに素直にならず刃向いがちな点ももったいない。ただ、声質が良いのでラップの印象自体は悪くない。M7では子持ちの人妻との不倫をラップしていて珍しくも面白い。


【○】Mr.officeBeats & LilWest『無言以降』
2012.12.28 / 全11曲29分 / 192kbps / HP
大阪のトラックメイカー兼ラッパーMr.オフィスビーツとトラックメイカー・リルウエストが前月リリースのCD-Rインストアルバム『無言』に続けて発表したラップ曲入りのミックステープ。インスト曲も多く含まれているが、ふたりの音は無表情なものが多く、取り立てて興味を惹かれない。一方でMr.オフィスビーツがラップする4曲は大阪特有の粘りのあるフロウが冴え、また歌えもするので一気に華やかさが増す。


【○】VA『おならBOOの「BOOST COMPI」vol.1』
2012.12.29 / 全14曲54分 / 320kbps / blog
ネットでも日本語ラップに触れている人は、その呟きやユーストリームなどを通して一度は目にしたことがあるだろう界隈の有名リスナー、おならBOOさんが発表したコンピレーション・ミックステープ。リンク先のブログ記事にもあるように、フリーDLのコンピはまだまだ少ないし、新曲のみとなると皆無に近く、本作は快挙といえる。

無料配信の一般化や録音環境の向上化で演者と聴き手の境がますますなくなり、同時に、問題をはらみつつではあるけれど、両者の垣根も低くなる一方だ。それなのにこのようなコンピがこれまでなかったのには理由がある。単純に難しいからだ。行動しなければ何も始まらないが、ただ動いただけでも困難が待ち受けている。

ひとつにはまとめる側の"信頼"が問われることが大きい。日本語ラップ界の発展や啓蒙に尽力し、聴き手の代表ともいえるおならBOOさんだからこそ、これだけの若手有力ラッパーや気鋭トラックメイカーを全国から集められたのだ。神戸のP-PONGやSNEEEZE、京都のYAMAO THE 12、金沢のCARREC、黒ギャル派代表Yuto.com™、長野を盛り上げているバギーに、ニコ動から全国区に駆け上がろうと虎視眈々狙っている若武者RAq、とフリーDL界隈でも人気の役者が顔を揃え、さらにはラッパ我リヤの山田マンまでいる。この布陣を整えられるのは並外れた人望があってこそだ。

もうひとつ問題なのはディレクション。本作発表直後に、アイドルグループAAAに属しながら本格的なラッパーとの評価も獲得しているSKY-HIがお祝いの呟きを彼に送っている。彼のファーストソロアルバムは客演が多く、その難しさを身を持って体験したに違いない。以前から好きで自らお願いしたアーティストの楽曲にどう判断を下すのか。その如何によっては両者の関係にヒビが入りかねない。しかし、その曲の出来がどうなのか第三者的な冷徹な視点を持つ必要がある。アーティストがその時点でのベストを尽くしたと確信する新曲であっても、いざ受け取った作品が期待を下回る時にどうするのか。

今回はリスナーが制作するコンピだが、二十歳前後とはいえ実力十分のトラックメイカーのBeats Zanとdjokwrがそれぞれ10月(DL先)と今月(DL先)にリーダー作を発表している。それを聴けばその困難さが明らかだ。加えて自分の名前を冠する作品ともなると、それまで築き上げてきた信頼やブランドにも影響を及ぼす。

そうした中で敢えて無料でコンピを制作し、ベテランから新鋭ラッパー、まだ知られぬグループまで発掘し、紹介しようとする意気込みは本当に素晴らしい。そしてディレクションを強化した第2弾が待たれる。


【△】CHESTNUT『BELIEVE』
2012.12.29 / 全18曲70分 / 256kbps / YouTube
東京在住24歳のニコ動ラッパー・チェスナットが、病気明けに出した前作(DL先)から約4ケ月の短い間隔で発表した新作ミックステープ。その前作はしっかり想いの入ったリリックが並ぶ聴き応えのあるものだったが、本作は冒頭M1のフロウで早くもげんなりさせられ、小学生が綴る作文のような同じことをダラダラと描写するラップに辟易させられる。テーマも似通っていて、ラップすること、クレジットカード怖い、ピーターパンになりたい、仲間大事、彼女も大事と、本編14曲がわずか5曲で収まる。しかし彼はそれを水増しするものだから無駄に収録曲が多くなる(ただでさえリリース量が激増するこの時期に!)。どちらかといえばボーナストラック扱いの曲の方がまだ楽しめる。ニコ動ラッパーに限らずだけど、3ヴァースにフック3つという構成に必ずするのはそういう取り決めみたいなものがあるのだろうか。思い浮かばなければ、1ヴァースのみでいいだろうし、魅力が皆無のフックを繰り返す必要はない。


【○】Andherpackage『Adult.Mood.Type.Prt.1』
2012.12.30 / 全12曲29分 / 320kbps / bandcamp
配信終了。年の瀬も押し迫ったこの時期の最後の1本は彼でした。さすが。DJモトラとの共作も含めると今月4作目。そうなると2012年の落とせたものだけで21作品。その間には正規アルバムもリリースしたようだし、その多作ぶりは群を抜く。今作は静寂さから荘厳さまでも醸し出すビート集になっていて、年末年始の静かな街の雰囲気を音にしたかのよう。いい。




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<まとめ>
2010年〜2011年1月〜9月分 Tegetther
2012年1月分 blog
2012年2月分 blog
2012年3月分 blog
2012年4月分 blog
2012年5月分 blog
2012年6月分 blog
2012年7月分 blog
2012年8月分 blog
2012年9月分 blog
2012年10月分 blog
2012年11月分 blog

・「JPRAP.COM presents "The Se7en Deadly Sins"」 →記事(2011.05.26記)
  2010年の主要フリーダウンロードミックステープについてもある程度まとめてある。
・「昨今の国産ヒップホップ・無料DLミックステープ事情」 →記事(2011.09.30記)
  2011年前半の作品に焦点を当てて書いた記事。
・「VA『Fat Bob's ORDER vol.1』」 →記事(2011.10.07記)
  記事の最後に名古屋関連のミックステープのまとめがある。
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2012.12.31 Monday 23:54 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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