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ザ・マスター / The Master

59点/100点満点中

ポール・トーマス・アンダーソン監督最新作。新興宗教を舞台にした人間ドラマ。主演はホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン。共演にエイミー・アダムス。2012年第69回ヴェネツィア国際映画祭ではアンダーソン監督が銀獅子賞を獲得し、主演のふたりは最優秀男優賞に輝いた。製作費3200万ドル。2013年公開作品。

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第二次大戦終結後、精神に不安を抱えながらも除隊した元海兵隊員フレディ・クエル。帰郷もせず、アルコール依存のままトラブルを繰り返しては職場を転々とする。ある日、酒に酔ったフレディは停泊中の船にこっそり乗り込んでしまう。そこで"マスター"と呼ばれる男ランカスター・ドッドと出会う。"ザ・コーズ"という新興宗教団体を率いるドッドは彼を歓迎し、フレディもまたドッドに自分を導いてくれる可能性を見出す。
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ポール・トーマス・アンダーソン監督といえば、作品数こそ少ないものの、物語の突拍子のなさと同時に重厚さを併せ持つ面白い映画を撮るという印象があり、しかも常に挑戦心を忘れない監督だから、本作の告知があった時にあの悪名高いサイエントロジーを模した新興宗教を描くと知り、悪いわけがないと興奮したものだけど、結果はまあ落胆だ。

おかしな飛び道具は用意せず、いつになくアンダーソンは真摯にふたりの男のやりとりを描く。冒頭で軍隊生活を送るフレディの様子が写される。確かに突飛な行動を取るものの、その原因となる戦場での酷い状況は伝えようとはしない。そういったことは他の戦争映画やそれに伴うPTSD(心的外傷後ストレス障害)を扱った作品でこれまでも十分描かれてきたわけで、もういいだろうといったところだろう。

ともかく除隊した彼は精神の安寧をひそかに求めさまよい、ついにランカスター・ドッドと巡り合う。時に酒を飲み交わし(様々な液体を混ぜて作るフレディ特製チャンポン酒が非常に興味をそそられる)、ドッドから宗教的儀式を教わり、あるいは反発し、ふたりの関係はさながら野生で生まれ育った動物と調教師のようでもあり、友情以上の関係をもかすかに匂わせるほど密になる。

モノローグ等による安易な状況説明がなく、確かな才能を持つふたりの俳優の演技に全てが表現されるわけで、そういう意味では惜しみない賞賛が贈られるのも理解できる。が、エピソード同士が断絶されているように思えることが多く、例えばどれだけの時間が流れたのかといった客観的な視点が欠いていることもあり、想像の翼は大きく羽ばたかせる余地を残すことはある意味では素晴らしいが、今作ではその自由度がありすぎる。

そもそも期待していたのは端的に書けば新興宗教を悪しざまにののしる映画だった。しかし、本作にあるのはふたりの男の出会いと別れだ。そこに成長や友情、愛、依存、失望といった様々な感情が浮き彫りになる人間ドラマが描かれ、久しぶりにフィクション映画に復帰したホアキン・フェニックスの素晴らしい演技を目にする喜びが得られようとも、がっかりする気持ちを埋め合わせることはできない。
2013.10.03 Thursday 23:57 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:57 | - | - | -
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