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ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 / Life of Pi

94点/100点満点中

2001年に上梓されブッカー賞に輝いたベストセラー小説を、『ブロークバック・マウンテン』『ラスト、コーション』のアン・リー監督が3D映像化。サバイバルアドベンチャー。フランスの名優ジェラール・ドパルデューがチョイ役で出演している。製作費1億2000万ドル。2013年公開作品。

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小説のネタを探しにカナダ人作家はパイ・パテルというインド人男性を訪ね、驚愕の冒険譚を聞く。パイは、かつてフランス領だったインド東部の街ボンディシェリで私営動物園を営む一家に育つ。16歳の時、家族はカナダへの移住を決意。一家は動物たちと共に貨物船に乗り込むが、太平洋上で嵐に遭遇し船は沈没。運良く救命ボートに乗り移れたパイだったが、同じように逃げ延びてきた4匹の動物と相乗りに。中でも"リチャード・パーカー"と名付けられていたのは獰猛なベンガルトラだった。最大搭載30人の小さいボートで巨大な肉食獣との漂流生活が始まる。
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これはまたすごい物語をぶち上げたものだ。原作も当然素晴らしいのだろうが、映像の魔法をふんだんに効かせ、映画だからこそ可能と思わせるほど魅力的な世界をアン・リー監督は作り出している。物語と映像というふたつの巨大な力を正しく、かつ最大限に発揮させているからだ。

127分と比較的長めな上映時間の序盤、パイ・パテルという中年の男が作家に求められるがままに身の上話を語り出す。このパートに結構時間をかけていて、最初のうちはトラと少年とのサバイバル生活の映画を見にきたはずなのに何だか様子がおかしいぞと思うのだけど、インド人が主人公の物語らしく、ヒンドゥー教、キリスト教、そしてイスラム教とかの国に根付いている宗教の話はパイ一家の教育方針のユニークさもあり、次第に楽しんで見られる。

そして大嵐に遭い、乗っていた船が沈む。16歳のパイ少年は大海原に浮かぶ救命ボートにひとり取り残される。ただ、船には人間は彼だけだが、呉越同舟する動物たちがいて、脚を怪我したシマウマ、気性の荒いハイエナ、オランウータンのオレンジジュース、そして問題のベンガルトラの"リチャード・パーカー"だ。彼の父が経営する動物園にそのトラがやって来た直後のエピソードもあり、人間と動物(それはあるいは"神"もそうなのかもしれない)という決して相容れない関係は、生存を賭けた現実的な対立以上の意味合いを含ませながら、その時々で距離感は違うものの物語の最後まで緊張を持続させる。

そうして始まったパイの漂流は、トラとの関わりに注意しながら、何とかして食糧確保に苦心するサバイバル生活であり、ひとつの失敗から多くを学び、自然の大きさに感動し畏怖しその無情さに嘆く日々となる。

本作は3Dだ。たいていの3D映画にとってその技術は不要であり、このブームが早く去ればいいと願っているわけだけど、本作の主人公パイや観客が洋上で目にする光景の数々は今まで見たことのない事象が多く、『アバター』がそうであったように、非現実的な印象を強く抱かせる3D技術がうまく機能している。

物語の後半、不思議な島(寝釈迦の形をしている)に漂着するなど、回想という形を取り現実に起きた話という一応の設定にも関わらず、幻想的にも限度があるだろうと感じる展開を辿る。それ以前にもあったいくつかの不可思議すぎる現象には目をつぶってきたが、後半に入るとミーアキャットの生態を持ち出すまでもなく不自然さが目立ちだし、3D技術を使い荒唐無稽にやりすぎているのではないかと興醒めしかける。しかし、そんな気持ちをクライマックスのひと言がガツンとやってくれて、目が覚めることになる。その揺れ戻しが本作の本当にすごいところだ。その直前にもめくるめく冒険譚を全否定するシーンがある。それまでの摩訶不思議な体験談を台無しにする演出であり、折角の良質なファンタジ映画を壊さないでくれと見ながら嘆くが、そうしたこと全てをひっくるめた上で、パイは漂流物語の意味を静かに私たちに教えてくれる。

227日間も続いた狭い救命ボートでのトラとの生活という誰もが驚嘆する想像力に富んだ物語と現実。そしてラストでその現実が私たちを襲う。私たちもまた彼らの選択に素直に従うしかないのだ。空想物語のとてもいい面を捉えている本作は、矮小な比較であることを十分理解しているが、月に数回となく映画館に足を運ぶ私たちを肯定しているようで、シンプルながらも3D効果をうまく使ったエンドロールを見やりながら、しみじみと感慨にふけった。


ホームページに掲載の制作ノートやウィキペディアによると、トラは全てCGだそうだ。『ナルニア国物語』を手掛けたCG制作会社リズム&ヒューズ・スタジオの手によるもので、同作を見たリー監督が、"ナルニアのライオンよりリアルにしたい"と依頼したという。正直いって本物のトラを使っていると思っていた。すごい調教師がいたものだと。それほどまでにリアルなのだ。表情、四肢の動き、毛並。CG技術の進歩はハリウッド映画を見てある程度理解しているつもりだったが、見慣れた動物までもがここまで精巧に再現できていることに心底驚かされる。


【追記】2013.02.01
フランスで行われた試写会は臨場感に満ちていたそうだ。劇場の椅子に普通に座っているだけでも、少し酔いそうになる場面があったぐらいだから、主人公パイの心境により近づける鑑賞になったことだろう。→レポート記事
2013.01.29 Tuesday 23:59 | 映画 | comments(0) | trackbacks(1)
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2019.08.20 Tuesday 23:59 | - | - | -
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