すばらしくてNICE CHOICE

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もうひとりのシェイクスピア / Anonymous

74点/100点満点中

2011年のローランド・エメリッヒ監督作。歴史サスペンス。イギリス・ドイツ製作。製作費3000万ドル。

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16世紀末、エリザベス1世統治下のロンドン。演劇が盛んになり、庶民は楽しんでいた。女王の側近ウィリアム・セシル卿は芝居に民衆が扇動されることを恐れ、息子ロバートと共に弾圧を強める。セシル親子と後継問題で対立するオックスフォード伯エドワード・ド・ヴィアは、芝居を利用し政治を動かそうと目論む。エドワードは逮捕された劇作家ベン・ジョンソンを助け出し、書き溜めていた戯曲をベンの名で上演するよう提案。その戯曲『ヘンリー5世』は大成功を収める。
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ハリウッドおバカ映画といえばこの人なローランド・エメリッヒ監督。ドイツ人なのに、アメリカ人の愛国心を高揚させる術は熟知したもので、モロな題名の『インデペンデンス・デイ』はもちろん、この夏公開された最新作『ホワイトハウス・ダウン』でも、全く米国とは関係ない私までも小憎たらしい演出がなされるラストシーンでは目頭を熱くさせられてしまった。おバカだけど、映画館の巨大スクリーンで鑑賞するなら、巨費を掛けた大作をたかだか千ナンボで見られたと満足させてしまう監督でもあり、全く嫌いではないし、反対に好きと断言してもいい。

そんな彼がアクションシーンがほとんどない会話や劇中劇中心の時代物を撮ったのは、おバカなだけの監督ではないもんという映画人としての自負ゆえだろうか。まあ彼の胸中は知らないし、興行的には世界規模では不明だが、全米では製作費の半分だったようだ。他国の歴史物語であり、馴染みのない人物がたくさん出てくるわけで仕方ないのかもしれない。

この機会に世界中の英知の集積場ウィキペディアを参照したところ、「シェイクスピア別人説」という膨大な記載がなされたページがあったりもするが、その実"もっとも英文学者でまともに別人説を取上げる人はほとんどいないようである"ともあり、さすがは我らがエメリッヒという思いを改めて強くすると共に、本作を劇場で見なかったことを後悔している。『デイ・アフター・トゥモロー 』や『2012』『ホワイトハウス・ダウン』なら間違いないことは確信できるので喜び馳せ参じてしまうのだけど。

アメリカで振るわなかったのも納得で、登場人物たちの関係が複雑だ。だいたいは歴史上実在した人物で、ウィキに載せられている肖像画を見ると、かなり意識して似せていることも分かる。ただ、日本でいえば江戸幕府成立前後のイギリス史は遠い昔に歴史の授業で習い、他はその当時を扱った時代物の映画を鑑賞したぐらいなので戸惑うことは否めない。

でも、オックスフォード伯エドワードが、対立するセシル卿を"言葉"で失脚させようと画策する描写は現在の争いごとでの理想の戦術でもあるわけで、ネタとしては面白い。遺体が発見されたとのニュースが最近あったリチャード三世の人物像は彼を主人公にしたシェイクスピアの舞台劇に負うところが大のようで、その背中が曲がり異形だった様子はシェイクスピアの政敵セシルを模したとする展開は興味深い。さらに"ギリシア悲劇"そのものな話は舞台となる英国でどう受け取られたのかは知らないが、お話として単純に面白い。

オックスフォード伯エドワードから書き溜めていた彼の戯曲を匿名で舞台にかけてくれと最初に依頼されたベン・ジョンソンと、彼の親友で俳優でもあり、ベンの代わりに自分がエドワードの戯曲を書いたと偽り名声を得てしまうウィリアム・シェイクスピア。このふたりを別のキャラに分ける必要があったのかは不明で、ベンとエドワードとの最期の別れにしてもそれほどの感動をよばない。また、エドワードが助けるつもりだったエセックス伯ロバート・デヴァルーやサウサンプトン伯ヘンリー・リズリーの急襲エピソードは脚本が先を急ぎ過ぎて、きれいにまとまっていない感がある。

まあそれでも2時間の上映時間を通して言葉と映像でシェイクスピア劇と同じように感動や憤り、悲しみ、笑いをもたらしてきたエメリッヒでもあるわけで、時代物であるにも関わらず意外にも今回も楽しんだ。時代物といえば1万年前を舞台にした『紀元前1万年』や米国独立戦争を描いた『パトリオット』はまだ未見だったことを思い出した。見てみるか。



劇中に出てくる"弱強五歩格"とは、"英語詩やドイツ語詩で最も一般的に用いられる韻律のひとつ"で、"5つの連続した弱強格で1行"が構成されるそうだ。(wiki)
"A horse! A horse! My kingdom for a horse!" (シェイクスピア『リチャード三世』)
3つの"horse"と"king-"にアクセントが置かれ、forが弱い。
2013.11.12 Tuesday 23:58 | 映画 | comments(0) | trackbacks(0)
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2019.08.20 Tuesday 23:58 | - | - | -
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