すばらしくてNICE CHOICE

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スティーヴン・キング『アンダー・ザ・ドーム 上下』

読了。
☆☆☆☆☆/5点中

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メイン州にある人口およそ二千人の小さな町チェスターズミル。十月のある朝、町は突如として透明の障壁に囲まれる。上方は高空に達し、下方は地下深くまで及ぶ障壁"ドーム"は、わずかな空気と水と電波を通すのみ。混乱は人心を惑わす。町を牛耳るビッグ・ジム・レニーは警察力を掌握し、恐怖政治を開始。町食堂の雇われコックにしてイラク帰りの元大尉バービーが大統領から直々に町の責任者に任命されるも・・・。
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本国アメリカでは2009年に発表され、日本では2011年4月に上梓された、二段組みの上巻下巻合わせて1400ページになる長篇。『ザ・スタンド』『It』に次ぐ3番目の長さだという。ずっしりとした読み応えがある。

キングの小説はたいてい面白いし、どれも好きだが、90年代以降の長篇は初期のそれと比べると見劣りするのも事実で、もちろん全部が全部ではないし、モダンホラーの冠を掲げていたころには書けなかった深みのある物語を生み出している。事実、どの作品もその時その時で楽しんできた。でも、本作での圧倒的な筆力が背中をグイグイと押してくるキングならではの読感は久し振りに味わうように思う。帯にある"徹夜の準備を"との宣伝文句もあながち誇大広告ではない。

著者のあとがきによれば、1976年に2週間かけて75ページほどを書き進めたところで、"尻尾を巻いて退散"した物語なのだという。ドームに囲まれた町が舞台ということで、そのドーム内の生態系や気象が及ぼす技術的な描写の困難さが理由だったという。1976年といえば、『呪われた町』と『シャイニング』の間だ。わけの分からない障壁に囲まれ、町が身動き取れなくなるという簡潔にして明快なアイデアはやはり初期の頃のものだからなのかもしれない。その発想を今の熟練した筆致で描写していけば、最高に面白い作品になるのも当然なわけで、まあここにきてこんな傑作を生み出してくるとは思いもしなかった。ファンで良かった。

物語の設定自体は、町単位と規模が大きくなっているものの、湖畔のスーパーが不気味な"霧"に覆われ、閉じ込められた人々が店舗内で"蠅の王"のごとく政治力のバランスに翻弄される短篇『霧』(フランク・ダラボンが監督脚本で映画化した『ミスト』はその原作のさらに上をいく傑作!)を思わせる(照れ隠しか作中で"キングの『霧』が云々"といったセリフや『蠅の王』への言及もある)。そうはいっても、閉鎖空間での人間模様というドラマはいつだって魅力的だし、キングの群像劇の腕は確かであり、憎たらしい悪役ビッグ・ジムの辣腕ぶりに歯ぎしりしながら、嬉々としてページをめくることになる(そして終盤にきて残りのページ数がわずかになると悲しみすら覚えるようになる)。

今回はメインの登場人物となるバービーことデイル・バーバラがキング作品では珍しく(初?)元軍人となる。しかも有能であり、主人公に力強さがあるのも強力なリーダビリティの要因だ。

一貫して描かれているのは力を持った者と持たざる者の物語であり、民主主義の原則とはいえ多数派が持つ圧力の怖さだったりする。これは911後だけではなく、ベトナム戦争などの戦時下にある国では当然のように加えられる同調圧力なのだろう。

これだけ大きな物語になるとどう畳むのかも大事だが、ラストシーンは『2001年宇宙の旅』のそれのような不思議な映像を文章から浮かび上がらせ、それはそれで決して悪印象とはならない。

キングは現在御年65歳。まだまだ若い。これからも素晴らしい作品を生み出し続けてほしい。本作を原作にアメリカでは6月からテレビドラマが始まる。日本でも早くDVD化して欲しいものだ。予告編を見るにいい感じに仕上がっている。


リーシーの物語』の記事でも恨みがましく書き連ねたが、本作は2冊の合計が5800円。キングともなれば、版権が高額だろうし、今回はページ数がべらぼうでもあり、仕方ないのは分かる。でも大衆小説に6000円近くかかるというのは何ともすごい話だ。庶民の味方・図書館は本当にありがたい。

訳者があとがきに書いていた"思わぬ人物がカメオ出演"については本人がネット上で種明かしをしてくれている。キング作品でお馴染みのキャラクターが出てきたのに読み逃してたか・・・と思ったが、そうではなくてちょっと安心。最近トム・クルーズが扮していた"アウトロー"な元軍人だった。
2013.05.14 Tuesday 23:58 | | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.10.16 Wednesday 23:58 | - | - | -
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