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リンカーン / Lincoln

87点/100点満点中

スティーヴン・スピルバーグ監督最新作。第16代米国大統領エイブラハム・リンカーンの最晩年を描く伝記映画。主演は本作で3度目のアカデミー主演男優賞に輝いたダニエル・デイ=ルイス。共演にサリー・フィールド、トミー・リー・ジョーンズ、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットら。第85回アカデミー賞では12部門で候補となり、他に美術賞を受賞。製作費6500万ドル。2013年公開作品。

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南北戦争末期の1865年。国を二分した激しい内戦は既に4年目に入り、戦況は北軍に傾きつつあったが、いまだ多くの若者の血が流れ続けていた。再選を果たし、2期目を迎えたリンカーン大統領は、奴隷制度の撤廃を定めた合衆国憲法修正第13条の成立に向け、いよいよ本格的な多数派工作に乗り出すも、修正案の成立にこだわれば、戦争の終結は先延ばしとせざるを得ない。あらゆる手を尽くして反対派議員の切り崩しに奔走するリンカーンだったが・・・。
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上映時間が150分もあるとは信じられないほどあっという間にエンドロールを迎えることになる緊迫した政治劇映画だ。国民から今も敬愛され続ける約150年も前に亡くなった大統領をリアルさを持って、なおかつその一挙手一投足といったほんのささいな身振りからも偉大な政治家だったという雰囲気を作り出しているダニエル・デイ=ルイスの演技にはオスカー受賞も納得できる。

人を惹きつける小話をいつでも用意していたり、当時の善良な人々には刺激的ともいえるブラックユーモアを持ち合わせていたといったことがどこまで事実なのかは知らないが、デイ=ルイスのリサーチ力の高さを思えば、あながち全くの創作でもないのだろう。

そうしたディテールの素晴らしさはもちろんなのだけど、他国の歴史(とはいえ、民主主義の根幹ともいえる法の下での平等を獲得する偉大な第一歩[ただし、ネイティブ・アメリカンは蚊帳の外]を描く話であり、"他国"と第三者的な視点で見るのは良くないのかもしれないが)にも関わらずスクリーンに釘付けにされるのは、やはりリンカーンの政治的決断だったり、票集めのために奔走(すでにロビイストが存在するのが興味深い)する政治劇の面白さだ。

しかし、今日的な視点で彼が取った行動を見ると、それが後世に大きく影響する選択だったにせよ、どうなんだろうとは思えてくる。野党の民主党と拮抗する下院を通すために、リンカーンは"弁護士的な詭弁"を弄する。大義のために必要なことといえるが、神聖な議会を欺く一手でもあり、そのギリギリさは確かにドラマでもあるけれど、同時に最も大切な法をないがしろにしているわけでもある。戦争を一日長引かせることはそれだけ前線で死者を作り出すことだ。彼はもちろん覚悟の上で選んだ道ではあるが、法を一瞬でも歪めさせたことと、法と命を天秤にかけたことは、現代政治で同じことが起きたならばかなりの反発を食らうことになりそうだ。ただ、それでも行うというゆるぎない指導力を持ち合わせていたからこそ今も評価される理由でもあるのだろう。今回初めて奴隷制度撤廃のための憲法修正の成立の裏側を知り、正直その点に驚かされた。

しかし、冒頭に黒人兵士がリンカーンに夢を語っていたように、この約100年後の1964年公民権法が制定され、その約50年後の2008年には黒人の大統領まで誕生したのだ。そうした歴史を鑑みれば、リンカーンの答弁は必要な嘘であり、意義あるものだったのだろうと肯定するしかないのだろう。それでも最高権力者がまともだったから良いものの・・・という怖さはまだ残る。
2013.05.01 Wednesday 23:57 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:57 | - | - | -
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