すばらしくてNICE CHOICE

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BBOY PARK 2013(8月17日)@代々木公園野外音楽堂
なんだかんだといいながら毎年日本語ラップファンを心待ちにさせるヒップホップの祭典BBOY PARK(以下BBP)に行ってきた。毎回このイベントの記事を書く際には枕に高校野球の話を入れるのだけど、今年は魅力に乏しいのか熱心に見入るほどの試合がないおかげで(仙台育英と浦和学院戦は勝負の面白さとかそういったことは一切なかったものの、真夏の炎天下に開催される大会自体への罪悪感を、部外者ではあるけど、いや、部外者だからこそか、覚える試合で印象に残った)、だらだらとクーラーの利いた快適な部屋で観戦することもなく、さんさんと降り注ぐ太陽光を一身に浴びながら阿呆のように向かった。


13時1分(そうはいってもライブ開始の12時半よりはだいぶ押したわけだ)、代々木公園野外音楽堂のある一角に到着。手前にダンスエリアがあるにも関わらず、NONKEYの声が響き渡っている。きっと今日行われている22歳以下のMCバトルで名司会っぷりを発揮しているのだろう。


今年の"約束の地"は閑散としている。

珍しく直前に詳細なタイムテーブルが発表され、また普段ライブを行っている野外音楽堂(メインステージ。上の写真)が使用できず、そのことと関係あるのかは不明だが、2009年以来の2ステージ制(メインエリアとMCバトルエリア)となる。事前の情報ではDJブースを下に置くとかなんとか耳にしていたので、ラッパーだけはステージの上でパフォーマンスし、ブースをアリーナの前方に置くのかと勝手に思い描いていたのだけど、実際はアリーナ後方にある区切りとなる柵(上の写真だと手前の柵)の外のところに小さいステージを設置し、いわばサブステージとなるMCバトルエリアとほぼ同じ規模になっている。ただ、メインの方が音は若干良い。


【TOLAETH】 〜13:04

ちょうどメインステージでパフォーマンスしていたのは千葉のソロラッパー・トライス。昨年のBBPの1日目にも出演していたから2年連続となる。ゲーム「クロノ・トリガー」の曲を使った最後の1曲だけ辛うじて聴けた。"俺たちは千葉から来たトライスといいます"とMC名をきちんと伝えていたのは前回からの改善か。

【ウキ】 13:05〜13:14

DEN主宰のLEGENDARY ink.からの刺客。今回は晋平太やノンキー、SIMON JAP、D.D.S.らによる仕切りのためか、彼らが行っているイベント「A+」枠がない。それはとても良いことだが、それでも出たいメンツはそれぞれ別個で出演時間をせしめたようだ。踏み外している人間の紋切り型リリックで彩る典型的な怒鳴り声ラップ。

【PRIST】 13:15〜13:23

毎年出ている感がある東京荒川区出身のソロラッパー・プリースト。KLOOZらとサイコロ一家を結成するも、イマイチ浮上できずにいる。打開すべく2月にはミックステープ『THE PURPLE』(DL先)を発表。深夜のクラブレベルでは活躍しているのかもしれないが、浸透したとはいいがたい。向こうの流行にいち早く反応し、取り入れようとする努力は認められるも、ファッションにしか見えなくもない。ラップを聴いて単純に楽しめる何かが足りない。

【PURPLE BLOOD MOTH】 13:24〜13:38

この大所帯グループは良かった。初めて見る名前だったので帰宅後調べてみたら空也MCが率いていて、勢いよくラップしていた女性ラッパーはAYA a.k.a. PANDAだったようだ。そう知ると2DColvicsの新譜情報で見かけたような気もするが、空也MCの名前が挙がっていた時点で、昨年の彼のアルバムを思い出し、真っ先に記憶から抹消したのだろう。

1曲目はPVもアップされている「Violet Fizz」、"俺の知ってる伝説のBBPはこんなもんじゃねぇぞ"と煽り、2曲目に突入するはずが、オケの入ったCD-Rが読み込まれずしばらく中断を余儀なくされ、時間もない中で「徘徊 〜Dead Man Walking〜」と「Mr.アームストロング」を披露。

ともかく小さい舞台に所狭しと8人のMCがわっさわっさしている感じは見ていても楽しい。実力的には玉石混淆で、センターを張る空也MCと機材トラブルの間頑張って繋いだ正宗、体型が大柄な人はDELIスタイルになりやすいとの証明のようなラッパー等はすぐにキャラを掴めるが、それ以外はマイクの調子の関係があるにせよ、まだまだ発展途上だ。パフォーマンスすればするほど粗がどんどん出てきて、それもまた魅力のひとつになるなど若さと荒削りさがいい感じで同居している。SIMI LABが以前のワサワサ感を脱ぎ捨て、グループとしての勢いを一点に集中させようと変化している中で、またこうしたグループが出てくるのは嬉しい。

【MC Lady Cat】 13:39〜13:49

もちろん見た目で判断するのは間違いではあるのだけど、大方の場合は外れることがない。写真通りの酷いラップ。1曲目ではスピーカーから音が出ていないことに気づくことなくラップし続け(メインのPAはステージ脇の椅子から動かず、自分の耳で音をチェックしない。彼女のマイクの状況をPAにすぐ教える人がいないのもどうかと思うが)、2曲目から改善され本来のラップを聴けるようになるが、それは聴こえなかった時と大差ない。ラップもダメ、本人の色仕掛も笑いレベルとなると、頼るのはゴーゴーダンサーということで魅惑的な格好のダンサーがステージに上がり腰をくねらせるわけだけど、ああいうのは薄暗いクラブだから蠱惑的にも映るわけで、明るい日差しの下では厚塗りメイクが露わとなり目も当てられない。

4部構成となるショーケースのうちの第1部のライブが彼女で終了。


【DJ YUTAKA】

彼のDJプレイの前にありがたいお話を拝聴。今年から募金箱を各所に設置したと話す。その理由は、会場やテント屋へのレンタル料に"車1台買える"ほどの費用を必要とするためで、これまではスポンサーが付くことでどうにかやりくりしていたが、今年からは実費でやらざるを得なくなったからだという。大変だ。



メインステージ。屋根は昨年のものを流用。

こちらがMCバトルエリア。

絵描きさん。



DJタイムなので、今年のBBPをぶらり散策していたところ、メインの方から歓声が聞こえてくる。慌てて戻ってみると、DJユタカのサイドMCとして晋平太とサイモンJAP、D.D.Sの3人がステージに立ち、緩くマイクを回している。


【13Dogg】 14:10〜14:19

ショーケース第2部の始まりは、相模原のソロラッパー・13ドッグから。そういわれるとどことなくフロウにNORIKIYOの影がなくもないが、それよりもZONE THE DARKNESSの影響が大かもしれない。前半2曲の歌謡曲使いのトラックが面白い。ようやく写せたが、メインステージの足元はこんな感じ。

【GFAD SQUAD】 14:20〜

黒人も含む多国籍グループ。本場の黒人がステージ上がるだけで、箱根駅伝の山梨学院大学なみの"ズルさ"を覚えもするが、日本人もしっかり鍛えているガタイの良さで、ステージ上の光景はいかにもなヒップホップだ。とはいえ、曲自体は勢い一辺倒で退屈。それよりも自分たちで一生懸命作成したと思しき彼らのウィキペディアが笑える。


飽きるのでプラプラと歩きMCバトルエリアへ(歩いて30秒)。

【CRUNK】 14:25〜14:38

鎌倉からやって来たというクランクのライブがちょうど始まるところ。高速ラップからゆったりとしたフロウ、声音まで器用に変化させるラップは受けが良く、しかもただ速いだけではなく、リリックの内容を伝え、切れ味まで備えている。彼のパフォーマンスをさらに良くしているのは、DJとのコンビネーションの良さだ。地道な練習と経験を積んでいることをうかがわせる。ソロラッパーでも後ろを支えるバックDJが効果的な合いの手を入れることで、ステージに動きや華やかさが加わる。ただ、そのDJも、ラップができるということで最後の曲でマイクを持ち、クランクの隣りに立つが、そのラップがどうにも勢い任せのものでとっ散らかった終わり方をしてしまう。

しかし、こっちのステージは文系の日本語ラップノリで安心する。MCバトルだけではなくライブの時もノンキーが司会進行を務め、クランクが引けると彼はご機嫌にこうのたまう。"いっただろ? 俺はヤバい奴しか呼んでねぇから。マジで。お前ら知らねぇだろ。俺、自慢しに来てんだよ。わっはははは。俺が知ってるみんなが知らないMCを紹介するステージです"。


【たまちゃん】 14:39〜14:49

"この会場で一番のバッドマインドを持つ男"と紹介されてステージに立つのはたまちゃん。MCバトルで名を馳せているのは知っていたが、実際に見るのは初めて。"悪口いいに来たぜ"や、"若い芽摘みに来たぜ"、"何故出れたかって? 伝手やコネに決まってんだろこのボンボクラ"とまだラップも始めていないのにやんややんやの歓声が飛ぶ。曲が始まってもコネを強調していてまさに"Mr.バッドマインド"。ヴァース間の語りが面白く、ラップの印象がほとんどないのは不思議。

【アスベスト】 14:50〜15:03

"困難にぶち当たった時にああなっちゃう人(たまちゃん)もいれば、立ち向かう人もいるんだよ"というノンキーの言葉を受けて、"俺が教えるのはバッドマインドを乗り越える方法だ"といい放つのがアスベスト。不安定な足元を認識しつつ、でも目線を下げずにしっかり前を見つめるリリックは確かにポジティブ思考に満ちている。勇気づけられるファンも多いのだろう。好みとしては逆ギレ上等のたまちゃんに軍配を挙げるが、"僕たち"と一人称複数形を時折交えるリリックはFUNKY MONKEY BABYSなどのオリコンチャートに入ってくる応援ラップにも通じるもので、なのに聴く人を選ぶ彼のフロウが良くも悪くもアンダーグラウンドに彼の住処を作らせているのが面白い。

【DRAGON-1】

"(アスベストが21歳の時に初めてMCバトルに出て、それから7年かけて28歳でようやくBBPのステージに立つことができたと話したが、)調子良ければ一発で出れるというのを紹介しましょう。MCバトルで勝つと一発で出られます"と2週間前に行われたULTIMATE MC BATTLE横浜予選の優勝者ドラゴン1をノンキーはステージに上げ、自らヒューマンビートボックスでビートを生み、彼に16小節を蹴らせる。

【抹 with ネットラップオールスター】 15:05〜15:32

普段はパソコン画面を前にしているニコニコ動画ラッパーが部屋を飛び出して、"BBPのステージをジャックしにやって来た伝説的な瞬間なんですよ"と勇ましい抹 a.k.a ナンブヒトシの、マイクの許容限界まで張った声が響く。うるさいぐらいだ。彼自身は以前所属していたPentaphonicの一員として2011年のステージに立っている。舞台に上げた他3人のラッパーが順繰りにパフォーマンスする。

トップバッターはGLA.boyという家族持ちのラッパー。このグラボーイだけ初めて知るラッパーだが、S.l.a.c.k.を意識したような比較的日本語ラップに近いスタイルで、他ふたりと比べ、音楽的なラップを実践していることもあり違和感なく聴ける。

二番手はフリーDL曲も頻繁に発表しているネットレーベルSTUDIO COCCON創設者のひとりstarscream。トレント・レズナーかと思うような髪型はひとまず置くとして、そのラップはインダストリアルなビートほどには刺激がなく、自作トラックにラップがのまれている。

最後のオンレイにいたっては、言葉を吐き出すことに一生懸命すぎて、本来ダンスミュージックであるヒップホップとは別の地平に立つ彼らニコ動ラッパーのイメージを見事に体現。
締めは、AKLOの「Heat Over Here」を4人でリミックス。フリーダウンロード・ミックステープ『おならBOOの「BOOST COMPI」vol.2』(DL先)に収録されている抹のソロ曲がかなり良くて、彼のパフォーマンスを期待していただけに今回は司会進行を担い、引き立て役に回ったのは残念だ。


MCバトルエリアでは22歳以下の年齢制限バトルの二回戦が始まるので、またフラフラとメインステージに戻る。

【YUKI a.k.a. JUTO】 〜15:36

先月ミックステープ『YSJ』(DL先)を発表したばかりのSTAXEXSESSのユキ aka ジュートのライブ中。見たいと目星を付けていたラッパーのひとりだが、ミックステープのリード曲「Positivly」だけ辛うじて聴けた。曲名が表すように闇雲な明るさを振り撒く曲で、変にポップになろうとして持ち前のフロウの柔らかさを失っている。

【常磐DOPE】 15:37〜

ライブ第2部の最後は千葉の大蛇(オロチ)と福島県いわき市のDAZU-Oのコンビ。ふたり共ソロでも活躍するらしいが、寡聞にして知らず。体はラップスタイルを表すという言葉通りに重量のあるラップを繰り出し、日々の不平不満や管理社会への呪詛を連ねる。

この手のラップは生理的に受け付けないので、またプラプラと会場内を歩き、戻って来てみるとDJ KOYAが回し始めるようなので、再びMCバトルエリアへ。


【22歳以下限定MC BATTLE 第二回戦】 〜16:15
司会進行は当然ノンキー。Tシャツの胸に輝く言葉は、"The Talk Man Show"。これまでのようなトーナメント方式ではなく、それぞれのMC名が書かれた小さい紙を茶袋に入れ、バトル直前にノンキーが2枚引き出し、最初に引いたのを先攻、次を後攻とする方式に変更されている。

U-Road対クロス戦から見始め、COKE-E対ぽんた、注目の超高校生級HIYADAM対3Tani、Aoringo対アナログ、スドウ(スノー?)対たなこー、T@K対MC.ノッチと数試合見るが、タク・MCノッチ戦を除いては観客の判定が割れることはなく、ノンキーも指摘していたように不利なはずの先攻が楽々と勝つ試合が多い。なまくらな言葉だったり、ビートにすら乗れず勢いだけでまくしたてたりと凡試合だらけで、二回戦最後となるゾンビ対IKASUMIの途中でメインステージへ。ただ、Uロードにしろ、コークイー、アオリンゴ、タク、ゾンビと、これまで何度もBBPのU20バトルに出場してきたラッパーたちが今年もいることになんだか嬉しくなる。


【黄猿】 〜16:26

16時15分ぐらいにメインに戻ってくると、盛り上げているのは黄猿。チェックリストに入れていたアーティストのひとりだ。4月にはフリーDLミックステープを発表している(DL先)。年始にスケートボードを楽しんでいた時に車に引かれたとかで杖を片手にしたパフォーマンスだ。MC中に最前列の女の子が熱中症で倒れるが、彼がステージ上から的確に指示を出したこともあり、彼女は迅速に後方のテントに運び込まれたようだ。

一方でライブは期待していたものとは違う。軽やかなフロウを武器にするラッパーという認識を持っていたが、内容を伝えることを意識しているのか言葉をビートにかなり詰め込むようになってしまい、以前の踊れるラップではない。バトルMCでならしたラッパーがいざ楽曲を作るとなった時に直面する難しさだろうか。

【輪入道】 16:26〜

続けて千葉の輪入道が出てきて、巻き舌のてやんでぇ調なフリースタイルで盛り上げつつ、1曲目に入ったところで、またしてもMCバトルエリアに移動。ほぼタイムテーブル通りに進行しているので、そろそろ一番注目しているMUMAが出るはずなのだ。


が、MCバトルエリアのステージ上ではNATURAL VYBZという大阪のレゲエグループが騒音をまき散らしている。日本のレゲエは興味の欠片もないが、こうした機会に聴く彼らはたいていだみ声でがなるうるさいだけの音楽でしかない。

【MUMA】 16:30〜16:43

作品を聴いてファンになりその大成を期待すると、次に実際のライブを見ることが少し不安になる。ダメだった時のがっかり感はハードルが高いほど大きいからだ。ラッパーでもありトラックメイカー、ノンキーの紹介ではPV撮影もするというムマ。LowPassのGIVVNも多才だが、彼の伝統を意識したストイックな音作りと比較すると、ムマのそれはより華があり、リリックも辛辣だ。すでに店舗限定での作品をリリースしていて、フリーダウンロード作も昨年は『EXIT』(DL先)を、今年3月には『MUMA SAMPLE DEMO』(DL先)を発表している。ノンキーも太鼓判を押しているように、音で楽しませ言葉で殺すスタイルは有力な若手が次々に頭角を現わしている中でもかなり上位に位置する才能といえる。

音が割れやすく、ラップの内容をも売りにするラッパーにはかなり辛いサブステージの音環境の中で、かっこいいながらも乗りにくそうなビートで自らを縛り付けながら、それでもスワッグなラップを見せつける姿には誰の目にも群を抜く実力の持ち主だと認識させるに十分だ。1ヴァース目でジョジョを、続く2ヴァース目がバキ、最後にドラゴンボールをネタにした曲のように才気立つだけではなくキャッチーさも彼は併せ持っている。"中指立てて 人差し指添えて 向け放つ魔貫光殺砲"では大きな歓声が起きるほどだ。

だからこそ、日本語ラップファンの間でもイマイチ知名度が上がらない現状に彼が焦るのも頷ける。MCでこんな嘆きをしている。"メディアなんてクソくらえだよ 一体何曲作れば取り上げてくれるんだよ"。しっかり調べないとどこで売られているのか分からない作品だけではなく、誰もが入手できる一般流通盤で勝負するか、あるいはAKLOやクルーズが苦境を打破したようにまとまった数の曲を収録したミックステープを出すことで、ファン界隈のみならず、レコード会社をも認めさせるか。広く聴かれれば間違いなく伝わる才能だと思う。

彼のライブを見られて良かったと思えたことがもうひとつある。ムマというMC名を意識するようになったのは、RAU DEFがZeebraに対し起こしたビーフに彼がいち早く反応し、ラウデフに放った1曲からだ(その続編)。ラウデフが下剋上を起こそうとしている時に同世代が足を引っ張ってどうするのだと思ったものだけど、MCで彼が話すのを聴き納得できるものあった。

"俺ら平成生まれがいずれ時代を担うことになる。その時に先輩たちが安心して「このバトンをお前らに渡してやるよ」といわれるような大人になろうぜ"といった趣旨を語りつつ、"文句言ってるだけでは何にもならないから"と付け加えている。その考えが当時20歳だった彼にすでにあったのかは知らないが、偉大な先輩に向けたラウデフの無邪気ともいえる一撃へのムマのいら立ちの根底におそらくあったものをあれから2年という月日が過ぎて触れることができたのは面白い。

☆追記 2013.08.25
MUMAは8月25日、"MUMA×Quidam Beatz"名義で15曲入りのミックステープを発表(DL先)。


【GL WORD】 16:44〜16:55

前日にUMB逗子予選(そんなところでもやってるのかという驚きの方が大きいが)で優勝した句潤と、同横浜予選で前述のドラゴン1に決勝で敗れ、それでも準優勝者のLA GLORIAによる横浜のラップデュオ。彼らも昨年フリーDLミックステープを発表していて、そこで耳にしたのは彼らのスタジオの名前通りにオーセンティックなビートとラップスタイルだったわけだけど、実際のライブパフォーマンスは同郷のMACCHOのごとく、ゆとりがないラップでひたすら暑苦しい。


MCバトルエリアはこの後、HYENA、あるま、菊丸&DEJIのライブと続くので、あるまだけは見たかったものの、メインへテクテク歩く。

【GUINNESS】 〜17:02

さて、ギネやん。めでたくアルバムを5月にリリース(棚にあるのを見たことないので売れているのだろう)し、"10年やってアルバムも出せない"と嘲笑されていた彼はもういない。昨年のBBPはBESのバーターだったが、今年は立派にソロとして出演だ。

いわゆる"フロウ"に乏しく、棒読みのお経(うまい坊さんのお経はトリップミュージック)と大差ないのだけど、言葉が明瞭に発声されるために一応聴かせるラップではある。彼が一生懸命言葉を積み上げている只中を、Da.Me.RecordsのDARTHREIDERが拡声器をTARO SOULに持たせ、大声で何やら告知をしながら歩いてくる。ギネやんのお経に飽き始めている観客は一斉に振り向き、一体何事かと後ろを行くふたりを眺める。なかなか痛快な珍事だが、一行はそのままMCバトルエリアにも向かったので、ギネやん狙い撃ちというわけでもないのだろう。それでも同じラッパーがパフォーマンスしている時にそれを邪魔するかのように(妨げられるようなライブをしている方も悪いが)告知するのはダースレイダーらしくもなく、少し面白い光景だ。


ダースレイダーとお供のタロウソウル。

【RAW-T】 17:03〜17:14

ICE DYNASTYのロウT。ソロ曲を聴くのは初めてだが、かつてアイス・ダイナスティとしてSKY BEATZのスタイリッシュなビートの上に乗っていたとは思えないほど、頑固おやじ然とした土方ラップで驚く。全くといってほど好みではないが、これはこれで独自のスタイルを築いてはいる。

【DJ ONE-LAW "MISTY SOUND"】 17:14〜

"DJ ONE-LAW "MISTY SOUND""名義で出演クレジットされているふたり組が「I'm A Cokeboy」のリミックスでライブをスタート。ラップしているのは主に左のラッパーで、写真右のボンバーヘッドはサイドMCなのかもしれない。池袋bedで開催されているイベントCHRONIC SPOTからやって来たぜ〜と再三再四シャウトするそのラップスタイルはありがちな強面ラップであり、どちらかといえば、1ヴァースだけの披露に終わったボンバーヘッドの柔らかいフロウが好みだ。

【MISHIMA aka 潮フェッショナル】

最近CD屋に行くと面陳にされていることが多く、そのジャケットに毎回不愉快な気分にさせられるアルバムをリリースしたばかりのミシマ aka 潮フェッショナル。ご無沙汰感がある鬼の後釜を担えるような演歌ラップはお決まりの不幸語りで泣き落としにかかる。フックにしっかりメロディを付けるも、やや急ぎ過ぎる傾向がありもったいない。歌うなら徹底的にやりきった方が良さそう。最後の曲ではブルースハープを吹き散らし終了。

【Fla$hBackS】 〜17:40

今年頭にファーストアルバムをリリースしあっという間に耳の早い日本語ラップファンをうならせ、とりこにしてしまった3人組。腰の重いBBPにしては珍しく旬のグループを誘ったといえる。最初にjjjが登場し、軽くラップした後に、TETRAD THE GANG OF FOURのSPERBとのユニットCracks Brothersでも知られるまだ19歳のFebb a.k.a Young Masonが姿を現す。期待も高く観客同士の間にあった隙間が一気に埋まる。

新世代とはいっても、いわゆるスワッグなラップではなく、池袋直系な音とラップは90年代東海岸から脈々と受け継がれているスタイルとそうかけ離れたものではないのだけど、直前のミシマのような暑苦しさとは180度違うもので、固唾を飲んで見守る観客の期待に満ちた目を意に介さず、冷ややかな態度を纏ったまま、おそらくは普段通りのパフォーマンスを全うした印象だ。

いまだアルバムは未聴で、同時期に発表されたミックステープしか聴いてないわけだけど、この手のどれだけヒップホップを理解しているのか試されるような音楽はやはり肌に合わない。理解しようと音やラップに身を任せてみても、高度な方程式を解かせられている気分になる。ただ、それを20歳前後の若者が軽々とやってのけているわけで、一部で熱く支持されているのは分からないでもない。




Bエリア1。

Bエリア2。

Bエリア3。

先ほどダースレイダーが告知していた「ダンシング・イン・ザ・パーク トークショー」。風営法について語る場らしい。深夜過ぎたら踊れなくしていいと思うし、ライブ見て終電で帰りたいよ。

BBP内で今年唯一出店している食べ物屋台のためか、予想外の売り上げがあったようで、夕方には売り切れに。

17時45分、ぶらぶらとMCバトルエリアに戻る。


【22歳以下限定MC BATTLE 第三、四回戦】 〜18:21
三回戦が始まっている。「太郎 後藤 vs. kazuu」は愚にも付かない試合で今年は盛り上がらないと思った矢先に、「筋肉を語る人 vs. たなこー」で先攻の筋肉を語る人が、"ガリガリ"との相手の言葉に、"さっきもいったじゃん 俺鍛えてるのインナーマッスルだから 見えないの"でグッと掴まれる。文字にしてしまうと大方の面白味は失せるが、タイミングや言葉の抑揚次第でとてつもないパンチラインになるからバトルも捨てがたい。というわけでようやくバトル熱が温まってくる。

<HIYADAM vs. たかなぎ>

第3回高校生RAP選手権で優勝し、巷で超高校生級ラッパーと噂のヒヤダムは、見た目おじさんとすぐさま口撃し、その後はフロウ重視ののらりくらりスタイルを貫く。しかし、内容重視で言葉による倍々返しを図る、見た目は確かに老けているけれど年齢制限のあるバトルなのだからきっと若いのだろう、たかなぎに圧倒され、ここで高校生王者は敗北。たった2試合しか見ていないけれど、彼はバトルをしているというよりもフロウでひとり遊びしている印象だ。

続くのは「MC HAMAKI vs. U-Road」。今年も出ている葉巻。勢いと見た目でUロードを飲み込もうとするも、Uロードは最初のターンで葉巻のお家芸の唾が飛んできそうなラップを軽々と真似してみせ、格の違いを見せつける。「OKB vs. YA柳GI」、「諒太 vs. KAZAN」と凡戦が続き、津田沼サイファーの仲間同士だという「IKASUMI vs. COKE-E」は辛うじてヒートアップを見せる。

ベスト8が決まったところで、そのまま四回戦へ。その場のクジで組み合わせを決めるのと8小節2本は変わらず。

<U-Road vs. Aoringo>
互いに2本ずつ終えた後、ノンキーは決も取らずにそのまま"延長行きます"と英断。こういうところで経験を積んだ名司会かどうかが分かる。先攻後攻を入れ替えて、アオリンゴから始まるが、同じクルーでもあるらしいふたりは互いに称えあう方向に行ってしまう。決まらずに再延長に。Uロードの勢いの良いラップか、アオリンゴの変幻自在なフロウか。この日一番の熱い戦いで、ほとんど差がない。"お母さ〜ん、Bボーイの人たちが僕を困らせるよ〜"とのノンキーの嘘泣きまで飛び出すほど判定は割れるが、結局アオリンゴに。私も彼に手を挙げたが、分かりすいジョジョネタをかまし、きれいに着地を決めたのが好印象。

                                        <たかなぎ vs. 諒太>
ヒヤダムに勝ったたかなぎが意味の通るラップで諒太に勝利。負けた諒太は蛇(ex. Nakaji)率いる花魁音盤のメンバーとのことで、なんでも高校生RAP選手権でベスト4に残ったRACKというラッパーも所属しているそうだ。花魁レコーズの面々はともかく、ミックステープ(DL先)を卒業した蛇が今年正規盤を出すらしくかなり楽しみだ。

<たなこー vs. 太郎 後藤>
先輩後輩対決らしく、互いに相手のことを"お前"といいながらも内容は褒め合う方向性で、しかもビートを全く意識しないラップでどちらも面白味に欠ける。大差で太郎の勝利。その彼が告知していたのだけど、小田急線の東海大学前駅でもサイファーが行われているそうだ。ヒップホップは日本に静かに根付こうとしているのかもしれない。

                                      <YA柳GI vs. COKE-E>
四回戦最後の対戦は津田沼サイファーのヤギとコークイー。同門対決。コークイーも毎年BBPで見ている。見た目はパッとしないのだけど、ギアを一気に入れて畳み掛ける姿はファッションなど関係なくなる熱さがあり、ついつい声を挙げたくなる。"ビートの上で吐きたい言葉があんだ!"は気持ちがよく乗っているラインだ。


【KM$】 18:22〜18:34

東京城南地区の仲間で結成し、G.K. MARYANとも繋がりがあるらしく、最後の方では彼も見に来ていたTAKARABUNEクルーからリーダーのKM$がMCバトル明け一発目のライブを披露。紹介するノンキーが慌てて、"行かないで行かないで行かないで"と連呼するほど、本気のラインナップに入り始めたメインステージに観客をがっつり持って行かれる中、ノンキー・セレクトとは思えない、どちらかといえばメイン向きのオラオラなラップであり、類は友を呼ぶとばかりに粗野な仲間を次々とステージに上げるが、結局勢いだけのパフォーマンスに終始する。

途中で放っていたCDは、2007年にタカラブネとして一般発売した作品で、今はここから落とせる。聴く価値もないが。彼らが下がった後、ノンキーはKM$をThe Notorious B.I.G.みたいだと評したが、多分何かの冗談だろう。お追従をいわなければならないほどにステージ下にいたマーヤンが睨んでいたのかもしれない。

【丸】 18:35〜18:50

日も沈みかけ暗さが増す中で照明が入り、"藤沢のドン"こと丸が二番手として現れる。彼が昨年リリースしたファーストアルバムを今年に入ってからようやく聴いたのだけど、これがかなり良い。年内に聴いていたら、ベスト10入り確実の良作だ。何か特別派手な要素があるわけでも、奇をてらったことをするわけでもなく、自分を育て暮らしてきた街を歌い、仲間を称え、失敗から学び、不正義を糾弾するひとりの男の想いをバランスよく詰め込み、愚直なまでにラップにこだわった作品だ。

トラックを差し替えながらアルバムから「Time For Some Action」「FORCUS」「夢のゆくえ」「FUJISAWA STATE OF MIND」がパフォーマンスされる。15分間のショーケースを生でじっくり味わうが、ライブでは分かりやすいがむしゃらさというブレーキを思いっきり踏んづけてしまい、音源でのラップの巧さが全く出ていない。残念だ。


MCバトルエリアはその後はDOTAMAや狐火と続くので、メインエリアに向かう。ZEN-LA-ROCKは当然としても、フラッシュバックスと同じぐらいにこの日一部のコアなラップファンから注目を集めていたはずのKOHHとLIL KOHのステージも終わっていた。

【JBM & KGE THE SHADOWMEN】 〜19:11

この千葉のふたりはBANG BLACKSという名前のラップユニットを組んでいるらしい。JBMはともかくカゲザシャドウメンは新譜が出れば一応チェックはしている。でも世間の評価ほどには毎回ピンとくるものがなく、それは生で見ても同じだ。一般的にヒップホップと聞いてイメージするだろう強面なラッパー像をそのまま体現したようなふたりは、しっかりリリックを聴かせはするが、それ以上に面白いと思えるものがない。いいのはトラック。これまでメインステージで鳴らされたどのトラックよりも音に厚みと重みがあり、条件が悪い中でも健闘している。

まだ続きそうだし、空腹にも耐えかね、BBP外の屋台へ。幟にB級グルメとある"鳥皮炒め"。名前通りにタレを絡め炒めた鳥皮を敷いたキャベツの上に置くというもの。これで500円とはいい商売だ。メインステージに戻っても、ふたりのパフォーマンスは続いている。食べながら見ていると、最後の曲のゲストにRINO LATINA IIが登場し、あの独特の声音を代々木の空に響かす。

【MEGA-G】 19:11〜19:27

お腹も満たされたところで、ステージ上には誰もいないが、確かにラップが聞こえてくる。このサスペンションのよく利いたラップは!と気づき慌てて前方に向かう。メガGだ。すぐにはステージに上がらず、まずは舞台袖でフリースタイル気味のラップをかまし、客席の期待値を高めてから登場というオーソドックスに過ぎる演出は常にヒップホップの教科書に忠実な彼にこそ似つかわしい。

「JUSWANNA IS DEAD」に始まり、「Ten Budz Commandments」「TOKYO WALKER」。そして先月亡くなったMAKI THE MAGICに哀悼の意を表し、最後はMIKRISやJBMと共に「So Crazy Remix」。音環境の条件の悪さを物ともせず(次第に強く吹き始めた風は気にして、何度かキャップを直すが)、いつも通りの安定したパフォーマンスで楽しませてくれる。やはり実戦経験が豊富な実力者ほど条件の悪さを気にさせないライブをする。さすがだ。


いよいよトリの出番。1日目のメインエリアを飾るのはテトラド・ザ・ギャング・オブ・フォーなので、MCバトルエリアに向かおうとした矢先に、DJユタカが出てきて、残っているラッパーをステージに上げ、今年亡くなったふたりのラッパーBIG-Tとマキザマジックに黙祷を捧げようじゃないかといい出す。そそくさとMCバトルエリアに移動。

ちょうど狐火が泣きそうな声で話しているところで、最後の数十秒だけ見られる。SUMMER SONIC 2012に出演できたこと、今年は残念ながら一度出ているから選考以前の段階ではじかれたこと、それでも売れないけれど頑張っていくしかないとかそんなことを話していたのだろう、きっと。美人のバックDJを確認し忘れたのは痛恨だ。彼についていえば、会場を歩く彼にファンが声をかけ、一緒に写真を撮って欲しいとせがまれ、一体どういう顔をして写ればいいのか分からないといった戸惑いの表情を浮かべながらシャッターが下りるのを待つ姿が印象的だ。だから彼はラップするのだろう。しかし、ライブアクトのトリを狐火にするとはノンキーもすごい選択をしたもんだ。


【22歳以下限定MC BATTLE 準決勝、決勝】 19:31〜19:52
8小節2本から4本に変更。組み合わせはクジのまま。まず2種類のビートをDJ BOLZOIが鳴らし、その選択権は先攻の者に与えられる。

<COKE-E vs. たかなぎ>
ヒヤダムを倒して上ってきたたかなぎだったが、コークイーは同じ津田沼サイファーの仲間らしく、和気あいあいのバトルを望んでいたようで、攻めの言葉がほとんどなく、見た目以上にバトル気質なコークイーに終始攻められ惨敗。

                                     <Aoringo vs. 太郎 後藤>
この勝負は先攻のアオリンゴがオーソドックスなビートではなく、電子音が派手に鳴らされる音を選んだ時点で決したようなものだ。"ヴァイブスラッパー"と指摘された太郎は自分でも"俺は全く不器用で音にうまく乗せられないフリースタイラー"と受け止め、言葉を猛烈に詰め込み、ラップの熱さを極めようとするが、のらりくらりフロウで小節のほとんどを埋め、終盤で急に決めにかかるアオリンゴのスタイルの前では"アナコンダ"のごとくにはリンゴを丸飲みできずに終わる。


さあアンダー22の決勝戦。最後はジャンケンで先攻後攻を決める。

<Aoringo vs. COKE-E>

軽快に跳ねるビートの上でふたりとも気合の入った滑り出しを見せる。アオリンゴはコークイーの後輩らしいが、どちらもつまらない遠慮を見せることなく、言葉の刃を交わし合う。2本目の最後で"そんな外人みたいなフロウは止めてくれ"との指摘を受け、長野県出身のアオリンゴは、"俺の地元はブラジル人いっぱい だから大丈夫"と少しも意に介さない返しをして盛り上げる。続く3本目でもコークイーは俺は留学していたこともあるから大丈夫だけど、"ヘッズたちみんな聴き取れていない"と再びアオリンゴにご褒美を渡してしまう。先攻のアオリンゴは当然4本目で、"オイオイみーんな聴いてくれてるから観客俺に手を上げてる 意味が分からないお前のアンサー 支離滅裂 ハ? 馬鹿じゃないですか? 笑い飛ばすぜ先輩"。アオリンゴ絶好調だ。一方コークイーも、"分かってねぇな 馬鹿じゃないすかって ここにいる奴ら全員馬鹿だから来てんだ"とひと花咲かせるも、やはり中盤以降後手に回った感は拭えない。試合の潮目を読み、ここぞというところで勝負に出て、詰将棋のごとく相手の退路を断っていく展開が良い。


2013年のBBP U22 MCバトルの優勝者はアオリンゴ!その後はベスト4に残った太郎 後藤、たかなぎ、コークイー、そしてノンキーも加わってのサイファーで大団円。誰かがノンキーさんにマジででかいリスペクトを送るぜとラップしていたけれど、本当にそう思う。
2013.08.17 Saturday 23:59 | 音楽 | comments(0) | trackbacks(0)
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2017.06.29 Thursday 23:59 | - | - | -
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